沖縄料理屋で紅芋フライを食べて気に入ったことがある。
家でも作れそうだと思いスーパーで探したが見当たらなかった。ネットで調べると、そもそも生の紅芋が本州にほとんど流通していないことがわかった。
さつまいも自体は全国どこでも売っているのに、なぜ沖縄の紅芋だけないのか。
気になって調べてみた。
紅芋とは何か
紅芋は、沖縄で栽培されている紫色のさつまいもの総称として使われることが多い。
鮮やかな紫色が特徴で、アントシアニン系の色素を含む。
沖縄県内では菓子・スイーツへの加工用として広く栽培されており、
- 紅芋タルト
- 紅芋チップス
- 紅芋ペースト
- 紅芋アイス
などの加工品は全国的にも知られている。
ただし「紅芋」は特定の一品種を指すわけではなく、沖縄で栽培される紫系さつまいもの総称として使われることも多い。

本州で見かけない理由は気候ではなかった
最初は気候の問題だと思っていた。
沖縄の温暖な気候でないと育たないのだろう、と。
しかし調べてみると、流通を制限しているのは気候ではなく、植物防疫法に基づく移動規制だった。
沖縄には「アリモドキゾウムシ」と「イモゾウムシ」という害虫が定着している。
どちらもさつまいもの塊根に産卵・食害し、一度広がると防除が難しい害虫だ。
本州・四国・九州のさつまいも産地にこれらが侵入すれば、被害は沖縄だけでは済まない。
そのため、農林水産省の植物防疫制度のもと、沖縄・奄美産のさつまいも(塊根・茎・苗を含む)は原則として本土への持ち出しが制限されている。
旅行者が空港で植物検疫の案内を目にするのも、この仕組みの一部だ。
加工品が流通できる理由
ではなぜ紅芋タルトや冷凍加工品は本土で売られているのだろうか。
加工の過程で、害虫が生存できない状態になるためだ。
加熱・乾燥・冷凍などの処理が行われた加工品は、害虫の拡散リスクがないと判断され、流通規制の対象外となる。
一方で、ペーストや冷凍加工品は販売されている。
生の紅芋がほとんど流通していない一方で加工品は全国で見かける。その違いにはこうした理由があった。
本州で紫いもは作れる
調べていてもう一点わかったことがある。
紫色のさつまいも自体は本州でも栽培されている。
「パープルスイートロード」や「アヤムラサキ」などがその例で、鹿児島や茨城などでも生産されている。
色素用や加工用として一定の需要もある。
ただし、これらは沖縄の紅芋とは別品種だ。
見た目は似ていても、品種・産地・生産背景は異なる。
「沖縄の紅芋」というブランドは、品種だけでなく産地とも強く結びついているようだ。
農産物の流通は作る以外の部分が多い
今回調べてわかったのは、農産物の流通には作ること以外の要素が想像以上に絡んでいるということだ。
検疫、病害虫防除、物流、制度。
こうした仕組みは普段あまり意識しないが、実際には商品が店頭に並ぶかどうかを左右している。
紅芋が本州で見かけない理由は、気候でも需要でもなく、制度と害虫だった。
少なくとも本州の一般的なスーパーで生の紅芋を見かけない理由は、この検疫制度にあるようだ。
まとめ
沖縄の紅芋が本州であまり売られていない理由を調べてみると、背景には植物検疫と害虫対策があった。
最初は「沖縄でしか育たないから」だと思っていたが、実際には流通そのものに制限がかかっていた。
農産物を調べていると、作り方だけでなく、流通や制度まで含めて見ないと分からないことが多い。
紅芋もその一例だった。
