さつまいもには、紅はるかやシルクスイート、紅あずま、安納いもなど、さまざまな種類がある。焼き芋にすると蜜のように甘くなるものもあれば、昔ながらのホクホクした食感を楽しめるものもあり、同じさつまいもでも品種によって特徴は大きく異なる。
さらに、日本のさつまいもは鹿児島県や茨城県、千葉県などで多く生産されているが、産地によって主な用途も違う。スーパーで売られる青果用だけでなく、干しいも、焼酎、でん粉などの原料としても利用されているためだ。
代表的な品種の味や食感、歴史を比較しながら、日本の生産量や産地ごとの特徴、農家の栽培方法まで紹介する。
さつまいもの代表品種5種類を比較

さつまいもの品種を選ぶときに分かりやすい違いが、加熱したときの食感だ。大きく分けると、
ホクホクした粉質系、しっとりした食感の品種、ねっとりした粘質系がある。
代表的な5種類の特徴をまとめると、次のようになる。
| 品種・品種群 | 食感の傾向 | 主な特徴 | 向いている料理 |
|---|---|---|---|
| 紅はるか(べにはるか) | しっとり〜ねっとり | 甘みが強く、加熱後は柔らかい | 焼き芋、干しいも |
| シルクスイート | しっとり・なめらか | きめ細かな舌触り | 焼き芋、スイートポテト |
| 紅あずま(ベニアズマ) | ホクホク | 黄色い果肉で、ほどよい甘み | 天ぷら、大学芋、いもご飯 |
| 安納いも | ねっとり | 加熱すると甘みが強く、濃厚な食感 | 焼き芋、蒸しいも |
| 高系14号 | ホクホク | 昔ながらの粉質系。地域ごとの系統も多い | 天ぷら、煮物、大学芋 |
※食感は一般的な傾向で、収穫時期や貯蔵期間、加熱方法によって変わる。
また「安納いも」には安納紅・安納こがねなどが含まれ、「高系14号」には鳴門金時などの地域系統がある。
紅はるか・シルクスイート|しっとり系の代表品種
紅はるかは、農研機構が育成し、2010年に品種登録された品種だ。
高い糖度としっとりした食感に加え、いもの形がそろいやすいことや収量性も評価されている。
焼き芋や干しいもに適し、九州から関東まで幅広い地域で栽培されている。
シルクスイートは、カネコ種苗が開発した品種で、正式な品種登録名は「HE306」という。
名前のとおり滑らかな舌触りが特徴で、焼き芋だけでなく、スイートポテトなどの菓子にも向いている。
どちらも柔らかい食感を持つが、紅はるかは強い甘み、
シルクスイートはきめ細かな舌触りが特徴として紹介されることが多い。
ただし、甘さを一律に順位づけできるわけではなく、保存状態や焼き方によっても仕上がりが変わる。
紅あずま・高系14号|ホクホクした食感の代表品種
紅あずまは、1984年に農林登録された品種で、関東地方を中心に普及してきた。
加熱するとホクホクした食感になり、昔ながらの焼き芋や天ぷら、大学芋などに使いやすい。
高系14号は、戦後から長く利用されてきた品種で、西日本のさつまいも栽培を支えてきた。
粉質の食感と上品な甘みが特徴で、徳島県の鳴門金時や高知県の土佐紅など、地域ごとに選ばれた系統が知られている。
紅あずまと高系14号は、近年人気のねっとり系とは異なる食感を持つ。
形を保ちながら調理したい天ぷらやいもご飯などでは、こうしたホクホク系の品種にも根強い需要がある。
安納いも|種子島で受け継がれてきたさつまいも
安納いもは、鹿児島県の種子島で受け継がれてきたさつまいもだ。
1998年度には在来種から選抜された安納紅と安納こがねが品種登録され、地域の特産品として広がった。
安納紅は皮が紅色、安納こがねは淡い黄色で、どちらも加熱すると濃い黄色の果肉とねっとりした食感が特徴になる。紅はるかやシルクスイートと並び、甘みの強い焼き芋用の品種として知られている。
ホクホク系とねっとり系はなぜ食感が違う?

さつまいもの食感には、でん粉の量や性質、水分、加熱中の成分変化などが関係している。
でん粉が多く、加熱後に粉っぽくほぐれやすい品種はホクホクした食感になり、
柔らかく水分を感じやすい品種はしっとり、ねっとりした食感になりやすい。
甘さにも品種の違いがあるが、収穫した時点の糖の量だけで決まるわけではない。
さつまいもを加熱すると、でん粉の一部が酵素の働きで麦芽糖などに変わるため、焼き方によっても甘みが変化する。
また、紅はるかなどは収穫後に一定期間貯蔵することで糖が増え、食味が変化することが知られている。
ただし、長く保存すれば必ず甘くなるわけではなく、品種に合った温度管理が必要だ。
品種による食感の違いに、加熱と貯蔵の影響が重なることで、焼き芋の甘みや柔らかさに幅が生まれる。
日本のさつまいも生産量と主な産地

農林水産省の2025年産確報によると、日本のさつまいも(統計上の名称は「かんしょ」)の収穫量は69万9,400tだった。前年の71万7,000tから約2%減少している。
主な都道府県の収穫量は、次のとおりだ。
| 順位 | 都道府県 | 2025年産収穫量 | 全国比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鹿児島県 | 219,000t | 約31% |
| 2 | 茨城県 | 195,500t | 約28% |
| 3 | 千葉県 | 80,000t | 約11% |
| 4 | 宮崎県 | 69,500t | 約10% |
| ― | その他 | 135,400t | 約19% |
| ― | 全国 | 699,400t | 100% |
出典:農林水産省「令和7年産かんしょの作付面積及び収穫量」。全国比は四捨五入した概数。
鹿児島県と茨城県だけで全国の約6割を占め、千葉県と宮崎県を加えると約8割になる。
さつまいもは全国各地で栽培されているものの、生産は比較的温暖な地域に集中している。
ただし、収穫量が多い県ほど、スーパー向けのさつまいもを多く出荷しているとは限らない。
鹿児島県では焼酎やでん粉の原料となるさつまいもも多く、
茨城県では青果用や干しいもなどの加工用が重要な位置を占めている。
なお、この統計はさつまいも全体の収穫量であり、紅はるかやシルクスイートといった品種ごとの生産量ではない。
鹿児島と茨城ではなぜさつまいも栽培が盛んなのか?
国内の2大産地である鹿児島県と茨城県は、どちらもさつまいもの生産に適した条件を持っている。
ただし、栽培される品種や用途を見ると、産地の特徴は大きく異なる。
鹿児島県|火山灰土壌と焼酎・でん粉産業
鹿児島県には、シラスと呼ばれる火山灰由来の土壌が広く分布している。
水はけが良い一方、養分や水分を保持しにくい土地も多いが、さつまいもは比較的やせた土壌でも栽培できる作物だ。
また、鹿児島県ではさつまいもが芋焼酎やでん粉の原料としても利用されている。
農林水産省の用途別資料でも、青果用だけでなく焼酎用・でん粉用の割合が大きいことが示されている。
焼酎用にはコガネセンガンなどが使われ、近年は病気に強い「みちしずく」といった新品種の導入も進められている。鹿児島県の生産規模は、気候や土壌条件に加えて、こうした加工産業の需要にも支えられている。
茨城県|青果用と干しいもを支える産地
茨城県では、鹿行地域などに水はけの良い畑が広がり、紅はるか・シルクスイート・紅あずまなどが栽培されている。青果用の生産に加え、県内には干しいもの加工産業が発達していることも特徴だ。
干しいもは、蒸したさつまいもを切って乾燥させた加工食品で、原料の品種によって色や甘み、柔らかさが異なる。
近年は紅はるかなどを使用した、しっとりした食感の商品も広く販売されている。
また、茨城県では貯蔵施設を活用し、収穫期以外にもさつまいもを出荷している。
秋に収穫したさつまいもが年間を通じて店頭に並ぶ背景には、こうした貯蔵技術も関係している。
千葉県でも青果用のさつまいも栽培が盛んで、宮崎県では鹿児島県と同じく焼酎原料としての需要が大きい。
同じさつまいも産地でも、主な販売先や用途には地域差がある。
さつまいも農家はどうやって栽培している?
さつまいもは、じゃがいものように種いもを直接畑に植えるのではなく、
いもから伸びたつるを切り取り、苗として植える方法が一般的だ。
さつまいもの食べる部分は茎ではなく根が太くなったもので、植えた苗の節から伸びた根の一部が大きくなる。
主な産地では春から初夏にかけて苗を植え、秋に収穫する栽培が多い。
農林水産省では、植え付けから収穫までの目安を約120日としているが、
地域や品種、出荷目的によって期間は変わる。
さつまいもは暖かい気候を好む一方、畑に水がたまると生育や品質に悪影響が出やすい。
農家は水はけの良い畑を選び、土を盛り上げた畝を作るなどして、いもが育つ環境を整えている。
収穫時には皮を傷つけないことも大切だ。貯蔵中の腐敗を防ぐため、
産地では温度や湿度を管理しながら品質を維持している。
近年は「サツマイモ基腐病」という、つるの根元やいもが腐る病気も問題になっている。
2018年に国内で初めて確認され、特に南九州の産地で大きな影響が出たことから、
病気に強い品種の開発や健全な苗の確保が重要になっている。
さつまいもの品種はどう変わってきた?
日本のさつまいも栽培では、長い間、ホクホクした食感の品種が親しまれてきた。
西日本では高系14号、関東では紅あずまなどが広く栽培され、焼き芋や家庭料理に利用されてきた。
その後、安納いもや紅はるか、シルクスイートなど、しっとり・ねっとりした食感を持つ品種の人気が高まった。
焼き芋が菓子やスイーツに近い感覚でも楽しまれるようになり、
甘みや滑らかな舌触りが品種選びの重要な要素になっている。
一方、農業の側では食味だけでなく、収量の多さや病気への強さ、貯蔵のしやすさも重視されている。
紅はるかも、甘さだけでなく形のそろいやすさや病害虫への抵抗性を考慮して育成された品種だ。
また、焼酎やでん粉に使う品種には、青果用とは異なる性能が求められる。
さつまいもの品種改良は、消費者の好みと農家・加工業者の需要の両方に合わせて続けられている。
まとめ|さつまいもは品種だけでなく産地や用途にも違いがある
さつまいもの代表品種には、しっとり甘い紅はるか、滑らかなシルクスイート、ホクホクした紅あずまや高系14号、ねっとりした安納いもなどがある。
それぞれ食感や甘み、向いている料理が異なるが、貯蔵や加熱によっても仕上がりは変化する。
国内の生産量は鹿児島県と茨城県が特に多く、2025年産では両県で全国の約6割を占めた。
鹿児島県では焼酎・でん粉原料、茨城県では青果用・干しいもなど、地域によって重要な用途も異なる。
さつまいもの品種は、単においしさだけで選ばれているわけではない。
栽培しやすさ、病害虫への強さ、収穫後の貯蔵、加工への適性といった条件も、
産地で作られる品種の違いにつながっている。
参考資料
- 農林水産省|令和7年産かんしょの作付面積及び収穫量
- 農研機構|べにはるかの品種情報
- 農研機構|高糖度サツマイモ品種「べにはるか」と「ふくむらさき」
- 鹿児島県|安納いもの由来と特徴
- 茨城県|かんしょの生産と産地情報
- 農林水産省|サツマイモ基腐病対策
- 農研機構|焼酎・でん粉原料用品種「みちしずく」
