瀬戸内レモンはなぜ有名?広島県が生産量日本一になった理由を調べてみた

瀬戸内レモンが有名で広島県が国産レモン生産量日本一になった理由
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レモンと聞くと、私はずっと輸入品のイメージが強かった。
スーパーでも海外産をよく見かけるし、日本でどこが産地なのかまで考えたことはほとんどなかった。

ところが、すだち・かぼす・ゆず・レモン・ライムの違いを調べていると、国内にもかなり大きなレモン産地があることが分かった。
それが瀬戸内だ。

中でも広島県は国産レモンの生産量日本一で、令和5年産では全国9,668tのうち4,659tを生産している。
単純計算すると、国産レモンの約48%が広島県産になる。

さらに調べてみると、広島でレモン栽培が始まったきっかけも面白かった。
明治時代にネーブルの苗木を購入したところ、その中に偶然レモンの苗木が3本混ざっていたという。

そこから100年以上かけて、日本最大のレモン産地になった。

今回は、なぜ瀬戸内でレモン栽培が盛んなのか、そしてなぜ広島県が生産量日本一になったのかを調べてみた。

目次

瀬戸内レモンは広島県だけのレモンではない

まず整理しておきたいのが、瀬戸内レモンという言葉だ。

瀬戸内レモンと聞くと広島県産を思い浮かべやすい。
実際、広島県も県産レモンを瀬戸内 広島レモンとして発信している。

ただ、瀬戸内レモンそのものは広島県だけを指す言葉ではない。

現在、農林水産省にGI登録を申請している瀬戸内レモンの生産地は、広島、愛媛、香川、岡山、山口、兵庫、徳島の7県となっている。

つまり、瀬戸内海周辺に広がるレモン産地全体を大きく瀬戸内レモンとして捉えることができ、その中でも最大の産地が広島県という構造だ。

広島県だけで国産レモンの約48%

広島県の令和5年産レモンは、生産量4,659t、栽培面積321haだった。
全国では生産量9,668t、栽培面積798haなので、生産量では約48%、栽培面積では約40%を広島県が占める。

広島県全国広島県の割合
生産量4,659t9,668t約48%
栽培面積321ha798ha約40%

すだちの徳島98%や、かぼすの大分約99%ほど極端ではない。
それでも、レモンは愛媛県などほかの地域でもかなり作られている中で、一つの県だけで国内生産の約半分というのはかなり大きい。

では、広島を含む瀬戸内には何があるのだろう。

レモンは寒さにも雨にも弱い

レモンは暖かい地域の果物というイメージはあるものの、日本ならどこでも作りやすいわけではない。

まず寒さに弱い。さらに、レモンはかいよう病にも弱く、雨が多い環境では病気が広がりやすくなる。

農林水産省も、レモンは雨の多い環境ではかいよう病が発生しやすいため、日本では温暖で雨の少ない瀬戸内海地域などが主な栽培適地になってきたと説明している。

つまり、日本でレモン産地を作るには、暖かいだけでは足りない。雨が少なく、冬の寒さも厳しすぎない地域の方が向いている。

そこで瀬戸内の気候が効いてくる。

瀬戸内は温暖で雨が少ない

温暖・少雨・冬の寒さが比較的弱い瀬戸内の気候がレモン栽培に向く理由

広島県尾道市の瀬戸田町は、現在でも国内有数のレモン産地だ。

農林水産省の資料では、瀬戸田町の年平均気温は15.9℃、年間降水量は約1,100mmとされている。
温暖で雨が比較的少ない、瀬戸内らしい気候だ。

広島県も、瀬戸内沿岸は温暖で、雨や台風の影響が比較的少ないことをレモン栽培に向く理由として挙げている。

レモンは寒さに弱く、雨や強い風による傷から病気が広がりやすい。
そう考えると、瀬戸内がレモン産地になったのはかなり理にかなっている。

ただ、気候が合っているだけなら、それだけで国内シェア約48%にはならない。

広島には100年以上続く産地形成の歴史があった。

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広島のレモン栽培は3本の苗木から始まった

広島県でレモン栽培が始まったのは1898年、明治31年のことだ。
現在の呉市豊町大長にあたる地域で、和歌山県からネーブルの苗木を購入したところ、
その中にレモンの苗木が3本混ざっていた。

その3本を試しに植えたことが、広島県のレモン栽培の始まりとされている。

最初から瀬戸内をレモン産地にする計画があったわけではない。偶然入っていたレモンを育ててみたところ、その土地の気候に合った。

こうして始まった栽培は、明治末期から大正時代にかけて広がっていく。

1950年代にはすでに日本最大の産地だった

レモン価格の上昇もあり、大長地区を中心に栽培面積は拡大した。

1914年には栽培面積が11haまで増え、その後は現在の尾道市瀬戸田町などにも産地が広がっていく。
1953年には、全国のレモン栽培面積25haに対して広島県が18haを占めていた。
現在になって瀬戸内レモンが有名になったのではなく、少なくとも70年以上前にはすでに国内最大のレモン産地だったことになる。

ただし、そこから現在まで順調に拡大し続けたわけではない。

輸入自由化で国産レモンは大きく減った

大きな転機になったのが1964年のレモン輸入自由化だった。
海外から安いレモンが大量に入ってくるようになり、国産レモンは価格面で厳しい競争にさらされた。

さらに1976年と1981年には大寒波が発生する
。寒さに弱いレモンにとって被害は大きく、国内生産はさらに縮小した。

1977年には輸入レモンが10万tを超えている。

広島が日本一のレモン産地だから、そのまま何事もなく現在まで残ったわけではない。
一度は輸入品と寒波によって、国産レモンそのものがかなり厳しい状況になっていた。

国産レモン需要の高まりで再び産地が拡大

その後、国産農産物への需要が高まる中で、広島のレモン産地も再び拡大していった。

広島県では大規模なレモン団地の整備だけでなく、流通体制や貯蔵技術、包装技術の開発も進めている。
ハウス栽培や病害虫対策も含め、生産して終わりではなく、市場へ安定して届けるための仕組みを整えてきた。

現在の国内シェア約48%は、瀬戸内の気候だけで生まれた数字ではない。

気候に適した土地で100年以上栽培を続け、その途中で輸入品に押されながらも、生産・貯蔵・流通を改善して産地を立て直した結果だ。

瀬戸内広島レモンは一年中出荷されている

ハウス・グリーンレモン・イエローレモン・貯蔵を組み合わせた瀬戸内レモンの周年供給

レモンにも旬があるので、以前は一年中同じように収穫していると思っていなかった。

実際には、広島県では栽培方法と貯蔵を組み合わせることで、年間を通してレモンを供給している。

7月ごろにはハウスレモンが出始め、秋になると緑色のグリーンレモンが出荷される。
気温が下がると果皮が黄色くなり、冬から春にかけてはイエローレモンの時期になる。

さらに貯蔵技術を使うことで、生果の出荷が少なくなる時期にも市場へ供給できる。

すだちやかぼすでも同じだったが、大きな産地は旬に大量生産するだけではなく、一年を通して売るための仕組みまで作っている。

グリーンレモンは別の品種ではない

瀬戸内のレモンを見ていると、グリーンレモンという名前を見かけることがある。
私は最初、黄色いレモンとは違う品種なのかと思っていた。

基本的にはそうではない。

レモンは気温が下がることで果皮の緑色が抜け、黄色くなっていく。秋の早い時期に収穫されたものは緑色で、冬になるにつれて黄色いレモンへ変わる。

広島県では10〜11月ごろのレモンをグリーンレモンとして出荷している。

同じレモンでも時期によって色が変わり、若い時期ならではの爽やかな香りを楽しめる。輸入レモンを一年中同じ状態で見ていると気づきにくい、国産レモンの面白いところだと思う。

瀬戸内レモンはGI登録も申請されている

現在、瀬戸内レモンという名称について、農林水産省にGI登録申請が出されている。
対象地域は広島県だけではなく、愛媛、香川、岡山、山口、兵庫、徳島を含む瀬戸内7県だ。

2026年8月時点ではまだ申請中なので、GI登録された産品とは言えない。

ただ、県ごとのレモンではなく、瀬戸内という広い地域そのものを一つの産地ブランドとして扱おうとしているのは面白い。

レモンに適した気候が県境で突然変わるわけではない。瀬戸内海を囲む地域には共通する気候条件があり、それをまとめてブランドにしようとしていることになる。

すだち・かぼす・ゆずとは産地の成り立ちが違う

1898年の3本の苗木から始まり広島県が国産レモン最大産地になるまでの流れ

ここまで香酸柑橘を調べてきたので、並べてみると違いが分かりやすい。

柑橘主な産地産地形成の特徴
すだち徳島県徳島に古くから原生
かぼす大分県県の栽培奨励や一村一品運動
ゆず高知県山間地域での栽培と加工産業
レモン瀬戸内、特に広島県海外由来の果物を気候適地で産地化

すだちは地域にもともとあった果物だった。

一方、レモンは海外から入ってきた果物だ。それが瀬戸内の気候に合い、100年以上かけて国内最大の産地になった。

同じ香酸柑橘でも、産地ができるまでの過程はかなり違う。

すだち・かぼす・ゆず・レモン・ライムの違いは?味・大きさ・産地・使い方を比較

調べて思ったこと

今回調べる前は、瀬戸内でレモンが有名なのは暖かい地域だからだと思っていた。

もちろん温暖なことは大きい。ただ、レモンは雨にも弱く、かいよう病が発生しやすい。瀬戸内の雨が比較的少ない気候まで含めて、レモン栽培に向いていた。

そこに偶然3本の苗木が入ってきた。

栽培してみると気候に合い、明治末期から産地が広がった。1950年代にはすでに国内最大の産地になっていたが、その後は輸入自由化と寒波によって大きな打撃も受けた。

それでも国産レモンへの需要が戻る中で、生産だけでなく貯蔵や流通まで整え、現在では広島県だけで国産レモンの約48%を生産している。

100年以上前に偶然混ざっていた3本の苗木から始まったと考えると、かなり面白い。

そして、広島だけでなく瀬戸内一帯でレモン栽培が広がった土台には、温暖で雨が少ない瀬戸内特有の気候がある。

次は、その瀬戸内海式気候がなぜ温暖で雨が少ないのか、農業とどう関係しているのかをもう少し詳しく調べてみたい。

参考・確認した情報源

  • 広島県「レモン栽培の拡大」― 令和5年産の栽培面積、生産量、全国シェア
  • 広島県「瀬戸内 広島レモンとは」― 1898年の導入、苗木3本、産地形成、輸入自由化、寒波、周年出荷
  • 農林水産省「あふラボ」― レモンのかいよう病と雨、瀬戸内が栽培適地となる背景
  • 農林水産省「令和5年度天皇杯受賞者受賞理由概要」― 瀬戸田町の気温・降水量とレモン栽培
  • 農林水産省「第290号:瀬戸内レモン」― GI登録申請、生産地7県
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この記事を書いた人

Field Note Farmのアバター Field Note Farm 東京で暮らす会社員

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材の生産背景、新規就農について調べたことや考えたことを中心にまとめています。

将来的な新規就農を目指しながら、農業体験や自治体相談、地域研究を続けており、その過程も記録しています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

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