一季成り・四季成りいちごの違いは?なぜ夏にも収穫できるのか調べてみた

一季成り・四季成りいちごの違いと夏にも収穫できる理由を紹介するアイキャッチ画像
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前の記事で、いちごが一年中スーパーやケーキ屋にある理由を調べた。
冬から春は栃木や福岡などの主要産地、夏から秋になると北海道や東北、高冷地へ産地が移る。

その中で何度も出てきたのが、
一季成りいちご
と
四季成りいちご
という言葉だった。

名前だけを見ると、一季成りは年に1回、四季成りは一年中実がなるように感じる。
しかし、実際の違いは単純な収穫回数ではない。

大きな違いは、どんな気温と日の長さで花芽を作れるかにある。

とちおとめやあまおうなど、冬から春にスーパーへ並ぶ主要品種の多くは一季成り。
一方、夏の北海道や東北などで使われる夏秋いちごには、四季成り品種が多く使われている。

今回は、一季成りと四季成りでは何が違うのか、なぜ同じいちごなのに収穫できる季節が変わるのかを調べた。

目次

一季成りと四季成りの違いは「花芽を作れる条件」

一季成りいちごと四季成りいちごで花芽を作りやすい気温や日の長さが異なることを比較した図

最初に違いを整理すると、次のようになる。

項目一季成り四季成り
主な収穫時期冬〜春夏〜秋にも収穫可能
花芽ができやすい条件低温・短日比較的高温・長日でも可能
主な用途冬春の生食用夏秋の生食・業務用
主な地域全国の主要産地北海道・東北・高冷地など
代表例とちおとめ、あまおうなど夏のしずく、なつあかりなど

「実が何回できるか」というより、
一年のどの時期に花を作れるか
という植物の性質が違う。

いちごは花が咲かなければ当然実もできない。

そのため、花芽を作れる条件の違いが、そのまま収穫できる季節の違いにつながっている。

一季成りいちごは秋になると花を作る

現在スーパーで一般的に売られているいちごの多くは、一季成り性品種だ。

農研機構によると、一季成り性いちごは秋になって、
日が短くなる
+
気温が低くなる

ことで花芽を作る。

自然条件では、その後冬の寒さで生育が一時的に止まり、春になると再び成長して花を咲かせ、果実を作る。

つまり本来なら、
秋:花芽を作る
↓
冬:休眠
↓
春:開花
↓
春〜初夏:収穫

という流れになる。

露地栽培のいちごが春に実るのは、この性質によるものだ。

では、なぜ一季成りいちごを冬に収穫できる?

ここで疑問になる。
一季成りが本来春に実るなら、なぜ現在は12月や1月にスーパーへ大量のいちごが並んでいるのだろうか。

理由は促成栽培だ。

秋に花芽を作らせたあと、
ハウスへ定植
↓
温度を保つ
↓
冬眠するような低温状態を避ける
↓
そのまま開花・結実させる

ことで、自然状態より早く収穫する。

そのため現在のいちご産地では、本来春だった収穫期を冬まで前倒しできる。
クリスマスケーキに大量の国産いちごを使えるのも、この促成栽培があるからだ。

一季成りという名前でも、「一年に一瞬しか収穫できない」という意味ではない。

ハウス内で条件を整えれば、冬から春まで何度も収穫できる。

春から夏になると一季成りは花を作りにくくなる

ただし、一季成り品種をハウスに入れれば一年中収穫できるわけではない。

春から夏へ向かうと、
気温が高くなる
+
日が長くなる

ため、一季成り品種は花芽を作りにくくなる。

すでにできていた花を収穫し終えると、新しい花が続かなくなる。
これが、冬春産地のいちごが5〜6月ごろになると減っていく理由の一つだ。

前の記事で見たように、夏になると栃木や福岡などから北海道・東北、高冷地へいちご産地が移る。

そこでは一季成りとは違う性質を持つ四季成り品種が重要になる。

四季成りは夏でも花芽を作れる

四季成り性品種の大きな特徴は、一季成りより高い気温や長い日照時間でも花芽を作れることだ。
農研機構によると、四季成り性品種は一季成り性品種よりも高温・長日条件下で花を作ることができる。

そのため、一季成りでは花ができにくい晩春から早秋にも開花し、果実を収穫できる。

大まかには、
■一季成り
秋の低温・短日
→ 花芽形成
→ 冬〜春収穫

■四季成り
春〜夏の比較的高温・長日でも花芽形成
→ 夏〜秋にも収穫
という違いになる。

この性質が、日本で一年中いちごを供給するうえで重要になっている。

四季成りという名前でも一年中同じように採れるわけではない

「四季成り」という名前は少し誤解しやすい。
春夏秋冬、いつでも同じ量のいちごが採れるわけではない。

四季成り品種にも生育できる温度の限界があり、真夏の高温条件では収量や果実品質が落ちることがある。

そのため実際の夏秋いちご産地は、
・北海道
・東北
・長野などの高冷地
のように、夏でも比較的涼しい地域が中心になる。

四季成り性と冷涼な気候を組み合わせることで、6〜11月の国産いちごが少ない時期に収穫する。

つまり、四季成りだからどこでも真夏に作れるわけではない。

品種の性質と地域の気候をセットで考える必要がある。

夏秋いちごの代表「夏のしずく」

四季成り品種の代表例として分かりやすいのが、農研機構が育成した「夏のしずく」だ。
夏のしずくは四季成り性で、北海道・東北・関東や中部の寒冷地、高冷地で夏秋どりに利用できる。

農研機構では、6〜11月前後に収穫可能としている。

さらに寒冷地や高冷地では、10a当たり3t程度の商品果収量が見込まれる。
果実も硬く、輸送性・日持ちに優れ、糖度と酸度の両方が高い。

そのため、夏のショートケーキなど業務需要にも向いている。
前の記事で「夏のケーキにもなぜいちごがあるのか」を調べたが、まさにそのために作られたタイプの品種になる。

「なつあかり」は夏でも生食できる味を目指した

四季成り品種には「なつあかり」もある。

なつあかりは農研機構が育成した四季成り品種で、
サマーベリー
×
北の輝
↓
なつあかり

という交配から生まれた。

母親のサマーベリーは四季成り。
父親の北の輝は一季成りだが、大粒で食味がよい。

つまり、
四季成り性
+
一季成り品種のおいしさ

を組み合わせようとした品種になる。

果実は大きく糖酸比も高く、夏秋期でも生食用として利用できることが特徴だ。
ここを見ると、一季成りと四季成りは完全に別々の世界ではない。

両方の特徴を交配し、四季成りでもおいしい品種を作る育種が行われてきた。

昔の四季成りいちごは「味」が課題だった

四季成りなら夏に収穫できるので、最初から全部四季成りにすればよいようにも思える。

しかし、そう単純ではなかった。

四季成り品種は一季成り品種と比べると、歴史的に果実品質や収量に課題があった。

農研機構が2004年に「なつあかり」「デコルージュ」を発表した際も、
従来の四季成り品種では果実品質に優れるものが少なく、
夏秋いちごの生産拡大が進まないことを育成の背景として挙げている。

つまり以前は、
・冬春
→ とちおとめなど、おいしい一季成り
・夏秋
→ 四季成りは作れるが品質に課題
という差があった。

そのため夏秋期のケーキ用いちごは輸入品への依存度が高かった。

現在はこの差を縮めるため、四季成り品種の改良が続いている。

ケーキ用と生食用でも求める特徴が違う

とちおとめ・あまおう・夏のしずく・なつあかり・デコルージュの収穫時期や主な地域、用途を比較した図

四季成り品種を調べると、「生食用」と「ケーキ用」で品種育成の方向が違うことも分かる。

例えば、
・なつあかり
→ 大粒・食味を重視
→ 生食向け
・デコルージュ
→ 果実が硬い・形がそろう・光沢がある
→ ケーキ向け
という違いがある。

デコルージュは、
Pajaro
×
イチゴ盛岡26号

から作られた四季成り品種で、果実が硬く、外観や日持ちに優れる。

夏のケーキ用では、

  • 赤色がきれい
  • 形がそろう
  • カットしやすい
  • 輸送しても傷みにくい
  • ケーキの上で形を保つ

といった特徴も重要になる。

「甘い品種が一番良い」というわけではなく、用途によって品種の評価基準も変わる。

夏秋いちごには一季成りを使う方法もある

ここは意外だった。

夏秋いちご=すべて四季成り、というわけでもない。
一季成り品種でも、人為的に短日・低温条件を作って花芽分化させれば、夏秋期に収穫することができる。

過去には東北などで、
短日処理
+
冷涼な地域の気候

を利用して一季成り品種を夏秋どりする技術も研究されてきた。

一季成り品種は食味や市場評価に優れるため、夏にその品質を利用できるメリットがある。
ただし、自然条件で花芽を作りやすい四季成り品種よりも、花芽形成のための環境制御が必要になる。

そのため「夏秋いちご」と「四季成りいちご」はほぼ重なる部分が大きいものの、まったく同じ意味ではない。

一季成りと四季成りはどちらが良い?

これは用途によって変わる。
冬から春に高品質ないちごを作るなら、一季成り品種が現在も主力だ。

とちおとめやあまおうなど、日本の主要ブランドいちごの多くが一季成りになる。

一方、
・夏から秋にも収穫したい
・北海道や高冷地で栽培する
・ケーキ用の国産いちごを供給する

といった場合には四季成り性が大きなメリットになる。

つまり、
一季成り=古い
四季成り=新しくて優秀
という関係ではない。

収穫したい時期によって、それぞれ適した役割がある。

一年中いちごがあるのは、この2種類を使い分けているから

一季成りの促成栽培と四季成りの夏秋栽培の流れや主産地を比較した図

前の記事では、日本のいちご産地が季節によって移動することを調べた。
今回、一季成りと四季成りまで見ると、その仕組みがさらに分かりやすくなる。

冬から春は、
一季成り品種
+
促成栽培
+
栃木・福岡・熊本など

夏から秋は、
四季成り品種
+
冷涼な気候
+
北海道・東北・高冷地

という組み合わせが中心になる。

そして国産いちごが足りない部分を輸入品が補う。
つまり一年中同じ品種を無理に作っているわけではない。

季節に合わせて、場所だけでなく品種の性質まで変えている。

これが、日本で一年中いちごを食べられる大きな理由の一つだった。

調べて思ったこと

一季成りと四季成りという言葉を最初に見たときは、
「年に1回実るか、何回も実るか」という単純な違いだと思っていた。

実際には、違うのは花芽を作れる環境だった。
秋の低温・短日で花を作る一季成り。
それより高温・長日の環境でも花を作れる四季成り。

この小さな植物の性質の違いが、日本全国のいちご産地や出荷時期にまでつながっている。

さらに、昔の四季成り品種では味や果実品質に課題があり、
そこへ一季成り品種のおいしさを交配して改良してきたことも面白かった。

「夏にもいちごがある」という当たり前の売り場の裏側には、
産地リレーだけでなく、品種改良まで含めた仕組みがあった。

出典

  • 農研機構「四季成り性イチゴ品種『なつあかり』『デコルージュ』のランナー発生条件」
  • 農研機構「夏のしずく」
  • 農研機構「なつあかり」
  • 農研機構「デコルージュ」
  • 農研機構「イチゴ新品種『なつあかり』『デコルージュ』」
  • 農畜産業振興機構「夏秋どりいちご」
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この記事を書いた人

Field Note Farmのアバター Field Note Farm 東京で暮らす会社員

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材の生産背景、新規就農について調べたことや考えたことを中心にまとめています。

将来的な新規就農を目指しながら、農業体験や自治体相談、地域研究を続けており、その過程も記録しています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

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