スーパーには何十種類ものブランド米が並んでいる。
コシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれ、ゆめぴりか、ななつぼし。
名前だけを見ると、日本ではかなり多くの品種がまんべんなく作られているように見える。
しかし全国の作付割合を調べてみると、実際はかなり偏っていた。
コシヒカリだけで全国の約3分の1を占め、さらに、ひとめぼれ・あきたこまち・ヒノヒカリなど主要品種の系譜をたどると、コシヒカリにつながるものが多い。
「たくさん種類があるように見えて、実はかなり集中しているのでは?」
そう思い、今回は日本で作られている米の品種構成と、品種による味や食感の違いを調べてみた。
結論
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作付割合1位 | コシヒカリ 32.6% |
| 上位5品種の割合 | 約58% |
| 上位10品種の割合 | 68.6% |
| 主要品種の特徴 | コシヒカリを親・祖先に持つ品種が多い |
| 食感に関わる数値 | アミロース含有率 |
| 食味に関わるもう一つの数値 | タンパク質含有率 |
スーパーでは多くの銘柄が並んでいるものの、実際の作付は一部の品種にかなり集中している。
さらに面白いのが、その上位品種同士がまったく無関係ではないことだ。
全国で作られている米は、意外と数品種に集中している

米穀安定供給確保支援機構が公表している「令和6年産水稲の品種別作付動向」によると、全国の作付割合は次のようになっている。
| 品種 | 全国作付割合(令和6年産) | 主な産地 |
|---|---|---|
| コシヒカリ | 32.6% | 新潟・茨城・栃木など |
| ひとめぼれ | 8.4% | 宮城・岩手・福島など |
| ヒノヒカリ | 7.1% | 熊本・大分・鹿児島など |
| あきたこまち | 6.7% | 秋田など |
| ななつぼし | 3.4% | 北海道 |
上位5品種だけで全体の約58%。上位10品種まで広げると68.6%に達する。
特にコシヒカリは32.6%で、1品種だけで全国の約3分の1を占めている。
これだけ多くのブランド米が販売されていることを考えると、かなり集中した構造だと分かる。
なぜコシヒカリが3割も占めるのか
理由を調べると、「おいしいから人気」というだけでは説明できなかった。
農家が品種を選ぶときには、
- 食味
- その地域の気候への適応
- 倒伏しにくさ
- 病害への強さ
- 収量
- 収穫時期
など、さまざまな条件を見る必要がある。
いくら味が良くても、毎年安定して収穫できなければ経営としては使いにくい。
上位品種には、食味だけでなく、地域の気候や栽培条件に合わせて改良されてきた歴史がある。
あきたこまちは「秋田で作れるコシヒカリタイプ」を目指して開発
例えば「あきたこまち」。
秋田県では、寒冷な気候の中でも栽培できる良食味米として開発され、1984年に正式に品種登録された。
コシヒカリの良食味性を受け継ぎながら、秋田の気候でも安定して栽培できることを目指した品種だ。
その後、秋田県を代表するブランド米として全国に広がった。
ひとめぼれは冷害をきっかけに急速に広がった
「ひとめぼれ」も、単に人気が出たから広がったわけではない。
1993年、日本では記録的な冷夏となり、東北地方を中心に米が大きな被害を受けた。
特に当時宮城県で広く作られていたササニシキは冷害の影響を強く受けた。
その後、耐冷性の強いひとめぼれへの切り替えが進み、東北を中心に急速に作付が広がった。
品種の普及には、こうした「その土地で安定して作れるか」という事情も大きく関係している。
実は、主要品種の多くがコシヒカリ一族

さらに品種の系譜を調べてみると、かなり面白い。
全国作付上位に入る、
- ひとめぼれ
- ヒノヒカリ
- あきたこまち
はいずれも、コシヒカリを片親に持つ品種だ。
さらに、
- あきたこまちを親に持つ「はえぬき」
- ひとめぼれを親に持つ「ななつぼし」
などもある。
つまり、コシヒカリそのものだけでなく、コシヒカリとその系譜につながる品種が日本の作付上位に多い。
スーパーではまったく違うブランドとして並んでいる米も、系譜をたどると近い親戚だったりする。
コシヒカリが日本の米の育種に与えた影響の大きさがよく分かる。
米の食味を大きく左右する「アミロース」
では、品種によって味や食感が違うのはなぜなのか。
その一つが「アミロース」だ。
米の主成分であるでんぷんは、主にアミロースとアミロペクチンからできている。
農研機構によると、一般的なうるち米のアミロース含有率は17〜23%程度。
基本的には、アミロース含有率が低いほど粘りが強くなり、高くなるほど粘りが弱く、粒感のある食感になりやすい。
| 品種 | アミロース含有率の目安 | 食感の特徴 |
|---|---|---|
| ミルキークイーン | 10%程度 | 粘りが非常に強く、冷めても柔らかい |
| ゆめぴりか | 16%程度 | もちもち感が強い |
| コシヒカリ | 18%程度 | 粘りと硬さのバランス型 |
ミルキークイーンがもちもちしているのも、アミロース含有率が低いことが理由の一つになる。
一方で、アミロース値だけで「おいしい・まずい」が決まるわけではない。
香りや水分量、炊飯条件なども食味に影響するため、あくまで食感を理解するための一つの指標だ。
もう一つの指標がタンパク質
米の食味を見るうえでもう一つ重要なのが、タンパク質含有率だ。
一般的に、タンパク質含有率が高くなると炊飯時に水を吸いにくくなり、ご飯が硬くなりやすい。
そのため、食味を重視する米ではタンパク質含有率を低く抑えることが品質管理の一つになっている。
アミロースは品種や気象条件の影響を受けやすい一方、タンパク質含有率は施肥など栽培管理によってある程度調整できる。
つまり、品種の特徴だけでなく、農家の栽培管理でも食味は変わるということになる。

ゆめぴりかはタンパク値まで出荷基準にしている
北海道のブランド米「ゆめぴりか」は、このタンパク質を品質基準に取り入れている代表例だ。
ホクレンが紹介する「北海道米の新たなブランド形成協議会」の基準では、ゆめぴりかのタンパク値は7.4%以下が出荷基準になっている。
さらに令和4年産米では、より厳しい品質目標として6.8%以下が設定され、その基準を達成した生産者の割合が過去最高になったことも紹介されている。
| ゆめぴりかの基準 | タンパク値 |
|---|---|
| 出荷基準 | 7.4%以下 |
| 令和4年産の品質目標 | 6.8%以下 |
「ゆめぴりか」という品種を植えれば同じ品質になるわけではなく、実際には栽培後の数値まで確認して品質を揃えている。
ブランド米の裏側には、こうした細かな品質管理もある。
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品種ごとの栄養価は比較できるのか
ここは少し誤解されやすい。
文部科学省の食品成分データベースでは、精白米の栄養成分は「うるち米」として掲載されている。
コシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれといった品種別に、
- カロリー
- ビタミン
- ミネラル
- 炭水化物
などを比較できるデータにはなっていない。
そのため、公的データだけを使って、「コシヒカリより○○の方がビタミンが多い」
といった品種比較をすることは難しい。
一方で、アミロースやタンパク質には品種や栽培条件による違いがあり、それが粘りや硬さなどの食味に関係している。
少なくとも、公的な食品成分データから品種ごとのビタミンやミネラル量を単純比較することはできない。
栄養価の比較と、食味の比較は分けて考えた方が分かりやすい。
品種を食べ比べてみたい人へ
数字を見ていると、実際にどれくらい違うのか食べ比べたくなる。
例えば、
- コシヒカリ:粘りと硬さのバランス
- ゆめぴりか:もちもち感が強い
- ミルキークイーン:強い粘りと柔らかさ
と、同じ白米でも方向性がかなり違う。
少量ずつ入った食べ比べセットなら、同じ条件で炊いて違いを確認しやすい。
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調べて思ったこと
スーパーにはたくさんのブランド米が並んでいるので、日本では多くの品種が同じくらい作られていると思っていた。
しかし実際の作付を見ると、コシヒカリだけで約3分の1。
さらに上位品種の系譜をたどると、コシヒカリとその子や孫にあたる品種が多く、日本の米づくりにコシヒカリが与えた影響の大きさも見えてきた。
一方で、同じ「白米」でも、アミロースやタンパク質の違いによって粘りや食感は変わる。
次にスーパーで米を選ぶときは、産地やブランド名だけでなく、
「どんな系譜の品種なのか」「どんな食感を狙って作られた品種なのか」
まで見てみると、米選びが少し面白くなりそうだ。
参考・確認した情報源
- 米穀安定供給確保支援機構「令和6年産水稲の品種別作付動向について」
- 秋田県「あきたこまち」関連資料
- 各品種の育成・登録資料
- 農研機構「米のアミロース含有率」関連資料
- ホクレン GREEN WEB「ゆめぴりか」品質基準関連資料
- 文部科学省「食品成分データベース」

