北海道への移住を検討して物件情報を見ていると、設備の欄にこんな表記が出てきた。
「浄化槽」
最初は何のことかよくわからなかった。下水道とどう違うのか。そもそも下水道がない物件があることも、このとき初めて意識した。
東京にいると水回りの仕組みをほとんど意識しない。蛇口をひねれば水が出て、流せば処理される。それが当たり前だと思っていた。
しかし地方の物件を調べ始めると、その前提が崩れた。
下水道の普及率は全国で約82%
令和6年度末における全国の下水道処理人口普及率は81.8%となっている(国土交通省・日本下水道協会)。
裏返すと、約2割の人口は下水道に接続できていない。都市部に住んでいると実感しにくいが、全国規模で見ると下水道は「ある地域とない地域」に分かれている。
都道府県別に見ると、最低の徳島県では19.3%、最高の東京都では99.6%と、地域による格差が大きい(公益社団法人日本下水道協会・国土交通省、2023年3月末時点)。
北海道は意外と高い。ただし「町村部」は別の話
北海道への移住を考え始めた頃、正直なところ「北海道は下水道があまり整備されていないのでは」と勝手に思っていた。
しかし実際に調べてみると、北海道全体の下水道処理人口普及率は92.0%で全国第7位となっている(北海道建設部まちづくり局都市環境課)。
ただしこれは人口ベースの数字だ。札幌などの都市部が引き上げている面が大きく、農村部・山間部では状況が異なる。実際に農村集落の物件を見ていると、浄化槽表記はかなり多い印象がある。
下水道がない場所ではどうしているのか
下水道がないからといって、排水を垂れ流しているわけではない。多くの地域では「合併処理浄化槽」を使っている。
合併処理浄化槽は、トイレだけでなく風呂・台所・洗面所など家庭内のすべての排水を微生物の力で処理し、河川等に放流する仕組みだ。
東京では意識する機会がほぼないが、地方では一般的な設備だ。
私自身、これまで「流せば終わり」と思っていたので、定期的な点検や清掃が必要な設備があること自体を知らなかった。
下水道・農業集落排水施設・合併処理浄化槽を合わせた汚水処理人口普及率は全国で93.7%に達している(国土交通省・環境省、令和6年度末)。
「下水道がない=処理されていない」ではなく、別の仕組みが代わりに機能していることになる。

浄化槽には維持費がかかる
浄化槽を使う場合、下水道使用料とは別に維持管理費が発生する。法律で義務付けられている作業が複数あるためだ。
| 作業 | 頻度 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 保守点検 | 年3〜4回 | 年間1〜3万円程度 |
| 清掃(汲み取り) | 年1回以上 | 1〜2万円/回 |
| 法定検査 | 年1回 | 数千円程度 |
| ブロア電気代 | 常時 | 年間1〜2万円程度 |
環境省の例示によると、一般家庭では年間約6万円〜7万5千円程度の維持管理費用が必要となる(南あわじ市・環境省資料より)。
下水道使用料と単純比較はできないが、移住先の生活費を試算するときに見落としやすいコストではある。
上水道の普及率は約98%

下水道を調べていて次に気になったのが、上水道の状況だ。
「下水道がない地域があるなら、水道も来ていない場所が多いのだろうか」
と勝手に思った。
令和4年度末時点で、日本の水道普及率は98.3%に達している(公益社団法人日本水道協会)。
下水道の約82%と比べると普及率はかなり高く、「地方だから水道が来ていない」というケースは少数派だ。
ただし残る約1.7%は未接続であり、農村部や山間部の一部では井戸水を利用しているケースもある。
理由は様々で、
- 昔から使い続けている
- 水道料金を抑えられる
- 農業用水として使いやすい
などがある。
物件情報に「井戸水」の表記がある場合は、水質検査の履歴や維持コストを事前に確認しておく方が安心だ。
農業を考えると「農業用水」も別に存在する
農業を調べ始めて初めて気づいたことがある。農業で使う水は、生活用水とは別の仕組みで管理されているケースが多い。
家を借りるだけなら上水道と下水道を確認すればいい。
しかし就農を考えると話が変わる。
農地によっては用水路から水を引いていたり、水利組合に加入していたりする。
用水路・ため池・農業専用の水利権など、地域によって仕組みはさまざまだ。
「水があるか」ではなく、「農業で使える水が確保されているか」を確認する必要があるらしい。
移住・就農で確認しておきたい水回りのポイント
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 下水道 or 浄化槽 | 物件情報に記載。浄化槽なら年間維持費を確認 |
| 上水道 or 井戸 | 井戸の場合は水質・維持費を確認 |
| 農業用水 | 用水路・水利権の有無。農地ごとに異なる |
まとめ
地方移住や就農を考えるまで、水回りのインフラはほとんど意識したことがなかった。
上水道は全国で約98%と普及率が高い一方、下水道は約82%にとどまり、地域差が大きい。
下水道が整備されていない地域では浄化槽が代わりに機能しているが、年間6〜7万円程度の維持費がかかる点は見落としやすい。
農地や作物ばかり見ていたが、実際に暮らすことを考えると、水道・下水道・浄化槽のような生活インフラも同じくらい重要だと感じた。
地方移住を考えなければ、おそらく一生気付かなかったことの一つかもしれない。
出典
- 公益社団法人日本下水道協会(令和6年度末)
- 北海道建設部まちづくり局都市環境課(令和5年度末)
- 国土交通省・環境省(令和6年度末)
- 環境省・南あわじ市(浄化槽維持費)
- 公益社団法人日本水道協会(令和4年度末)

