ニュースやSNSを開けば、
・農業人口の減少
・高齢化
・耕作放棄地
など、日本農業の厳しい話題が目に入ることが多い。
会社員として生活していると、いつの間にか「農業=縮小が続いている産業」
というイメージを持っていた。
しかし、農林水産省のデータを改めて見ていくと、そこには単純な「衰退」という言葉だけでは整理できない、大きな構造変化が見えてきた。
特に印象的だったのは、下記になる。
・北海道の圧倒的な規模感
・「高齢化」というより「担い手総数」が減少している現実
・農業人口は減っている一方で、一経営体あたりの面積は拡大していること
今回は、農林水産省のデータを整理しながら、日本農業の「現在地」を考えてみたい。
食料自給率は長期的に低下
まず前提となるのが、日本の食料自給率だ。
よく使われる「供給熱量(カロリー)ベース」は、日本人が消費するカロリーのうち、どれだけを国内生産でまかなえているかを示す指標である。
| 年 | 供給熱量 | 生産額 | 飼料 |
| 1965 | 73% | 86% | 55% |
| 1985 | 53% | 82% | 27% |
| 2005 | 40% | 70% | 25% |
| 2024 | 35% | 64% | 26% |
※出典:農林水産省
自給率は長期的に低下しており、先進国の中でも低い水準にある。
ただ、個人的には、これまで食料自給率そのものを強く意識することはあまりなかった。
一方で、近年はインフレや輸送コスト上昇の影響もあり、以前より「海外依存」の影響を少し意識するようになった感覚はある。
とはいえ、現時点では「輸入=悪」と考えているわけではなく、必要に応じて海外に頼ること自体は合理的な部分もあると思っている。
むしろ印象的だったのは、家賃やカップラーメンなどの価格が大きく上がる中で、農産物価格は長年かなり抑えられてきたようにも感じた点だった。
北海道の圧倒的な存在か
都道府県別の食料自給率の上位を見ると、日本農業が「どこで支えられているか」が見えてくる。
| 都道府県 | 自給率 |
| 北海道 | 214% |
| 秋田県 | 202% |
| 山形県 | 148% |
| 青森県 | 123% |
| 新潟県 | 114% |
※出典:農林水産省
北海道の「213%」という数字は圧倒的だった。

一方で、秋田・山形・青森など東北地域が高いことは少し意外だった。
ただ、見ていくと、コメ生産が強い地域が自給率を押し上げている印象も強い。
北海道は、
・畑作
・酪農
・小麦
・じゃがいも
・甜菜
など、大規模農業が集積している地域でもあり、日本の食料供給を支える中心地の一つになっている。
農業人口は減少しているが、平均年齢は大きく変わらず
基幹的農業従事者数のデータを見てみる。
| 年 | 従事者数 | 65歳以上 | 平均年齢 |
| 2015 | 175.7万人 | 114万人 | 67.1万人 |
| 2020 | 136.3万人 | 94.9万人 | 67.8万人 |
| 2025 | 103.6万人 | 72.1万人 | 67.7万人 |
※出典:農林水産省
農業人口はかなりのペースで減少している。
ただ、個人的に意外だったのは、「平均年齢」はそこまで大きく変化していない点だった。
ニュースでは「高齢化」が強調されることも多いが、実際には、
「高齢化」+「担い手総数そのものの減少」の両方が進んでいる構造にも見える。
耕地面積は減っているが、一人当たり面積は拡大
耕地面積全体と一経営体あたりの耕作面積を北海道と都府県に分けて見てみる。
| 年 | 耕地面積 | 北海道 | 都府県 |
| 2015 | 447.1万ha | 226.5ha | 1.82ha |
| 2020 | 437.2万ha | 30.21ha | 2.15ha |
| 2025 | 423.9万ha | 33.7aha | 2.60ha |
※出典:農林水産省
耕地面積は減少しているものの、農業人口ほど急激ではない。
その結果、残った経営体が周囲の農地を引き受ける「集約化・大規模化」が進んでいるように見える。
特に北海道の規模感は圧倒的だった。
北海道の平均面積は約33.7ha。
一方で都府県平均は約2.6haであり、約13倍もの差がある。
日本国内でも、まったく異なるスケールの農業が同時に存在していることが分かる。
スマート農業は「平地」と「山間部」で意味が変わる

今回データを見ながら特に感じたのは、スマート農業の効果も地域によって大きく変わるということだった。
北海道のように平地が広く、区画が大きい地域では、大型機械やGPS自動運転との相性も良い。実際、一経営体あたりの面積拡大を見る限り、機械化や集約化による効率化はかなり進みやすい環境に見える。
一方、本州の山間部では、小区画・傾斜地・分散農地も多い。そのため、技術が進歩しても、面積あたりの導入コストや機械効率では不利になりやすい。
「スマート農業=日本農業全体の救世主」と単純化するのではなく、「どの地域の、どの規模の農業なのか」まで見ていく必要があると感じた。
山間部農業の「数字に見えない役割」

また、農業は単純に「食料を作る仕事」だけではないとも感じた。
特に山間部では、草刈りや水路維持、景観管理、獣害対策など、地域環境そのものの維持も担っている。
食料生産効率だけでなく、そうした地域維持機能まで含めて考えると、単純な生産性だけでは測れない部分も大きい。
もし山間部を中心に耕作放棄地が増え続ければ、食料生産以外の部分でも影響は大きくなるだろう。
まとめ
今回データを見て感じたのは、日本農業は単純に「衰退」と一言で整理できるものではないということだった。
実際には下記のような構造変化が進んでおり、転換期にきている。
・農業人口減少
・集約化
・大規模化
・機械化
・地域差
特に今後は、
・平地では大規模化・スマート農業
・山間部では小規模でも維持できる仕組み作り
の両方が重要になっていくのかもしれない。
「日本農業はどうなっているのか」を考える際は、「どの地域の、どの規模の話なのか」
を分けて考えることが、かなり重要だと感じた。