黒ぶどうの種類を比較|巨峰・ピオーネ・ナガノパープルは実はつながっている?

巨峰・ピオーネ・ナガノパープル・藤稔など黒ぶどうの種類と系譜を紹介するアイキャッチ画像
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ぶどう売り場を見ると、黒や紫色のぶどうだけでも巨峰、ピオーネ、ナガノパープル、藤稔などいくつもの名前が並んでいる。

見た目が似ているものも多いので、これまでは粒の大きさや産地が違うくらいに思っていた。

ところが品種の成り立ちまで調べてみると、黒ぶどうはそれぞれ独立して生まれたわけではない。ピオーネは巨峰を親に持ち、ナガノパープルも巨峰から生まれている。
さらにピオーネから藤稔が生まれ、その藤稔とピオーネを掛け合わせてブラックビートが作られていた。

今回は、日本で作られている代表的な黒ぶどうの種類を比較しながら、巨峰を中心に品種がどう枝分かれしてきたのかを調べた。

目次

黒ぶどうにはどんな種類がある?

黒ぶどうとは、熟したときに果皮が黒紫色や紫黒色になるぶどうを指す。

農林水産省も、ぶどうを黄緑色・赤色・黒色など果皮の色で紹介しており、
黒色系はコクのある味わいの品種が多いとしている。

代表的なものには巨峰やピオーネがある。

日本で見かける代表的な黒ぶどうを整理すると、次のようになる。

スクロールできます
品種主な特徴系譜
巨峰大粒で甘みとコクが強い石原早生×センテニアル
ピオーネ巨峰より大粒になりやすい巨峰×カノンホール・マスカット
ナガノパープル種なし・皮ごと食べられる巨峰×リザマート
藤稔特に粒が大きい井川682号×ピオーネ
ブラックビート大粒で比較的早く収穫できる藤稔×ピオーネ
ダークリッジ巨峰より着色しやすい巨峰×巨峰系統

こうして見ると、現在作られている黒ぶどうの多くに巨峰の血が入っている。

単に「黒いぶどう」というだけではなく、日本で巨峰を基礎に大粒化、種なし化、皮ごとの食べやすさ、着色などを改良してきた結果として、現在の品種が増えてきたことが分かる。

巨峰は日本の黒ぶどうの大きな起点になった

黒ぶどうの系譜を見るうえで外せないのが巨峰だ。

巨峰は「石原早生」と「センテニアル」を交配して育成され、
1942年に誕生した日本生まれのぶどう。
日本の気候でも栽培できる大粒ぶどうを目指して作られた。
農林水産省によると、正式な品種名は「石原センテニアル」で、巨峰は商標名として広まった名称になる。

巨峰が登場する以前から日本ではぶどうが作られていたが、巨峰は大粒で甘みが強く、その後の日本のぶどう品種に大きな影響を与えた。

前の記事で見たように、日本ではかつてデラウェアなど小粒のぶどうが大きな割合を占めていた。その後、巨峰の栽培面積が増え、日本のぶどうは大粒品種へと移っていった。

その巨峰は、単に一つの人気品種になっただけではない。

後に登場するピオーネやナガノパープルなどの親としても使われ、
日本の黒ぶどうの系譜を広げている。

ピオーネは巨峰から生まれた

巨峰の次に黒ぶどうの代表格となったのがピオーネだ。

ピオーネは1957年、静岡県の育種家が巨峰とカノンホール・マスカットを交配して育成した品種。岡山県ではその後、ジベレリン処理による大粒・種なし栽培技術を確立し、県を代表するぶどうへと生産を拡大した。

系譜は、
巨峰
×
カノンホール・マスカット

ピオーネ

となる。

見た目が巨峰によく似ているのも偶然ではない。

巨峰の特徴を引き継ぎながら、さらに大粒になりやすい品種として育成された。

現在流通しているピオーネでは種なし栽培が一般的で、
岡山県では長期間にわたって出荷できる栽培体系も作られている。
単に巨峰に似た別の黒ぶどうというより、巨峰を親に改良された次世代の品種として見ると分かりやすい。

ナガノパープルも巨峰の子どもだった

ナガノパープルも、巨峰を親に持つ黒ぶどうだ。

長野県果樹試験場が1990年に巨峰とリザマートを交配して育成し、2004年に品種登録された。
種がなく、黒ぶどうとしては珍しく皮ごと食べられることが大きな特徴になっている。

系譜は、
巨峰
×
リザマート

ナガノパープル

となる。

ちなみにナガノパープルは、品種登録時には「巨峰×ロザリオビアンコ」とされていた。

その後、長野県がDNA鑑定を行った結果、実際の花粉親はリザマートだったことが判明し、
現在は「巨峰×リザマート」が正しい来歴として公表されている。

品種の親まで後からDNAで確認されているのは少し面白い。

巨峰の濃い味わいを持ちながら、種なしで皮ごと食べられる。
現在のぶどうで求められている「食べやすさ」を黒ぶどうでも実現しようとした品種の一つと考えられる。

ピオーネからさらに藤稔が生まれた

黒ぶどうの系譜は巨峰からピオーネやナガノパープルで終わらない。

ピオーネを親にして、さらに新しい品種も作られている。

その一つが藤稔だ。

藤稔は神奈川県で育成され、「井川682号」とピオーネを交配して作られた。
1985年に品種登録され、果房・果粒ともに大きい黒色系の生食用ぶどうとして登録されている。

系譜をたどると、
巨峰

ピオーネ

藤稔

と、巨峰の特徴が何世代にもわたって引き継がれていることになる。

藤稔は特に粒の大きさで知られる品種だ。

現在では大粒ぶどう自体は珍しくなくなったが、巨峰からピオーネ、さらに藤稔へと品種改良が進むなかで、日本の黒ぶどうはより大粒の方向へ改良されてきたことが分かる。

ブラックビートは藤稔とピオーネから生まれた

さらに系譜を追うと、少し複雑になってくる。

ブラックビートは熊本県で育成された黒ぶどうで、藤稔とピオーネを交配して作られた。

農林水産省の品種登録データでは、果皮が紫黒色で極大粒、育成地では7月下旬に成熟するかなり早生の品種とされている。2004年に品種登録された。

系譜は、
藤稔
×
ピオーネ

ブラックビート

になる。

藤稔自身にもピオーネの血が入っているため、さらにさかのぼれば巨峰につながる。

つまりブラックビートは、単に巨峰と同じ黒ぶどうというだけではなく、
巨峰から何世代も品種改良を重ねた先にある品種になる。

スーパーで並んでいるとまったく別の商品に見えるが、
家系図のように並べるとかなり近い親戚だった。

黒ぶどうの系譜をまとめるとどうなる?

巨峰からピオーネ・ナガノパープル・藤稔・ブラックビートへつながる黒ぶどうの系譜図

代表的な黒ぶどうだけを簡単に並べると、次のようになる。
石原早生 × センテニアル

巨峰

そこから、

巨峰 × カノンホール・マスカット

ピオーネ

さらに、

井川682号 × ピオーネ

藤稔

藤稔 × ピオーネ

ブラックビート

という流れがある。

一方、巨峰からは別の方向にも枝分かれしている。

巨峰 × リザマート

ナガノパープル

さらに農研機構では、巨峰に「301-1(巨峰×ナイアベル)」を交配して、
黒色で巨峰より着色しやすい「ダークリッジ」も育成している。

こうして見ると、巨峰は単に昔からある人気ぶどうというより、日本の大粒ぶどう育種の重要な土台の一つだったことが分かる。

同じ黒ぶどうでも何を改良してきたのか

巨峰を起点に大粒化・種なし化・皮ごと・早生化・着色改善へ広がった黒ぶどうの品種改良

ここまで見ると、なぜ巨峰だけでなく何種類もの黒ぶどうを作る必要があったのかという疑問も出てくる。

品種改良では、単純に「もっと甘くする」だけを目指しているわけではない。

巨峰には大粒で味が良いという魅力がある一方、栽培面では着色や結実などに難しさもある。

そこから、

  • もっと粒を大きくする
  • 種なしで安定して作る
  • 皮ごと食べられるようにする
  • 早い時期に収穫できるようにする
  • 着色しやすくする
  • 肉質を変える

といった方向で品種改良が続いてきた。

例えばナガノパープルは、巨峰系の黒ぶどうでありながら皮ごと食べられる。
ブラックビートは7月下旬から成熟する早生性を持ち、ダークリッジは巨峰より着色しやすい特徴を持つ。

同じ黒ぶどうでも、それぞれ狙っている特徴が少しずつ違う。

巨峰・ピオーネ・ナガノパープルは何が違う?

巨峰・ピオーネ・ナガノパープルの粒の大きさや種なし、皮ごとの違いを比較した図

売り場で特に迷いやすいのが、巨峰、ピオーネ、ナガノパープルだと思う。

3つとも黒紫色で大粒なので見た目は似ているが、特徴を簡単に整理すると違いが分かりやすい。

スクロールできます
品種巨峰ピオーネナガノパープル
系譜石原早生×センテニアル巨峰×カノンホール・マスカット巨峰×リザマート
紫黒紫黒紫黒
大粒巨峰より大きくなりやすい大粒
種なし栽培方法による種なし栽培が主流種なし
皮ごと基本はむいて食べる基本はむいて食べる食べられる
主な特徴濃厚な甘みとコク大粒で甘みと酸味のバランス甘みが強く皮ごと食べやすい

ただし、この比較はそれぞれの品種を理解するための概要になる。

巨峰とピオーネの味や旬、産地を細かく比較すると、それだけで一つの記事になるため、ここでは黒ぶどう全体の違いが分かる範囲にとどめたい。

黒ぶどうは巨峰から何世代も広がっていた

黒ぶどうを調べる前は、巨峰、ピオーネ、ナガノパープル、藤稔は、それぞれ別々に作られたぶどうだと思っていた。

ところが系譜を追うと、かなりの品種が巨峰につながっていた。

巨峰からピオーネが生まれ、ピオーネから藤稔、さらに藤稔とピオーネからブラックビートが生まれている。
一方では、巨峰とリザマートからナガノパープルも生まれた。

品種改良というと新品種をゼロから作るイメージがあったが、実際には優れた品種を親に使い、その特徴を残しながら別の弱点を改善していくことが多い。

スーパーでは別々の名前で並んでいる黒ぶどうも、系譜を見ると同じ家系のようにつながっている。

次に黒ぶどうを見るときは、味や値段だけでなく「この品種はどこから生まれたのか」も少し気になりそうだ。

出典

  • 農林水産省「奥深いぶどうの世界」
  • 農林水産省「ぶどうの品種」
  • 農林水産省「品種登録データベース」
  • 長野県果樹試験場「ぶどうの品種育成」
  • 岡山県「ピオーネ」
  • 農研機構「ぶどう属の品種一覧」
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この記事を書いた人

Field Note Farmのアバター Field Note Farm 東京で暮らす会社員

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材の生産背景、新規就農について調べたことや考えたことを中心にまとめています。

将来的な新規就農を目指しながら、農業体験や自治体相談、地域研究を続けており、その過程も記録しています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

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