春になるとスーパーに並び始める「新じゃが」。
一方で、じゃがいもには「春じゃが」や「秋じゃが」という呼び方もあり、何が違うのか分かりにくいところがある。
春じゃが・秋じゃがは主に栽培する季節に関係する呼び方で、新じゃがは収穫後、長期間貯蔵せずに出荷されるじゃがいもを指す。
別々の品種というわけではなく、同じ品種でも栽培時期や出荷方法によって呼び方が変わる。
また、日本では北海道と九州でじゃがいもの収穫時期が大きく異なる。
春作・秋作の違いから、地域ごとの収穫時期、代表品種、新じゃがの特徴まで紹介する。
春じゃが・秋じゃが・新じゃがの違い
春じゃが・秋じゃが・新じゃがは、同じ基準で分類されたものではない。
春じゃがと秋じゃがは栽培する季節に関係する呼び方で、
新じゃがは主に収穫から出荷までの期間に着目した呼び方だ。
| 呼び方 | 主な意味 | 特徴 |
|---|---|---|
| 春じゃが | 春作や春植えで育てるじゃがいもの通称 | 地域によって植え付け・収穫時期が異なる |
| 秋じゃが | 秋作や秋植えで育てるじゃがいもの通称 | 主に温暖な地域で秋に植え、晩秋から冬に収穫する |
| 新じゃが | 収穫後、長く貯蔵せずに出荷されるじゃがいも | 皮が薄く、みずみずしいものが多い |
春じゃが・秋じゃがという呼び方には、全国共通の厳密な区分があるわけではない。
農業では「春作」「秋作」や「春植え」「秋植え」といった言葉が使われ、地域によって栽培する季節も変わる。
例えば、北海道では春に種いもを植え、夏から秋にかけて収穫する。
秋に収穫するからといって、農業上の「秋植え」になるわけではない。
また、新じゃがも品種名ではない。
男爵やメークインの新じゃがもあれば、九州で多く作られているニシユタカの新じゃがもある。
じゃがいもの収穫時期は産地によって違う

日本のじゃがいもは、北海道だけでなく、長崎県や鹿児島県などでも多く生産されている。
北海道のような冷涼な地域では春に植えて夏から秋に収穫する一方、温暖な九州では冬から春にかけての栽培や、秋に植える栽培も行われている。
代表的な産地の栽培・収穫時期を整理すると、次のようになる。
| 地域・作型 | 主な植え付け時期 | 主な収穫・出荷時期 |
|---|---|---|
| 北海道・春植え | 4〜5月 | 8〜10月ごろ収穫 |
| 長崎県・春作 | 冬〜春 | 4〜7月ごろ収穫 |
| 長崎県・秋作 | 8〜9月ごろ | 11〜12月ごろを中心に収穫 |
| 鹿児島県・暖地栽培 | 秋〜冬など、地域によって異なる | 1〜6月ごろに出荷 |
※産地や品種、栽培方法によって時期は前後する。長崎県には冬作や収穫を遅らせる秋作などもあり、すべてが同じ日程ではない。
北海道は春に植えて秋に収穫する
北海道では、雪解け後の4〜5月ごろに種いもを植え付け、8〜10月ごろに収穫する栽培が中心だ。
収穫後は用途や品種に応じて貯蔵し、秋以降も長い期間出荷できるようにしている。
北海道は冬の寒さが厳しいため、九州のように秋に植えて冬に収穫する栽培には適していない。
比較的涼しい夏の気候を利用し、春から秋の一作でまとまった量を生産するのが特徴だ。
長崎・鹿児島では春作と秋作が行われる
長崎県では、温暖な気候を利用して春作と秋作の両方が行われている。
島原半島や五島列島などでは、冬から春にかけて育てたじゃがいもが春の新じゃがとして出荷される。
秋作では夏の終わりから秋に植え付け、主に晩秋から冬に収穫する。
同じ地域でも年に複数回栽培できるため、北海道とは異なる季節に新しいじゃがいもを供給できる。
鹿児島県では、徳之島や沖永良部島、種子島などの温暖な島々でもじゃがいもの栽培が盛んだ。
これらの地域では全国に先駆けて新じゃがが出荷され、鹿児島県全体の出荷時期は1〜6月ごろとなっている。
春作と秋作では栽培方法も変わる

春作と秋作では、植え付けから収穫までに経験する気温や天候が異なる。
じゃがいもは暑すぎる環境が苦手なため、農家はそれぞれの季節に合わせて栽培時期や管理方法を調整している。
春作では、栽培初期の低温や霜が問題になる一方、
収穫が遅れると梅雨の雨や気温の上昇によって腐敗しやすくなる場合がある。
長崎県では畑をシートで覆うマルチ栽培や、不織布による保温なども取り入れられている。
秋作では、植え付け時期の残暑が大きな課題になる。
土の温度が高すぎると種いもが腐敗したり、芽が正常に出なかったりするため、
涼しくなり始める時期を見極める必要がある。
また、秋は台風や大雨の影響を受けることもある。
春作と秋作では同じ品種を使う場合でも、気温や降雨に合わせた管理が求められる。
春じゃが・秋じゃがで使われる代表品種

じゃがいもは、どの品種でも春と秋の両方に同じように植えられるわけではない。
特に暖地の秋作では、夏の高温や収穫後の休眠期間などに対応できる品種が必要になる。
休眠期間とは、収穫したじゃがいもの芽がすぐには伸び始めない期間のことだ。
春に収穫したいもを秋作の種いもとして使う場合、この性質も品種選びに関係する。
| 品種 | 主な栽培地域・作型 | 特徴 |
|---|---|---|
| 男爵 | 北海道などの春植え栽培 | 粉質でホクホクした食感 |
| メークイン | 北海道などの春植え、長崎県の春作など | 粘質で煮崩れしにくい |
| ニシユタカ | 九州の春作・秋作 | 収量が多く、いもの肥大が早い |
| デジマ | 九州の春作・秋作 | 暖地の二期作に適し、食味も良好 |
| アイマサリ | 長崎県などの春作・秋作 | なめらかな食感で、病害虫への抵抗性も持つ |
北海道では男爵やメークイン、キタアカリなどがよく知られているが、
九州ではニシユタカやデジマなどの品種が重要な役割を持つ。
ニシユタカは長崎県で育成され、1978年に命名された品種で、暖地の春作・秋作に適している。
デジマも春作と秋作の両方で利用されており、秋作でも芽が出やすい性質を持つ。
比較的新しいアイマサリは、長崎県が育成した品種だ。
ニシユタカと比べてなめらかな食感を持ち、ジャガイモシストセンチュウなどの病害虫への抵抗性も備えている。
こうした品種の違いは、食感や料理への向き不向きだけではない。
植え付け時期に芽が出やすいか、気候に合うか、安定して収穫できるかといった農業上の条件も、
産地ごとの品種選びに関係している。
新じゃがは普通のじゃがいもと何が違う?
新じゃがは、収穫してから長期間貯蔵せず、比較的早く出荷されるじゃがいもの呼び方だ。
特に春の九州産がよく知られているが、新じゃがという呼び方そのものが春だけに限定されているわけではない。
早い段階で収穫された新じゃがは、皮が薄く、みずみずしい食感が特徴だ。
収穫後に時間がたち、皮がしっかり形成されたじゃがいもと比べると、軽くこするだけで薄皮がむけるものもある。
小粒の新じゃがは、丸ごと蒸したり、煮っころがしにしたりする料理にも向いている。
ただし、ホクホク感や煮崩れのしやすさは品種による違いも大きく、
新じゃがだから必ず甘い、あるいは煮崩れしにくいというわけではない。
新じゃがは長期保存に向かない
新じゃがは水分が多く、皮も薄いため、一般的に長期間の保存には向いていない。
購入後は暗くて涼しく、風通しのよい場所に置き、できるだけ早めに使い切るのがよい。
また、皮が薄い新じゃがは光に当たると緑色になりやすい点にも注意が必要だ。
緑色になった部分や芽には天然毒素のソラニンやチャコニンが多く含まれる場合があるため、
新じゃがであっても安全性の確認が必要になる。
まとめ|春じゃが・秋じゃがは栽培時期、新じゃがは出荷時期の違い
春じゃが・秋じゃがは主に栽培する季節に関係する呼び方で、
新じゃがは収穫後の貯蔵期間や出荷方法に関係する呼び方だ。
新じゃがという品種があるわけではなく、男爵やメークイン、ニシユタカなども新じゃがとして出荷されることがある。
日本では北海道が春植え・夏秋収穫を中心とする一方、
長崎県や鹿児島県では温暖な気候を利用して春作や秋作などが行われている。
同じじゃがいもでも、産地によって栽培できる季節や適した品種は大きく異なる。
春の新じゃがだけでなく、秋から冬にも新しく収穫されたじゃがいもが出回る背景には、
こうした地域ごとの気候と栽培方法の違いがある。
参考資料
- 農林水産省|aff 2017年11月号・じゃがいもの育て方と旬
- JA全農ながさき|温暖な気候を生かした長崎の新じゃが
- 鹿児島県|かごしまのばれいしょ
- 長崎県農林技術開発センター|アイマサリの特徴
- 日本いも類研究会|新じゃがの呼び方と特徴
- 農林水産省|ソラニンやチャコニンによる食中毒を防ぐには

