さといもには、土垂(どだれ)や石川早生、八つ頭、えびいもなど、さまざまな種類がある。
一般的な丸いさといもだけでなく、赤い芽を持つものや、
たけのこのように長く伸びるものもあり、形や食感は品種によって異なる。
さといもの大きな特徴は、品種によって食べる部分まで違うことだ。
地下にできる子いもを食べる品種もあれば、大きく育った親いもを食べる品種もあり、両方を利用するものもある。
代表的な品種の特徴から、親いも・子いもができる仕組み、日本の生産量と主な産地、農家の栽培方法まで比較する。
さといもの親いも・子いも・孫いもとは?

さといもは、地下にある茎の一部が太くなり、養分を蓄えた部分を食べる野菜だ。
じゃがいもと同じく根ではなく茎が大きくなったもので、植物学では「球茎(きゅうけい)」と呼ばれる。
畑に種いもを植えると、その上に大きな親いもが育ち、周囲に子いもができる。
さらに子いもから孫いもが増えるため、収穫時には一つの株から複数のいもがまとまって出てくる。
ただし、すべての品種で同じように親いもや子いもが発達するわけではない。
さといもは、主に食用にする部分によって次の3種類に分けられる。
| 分類 | 食べる部分 | 代表的な品種・品種群 |
|---|---|---|
| 子いも用 | 主に子いも・孫いも | 土垂、石川早生 |
| 親いも用 | 大きく育った親いも | たけのこいも |
| 親子兼用 | 親いもと子いもの両方 | 八つ頭、セレベス、唐の芋 |
普段スーパーで見かける小ぶりなさといもには、土垂や石川早生など、子いもを食べる品種が多い。
一方、たけのこいもでは親いもが大きく育ち、八つ頭では親いもと子いもが一体化したような独特の形になる。
なお、さといもには地下のいもだけでなく、
葉を支える茎のような部分である「葉柄(ようへい)」を食べるものもある。
食用の葉柄は「ずいき」と呼ばれ、地域によって煮物や酢の物などに利用されている。
代表的なさといも6種類の特徴を比較

日本で栽培されているさといもには数多くの品種や地域系統があるが、
食用にする部分や食感によって特徴を整理できる。
代表的な6種類を比較すると、次のようになる。
| 品種・呼び名 | 食べる部分 | 主な特徴 | 食感・用途 |
|---|---|---|---|
| 土垂(どだれ) | 子いも・孫いも | 丸みのある形で関東を中心に普及 | ねっとり、煮物・汁物 |
| 石川早生(いしかわわせ) | 子いも・孫いも | 小ぶりで収穫時期が早い | 柔らかく、きぬかつぎなど |
| 八つ頭(やつがしら) | 親いも・子いも | 親子がまとまって大きな塊になる | ホクホク、煮物・正月料理 |
| セレベス | 親いも・子いも | 芽が赤みを帯びる赤芽系 | 比較的ホクホク、煮物 |
| えびいも | 主に子いも | 唐の芋系を特殊な方法で育て、エビのように曲がる | きめ細かく、煮崩れしにくい |
| たけのこいも | 親いも | 細長く大きく育つ。京いもとも呼ばれる | 粉質でホクホク、煮物 |
※「えびいも」は唐の芋系の品種を特別な方法で育てたものの呼び名。「京いも」は一般にたけのこいもを指し、えびいもとは異なる。
土垂・石川早生|子いもを食べる代表品種
土垂は関東地方を中心に広く栽培されてきた品種で、強い粘りと柔らかな食感が特徴だ。
秋から冬にかけて収穫され、煮物やけんちん汁などに利用される。
石川早生は土垂より早い時期に収穫できる品種で、比較的小さな子いもが多くできる。
皮ごと蒸したりゆでたりして、皮をむきながら食べる「きぬかつぎ」にも向いている。
どちらも子いもを利用するが、収穫時期やいもの大きさに違いがある。
早く出荷できる石川早生と、秋冬の出荷を支える土垂は、産地でも異なる役割を持っている。
八つ頭・セレベス・えびいも|親子兼用の品種
八つ頭は親いもと子いもがまとまって大きな塊になるのが特徴で、加熱するとホクホクした食感になる。
多くのいもが集まった姿から縁起物とされ、おせち料理などにも利用されてきた。
セレベスは芽や葉柄の一部が赤みを帯びるため、赤芽いもとも呼ばれる。
親いもと子いもの両方を食べることができ、一般的な土垂よりもホクホクした食感を楽しめる。
えびいもは、唐の芋という品種群から育てられるさといもだ。
成長する子いもの周囲に繰り返し土を寄せることで、エビのように曲がった形に仕上げる。
京都の伝統野菜として知られ、煮崩れしにくい性質を生かして京料理にも使われている。
たけのこいも|親いもを大きく育てる品種
たけのこいもは、ほかのさといもとは異なり、主に大きく育った親いもを食べる品種だ。
細長い形で、地面から伸びる姿がたけのこに似ていることから名前が付いた。
「京いも」という名前でも流通しているが、京都のえびいもとは別の種類になる。
宮崎県などの温暖な地域で栽培され、比較的粉質で煮崩れしにくいため、煮物などに利用されている。
さといものねっとり・ホクホクした食感は何が違う?
さといもといえば、煮物にしたときのねっとりした食感や、皮をむいたときのぬめりが特徴だ。
ただし、すべての品種が同じように粘るわけではなく、
土垂のように粘りの強いものもあれば、八つ頭やたけのこいものようにホクホクした食感のものもある。
こうした違いには、いもに含まれるでん粉や水分、粘りに関係する成分、加熱後の肉質などが関係している。
品種によってこれらの性質が異なるため、煮たときの柔らかさや口当たりにも違いが生まれる。
また、ぬめりの強さと煮崩れのしやすさは同じではない。
粘りのある土垂は煮物に適している一方、粉質のえびいもやたけのこいもにも煮崩れしにくい特徴がある。
さといもを料理で使い分ける場合は、単純な粘りの強さだけでなく、
加熱後の柔らかさや形の残りやすさも品種選びのポイントになる。
日本のさといも生産量と主な産地

農林水産省が2026年9月に公表した2025年産の速報値によると、全国のさといも収穫量は11万7,000tだった。
2024年産の確報値11万8,900tと比べると、約2%の減少となっている。
2025年産の都道府県別収穫量は、次のとおりだ。
| 順位 | 都道府県 | 収穫量 | 全国比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 埼玉県 | 17,300t | 約14.8% |
| 2 | 宮崎県 | 11,200t | 約9.6% |
| 3 | 千葉県 | 9,600t | 約8.2% |
| 4 | 愛媛県 | 8,930t | 約7.6% |
| 5 | 鹿児島県 | 6,340t | 約5.4% |
| 6 | 新潟県 | 5,610t | 約4.8% |
| — | 全国 | 117,000t | 100% |
出典:農林水産省「令和7年産野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」。
2025年産は速報・概数であり、確報公表時に数値が改定される可能性がある。全国比は収穫量から計算した概数。
じゃがいもが北海道に生産量の大半を集中させているのに対し、さといもは複数の地域に主産地が分かれている。
最大産地の埼玉県でも全国の約15%で、関東から九州まで幅広い地域で栽培されていることが分かる。
ただし、都道府県別の収穫量はさといも全体をまとめた数字だ。
土垂、石川早生、八つ頭などの品種別に全国の生産量を比較できる統計ではないため、品種ごとの順位とは区別する必要がある。
産地によって栽培されるさといもは違う?
さといもは高温多湿を好む作物で、日本では関東から九州にかけて主要な産地が形成されている。
地域によって気候や土壌条件が異なるほか、昔から栽培されてきた品種や、産地が独自に育成した品種にも違いがある。
埼玉県では、所沢市・狭山市・川越市などが代表的な産地だ。
JAいるま野では土垂や蓮葉(はすば)を主に栽培しており、
ねっとりした食感が特徴のさといもを秋から春にかけて出荷している。
堆肥や緑肥を利用した土づくりに加え、選果施設による品質管理にも取り組んでいる。
千葉県では八街市・富里市・山武市などで栽培が盛んで、11〜12月ごろに旬を迎える。
宮崎県では温暖な気候を利用した栽培が行われ、全国的にも収穫量の多い産地となっている。
愛媛県の「伊予美人」は品種改良から生まれた
愛媛県では、県が育成した「愛媛農試V2号」という品種を「伊予美人」のブランド名で販売している。
従来栽培されていた女早生をもとに選抜された品種で、2008年に品種登録された。
伊予美人は白く滑らかな肉質に加え、丸みのある形や収量性が特徴だ。
愛媛県東部では、従来品種から伊予美人への切り替えが進み、現在の産地を支える品種となっている。
また、新潟県では大和早生が広く栽培され、五泉市の「帛乙女(きぬおとめ)」など地域ブランドが形成されている。さといもを使った郷土料理「のっぺ」も知られており、品種の違いは地域の食文化とも結び付いている。
さといも農家は1年でどう育てている?
さといもは、じゃがいもと同じように種いもから育てる作物だ。
一般的な露地栽培では春に種いもを植え、夏の間に大きな葉や茎を育て、秋から冬にかけて収穫する。
さといもは暖かい環境でよく育つ一方、乾燥に弱い性質がある。
特に夏場の水分不足は、いもの肥大や収量に影響するため、産地では水やりや土の乾燥を防ぐ管理が重要になる。
ただし、水が長期間たまるような環境では生育に悪影響が出るため、水はけとの両立も必要だ。
栽培中には、株元に土を寄せる「土寄せ」という作業も行われる。地下で子いもが育つ場所を確保し、
いもの露出を防ぐための管理で、えびいものように土寄せによって形を作る品種もある。
収穫したさといもは、親いもや子いもを分け、土を落として大きさや品質ごとに選別する。
さといもは低温や乾燥に弱いため、貯蔵中も品質を保つ管理が欠かせない。
秋に収穫が集中する一方、石川早生などの早生品種や温暖な地域からの出荷、
収穫後の貯蔵を組み合わせることで、年間を通じて店頭に並ぶようになっている。
まとめ|さといもは品種によって食べる部分も食感も違う
さといもは、土垂や石川早生のように子いもを食べる品種、
たけのこいものように親いもを食べる品種、八つ頭やセレベスのように両方を利用する品種に分けられる。
品種によっていもの付き方が異なり、ねっとりしたものからホクホクしたものまで食感にも違いがある。
国内では埼玉県、宮崎県、千葉県、愛媛県などが主産地となっている。
伊予美人や大和早生のような地域に根付いた品種もあり、各地の栽培技術や食文化と結び付いてきた。
同じさといもでも、親いもと子いものどちらを利用するかによって、収穫する部分や料理への使い方が変わる。
品種の違いを知ることで、普段の煮物や汁物に使われるさといもの特徴も、より分かりやすくなる。