シャインマスカットが広がってから、ぶどうを皮ごと食べることがかなり普通になった。
最近では黒ぶどうのナガノパープルや、赤ぶどうのクイーンルージュ、サンシャインレッドなど、シャインマスカット以外にも皮ごと食べられる品種が増えている。
一方、巨峰やピオーネも皮そのものを食べようと思えば食べられるが、一般的には皮をむいて食べることが多い。
では、皮ごと食べやすいぶどうと、皮をむいて食べるぶどうでは何が違うのだろうか。
調べてみると、単純に「皮が薄いかどうか」だけではなかった。
果皮の渋みや硬さに加え、果皮と果肉がどれくらい離れやすいかという品種の性質も関係している。
今回は、日本で作られている皮ごと食べやすいぶどうの種類と、それぞれの味や粒、価格の傾向、なぜ皮ごと食べられるのかまで調べた。
皮ごと食べられるぶどうにはどんな種類がある?

現在、日本で栽培されているぶどうには、皮ごと食べやすい品種がかなり増えている。
代表的なものを整理すると、次のようになる。
| 品種 | 色 | 粒 | 種 | 味・食感 | 価格傾向 |
|---|---|---|---|---|---|
| シャインマスカット | 黄緑 | 大粒 | 種なし栽培 | 甘みが強く、パリッと硬め | 中〜高 |
| ナガノパープル | 黒 | 大粒 | 種なし | 濃厚な甘み、皮ごと食べやすい | 高め |
| 瀬戸ジャイアンツ | 黄緑 | 大粒 | 種なし栽培 | 爽やかな甘み、サクッとした食感 | 高め |
| クイーンルージュ | 赤 | 大粒 | 種なし | 高糖度、皮ごと食べられる | 高め |
| サンシャインレッド | 赤 | 大粒 | 種なし | 甘みが強く華やかな香り | 高め・流通少 |
| 神紅 | 赤 | 大粒 | 種なし | 高糖度、紅茶のような香り | 高め・流通少 |
| サンヴェルデ | 黄緑 | 大粒 | 種なし栽培 | 甘みが強く硬めの果肉 | 流通少 |
色も産地もかなり違う。
現在では、「皮ごと食べられる=黄緑色のシャインマスカット」というわけではなくなっている。
黒、赤、黄緑のそれぞれで、皮ごと食べやすい大粒品種が作られている。
ぶどうはなぜ皮をむいて食べる品種がある?
そもそも、ぶどうはすべて皮を食べられないわけではない。
巨峰やピオーネの果皮も、食べようと思えばそのまま食べられる。
ただ、日本で昔から多く栽培されてきた巨峰系などのぶどうには、果皮が比較的厚く、渋みを感じやすいものがある。
さらに大きな違いが、果皮と果肉の関係だ。
ぶどうには、果肉と皮が簡単に離れる品種と、離れにくい品種がある。
巨峰は指で押すと果肉だけがつるっと出てくる。
このように果皮と果肉が離れやすい性質を持つぶどうでは、自然と皮をむいて食べることが多くなる。
一方、シャインマスカットは果皮と果肉が密着している。
皮だけをきれいにはがすことが難しく、果皮自体も薄く渋みが少ないため、最初から一緒に食べる方が自然になる。
「皮が薄いから」という理由だけではなく、果皮と果肉がどうつながっているかも、食べ方に影響している。
シャインマスカットはなぜ皮ごと食べられる?
皮ごと食べられるぶどうの代表がシャインマスカットだ。
農研機構が育成し、2006年に品種登録された。
特徴は下記。
- 大粒
- 高糖度
- 酸味が少ない
- マスカット香
- 硬めの果肉
- 種なし栽培ができる
- 皮ごと食べられる
農研機構ではシャインマスカットについて、
果皮が比較的薄く、渋みが少なく、皮ごと食べられる品種として紹介している。
シャインマスカットの系譜をたどると、この特徴が偶然ではないことも分かる。
シャインマスカットは、
安芸津21号
×
白南
↓
シャインマスカット
として育成された。
さらに安芸津21号には、
スチューベン
×
マスカット・オブ・アレキサンドリア
の系統が入っている。
欧州系ぶどうには、果肉が硬く皮ごと食べられるものが多い一方、日本では裂果や病害など栽培の難しさがあった。
そこで農研機構は、欧州系の食味と米国系の栽培しやすさを組み合わせる育種を長期間続けた。
その結果として生まれたのがシャインマスカットだった。
つまり、「皮ごと食べられる」という特徴も、
日本で栽培しやすいぶどうを作るための長い品種改良の中で選ばれてきた性質になる。

ナガノパープルは黒ぶどうなのに皮ごと食べられる
黒ぶどうで代表的なのがナガノパープルだ。
長野県果樹試験場が、
巨峰
×
リザマート
↓
ナガノパープル
として育成した。
巨峰を親に持っているため、見た目や濃厚な味には巨峰系の特徴がある。
ただし大きく違うのが食べ方だ。
巨峰は基本的に皮をむくことが多いのに対し、ナガノパープルは種がなく、皮ごと食べられる。
長野県も「種なしで皮ごと食べられる黒系大粒ぶどう」という点を大きな特徴としている。
黒系ぶどうでも、
巨峰のような濃厚な味
+
皮ごとの食べやすさ
を組み合わせられることを示した品種でもある。
現在ではナガノパープルの育成者権が満了しているため、長野県外でも栽培されるようになっている。
瀬戸ジャイアンツはシャインより先に皮ごと食べられた
皮ごと食べられる黄緑ぶどうは、シャインマスカットが最初というわけではない。
瀬戸ジャイアンツは、
グザルカラー
×
ネオ・マスカット
↓
瀬戸ジャイアンツ
として岡山県で育成され、1989年に品種登録された。
シャインマスカットの品種登録は2006年なので、それよりかなり前から存在している。
瀬戸ジャイアンツも果皮が薄く、種なし栽培することで皮ごと食べられる。
粒にはくぼみができやすく、桃のような形になることも特徴だ。
食感はシャインマスカットとは少し違う。
シャインマスカットは硬めでパリッとした食感が強いのに対し、瀬戸ジャイアンツはサクッとした軽い食感を持つ。
味もシャインマスカットほど濃厚ではなく、爽やかな甘みが特徴になる。
見た目や「皮ごと」という特徴だけを見ると似ているが、食べ比べるとかなり違うぶどうだ。
赤ぶどうでも皮ごと食べられる品種が増えている
最近特に増えているのが、皮ごと食べられる赤色の大粒ぶどうだ。
これまでの記事でも、
- クイーンルージュ
- サンシャインレッド
- 神紅
などを見てきた。
面白いのは、この3品種すべてにシャインマスカットの血が入っていることだ。
ユニコーン × シャインマスカット
→ クイーンルージュ
サニードルチェ × シャインマスカット
→ サンシャインレッド
ベニバラード × シャインマスカット
→ 神紅
という系譜になる。
3品種とも赤色でありながら、種なしで皮ごと食べられるというシャインマスカット型の食べやすさを持つ。
つまりシャインマスカットは、それ自体が人気品種になっただけではない。
現在では「皮ごと食べられる」という特徴を他の色の新品種へ広げる親としても使われている。
巨峰とピオーネは皮ごと食べられない?
巨峰やピオーネについて、「皮は食べられない」と思っている人もいるかもしれない。
しかし、果皮自体が食べられないわけではない。
違いは「皮ごと食べることを前提にした食味かどうか」に近い。
巨峰やピオーネの皮にはアントシアニンなどの成分が含まれているが、皮が比較的厚く、渋みもある。
さらに、果肉と果皮が離れやすいため、口に入れると皮だけ残りやすい。
そのため皮をむいた方が食べやすい。
一方、シャインマスカットやナガノパープルでは、果皮と果肉が離れにくく、皮自体も食べやすい。
同じ「ぶどうの皮」でも、品種によってかなり性質が違う。
皮ごと食べると味も変わる
皮ごと食べられるかどうかは、単に手間の問題だけではない。
果皮には、そのぶどう特有の香りや食感もある。
シャインマスカットの場合、パリッとした果皮と硬い果肉を一緒に噛むことで独特の食感になる。
ナガノパープルでは黒い果皮ごと食べることで、濃いぶどうらしい風味も感じやすい。
一方、果皮の渋みが強い品種では、皮ごと食べると果肉だけを食べたときとはかなり印象が変わる。
「皮を食べられるか」だけではなく、「皮を一緒に食べた方がおいしいように作られているか」という違いもある。
皮ごと食べられるぶどうは価格も高い?
現在、皮ごと食べられる代表品種には高価格帯のものが多い。
ただし、「皮ごと食べられるから高い」と単純には言えない。
| 品種 | 価格傾向 | 主な理由 |
|---|---|---|
| シャインマスカット | 中〜高 | 流通量は多いが贈答品も多い |
| ナガノパープル | 高め | 生産量がシャインより少ない |
| 瀬戸ジャイアンツ | 高め | 産地・流通量が限られる |
| クイーンルージュ | 高め | 長野県限定、流通量が少ない |
| サンシャインレッド | 高め | 山梨県の新品種、流通量が少ない |
| 神紅 | 高め | 島根県限定、生産量が少ない |
シャインマスカットは栽培面積が増え、家庭用の商品もかなり流通するようになった。
一方、クイーンルージュ、サンシャインレッド、神紅などはまだ生産量が少なく、地域限定品種として扱われているため高価格になりやすい。
価格には皮ごとの食べやすさだけでなく、
- 生産量
- 房や粒の大きさ
- 糖度
- 等級
- 希少性
- 産地ブランド
など多くの要素が影響している。
日本のぶどうは「種なし」の次に「皮ごと」へ変わった?

日本のぶどうの歴史を見ると、食べやすさはかなり重要なテーマになっている。
最初に広く普及したのが種なしデラウェアだった。
その後、巨峰やピオーネのような大粒ぶどうでも種なし栽培技術が広がった。
そして現在は、シャインマスカットを中心に、
大粒
+
種なし
+
皮ごと
というぶどうが増えている。
ナガノパープルやクイーンルージュ、サンシャインレッド、神紅なども、この流れの中にある。
前の記事で見たように、種なしは品種だけではなくジベレリンなどの栽培技術によって実現してきた。
一方、皮ごとの食べやすさは、果皮の厚さや渋み、果肉との密着性など品種そのものの性質がかなり重要になる。
日本のぶどうが食べやすくなってきた背景には、栽培技術と品種改良の両方があった。
調べて思ったこと
皮ごと食べられるぶどうについて調べる前は、単純に「皮が薄い品種」なのだと思っていた。
実際には、皮の薄さだけではなく、渋みや硬さ、さらに果皮と果肉が離れやすいかどうかまで関係していた。
特に面白かったのは、黒ぶどうや赤ぶどうにも皮ごと食べられる品種が増えていることだった。
ナガノパープルは巨峰を親に持ちながら皮ごと食べられ、
クイーンルージュや神紅などはシャインマスカットを親に使っている。
シャインマスカットが人気になったことで、「皮ごと食べられる」という特徴そのものが、
次の新品種へ受け継がれている。
種なしが当たり前になったように、これからは大粒ぶどうを皮ごと食べることも、さらに普通になっていくのかもしれない。
出典
- 農林水産省「ぶどうの品種」
- 農研機構「シャインマスカット」
- 長野県果樹試験場「ナガノパープル」
- JA全農長野「ぶどうは皮ごと食べられますか?」
- 農林水産省「品種登録データベース」
- 長野県「クイーンルージュ」
- 山梨県果樹試験場「サンシャインレッド」
- 島根県「神紅」
