とうもろこし畑を見ると、背の高い株が一面に並んでいる。
私はなんとなく、1株から大きなとうもろこしが何本も収穫できるものだと思っていた。
ところが栽培方法を調べてみると、スイートコーンは1株に複数の雌穂が出ても、商品になる大きなとうもろこしを作るために、一番上の1本を残して育てる方法がよく使われている。
さらに面白かったのが、とうもろこしは収穫したら終わりではないことだ。
収穫後も呼吸を続けるため、時間や温度によって糖分や食味が変化する。
そのため産地では、早朝の涼しい時間に収穫し、できるだけ早く冷やすところまで品質管理に含まれている。
今回は、とうもろこしは本当に1株から1本しか収穫しないのか、日本ではどれくらい作られているのか、朝採れや寒暖差と甘さにはどんな関係があるのかを調べてみた。
とうもろこしは1株に2〜3本の雌穂が出る
まず、とうもろこしは1株に1本しか実ができない植物ではない。
高知県の栽培資料では、通常1本の主茎から2〜3本の雌穂が発生するとされている。
そのうえで、一番上の雌穂を残し、それ以外を取り除く栽培方法が紹介されている。
つまり、1株に複数のとうもろこしができる可能性はある。
ただ、スーパーに並ぶような大きく粒のそろったスイートコーンを作る場合は、その中から一番上の雌穂を残して育てることが多い。
正確には、1株から1本しかできないのではなく、複数できる中から商品にする1本を選んで育てているということになる。
なぜ1本だけ残すのか
一番の理由は、大きく実入りのよいとうもろこしを作るためだ。
複数の雌穂をそのまま育てるより、一番上の雌穂を残した方が、商品として求められるサイズや粒の入り方をそろえやすい。
北海道のJAめむろでも、生食用スイートコーンは一番果のみを出荷している。
畑を見ると1株から何本も収穫できそうに見えるが、生食用では1株から商品になる1本を狙って作っている産地も多い。
ただし、すべてのとうもろこしが必ず1株1本というわけではない。
品種や栽培方法によっては、2本目まで通常サイズで収穫する場合もある。
そのため、とうもろこしは1株1本しか収穫できないと考えるより、
生食用の大きなスイートコーンでは、一番上の1穂を残す栽培がよく行われていると理解する方が正確だ。
取り除いた若い雌穂がヤングコーンになる

では、残さなかった2本目や3本目はどうなるのか。
ここでヤングコーンにつながる。
ヤングコーンは、専用の別品種というわけではない。
普通のスイートコーンなどを、まだ実が小さい段階で収穫したものだ。
一番上の雌穂を大きく育てるために下の雌穂を取り除くとき、その若い実を食用として利用すればヤングコーンになる。
私はヤングコーンという別のとうもろこしがあると思っていたので、普通のとうもろこしと同じ株から取れることの方が意外だった。
日本では年間約21万tのスイートコーンが収穫されている
農林水産省の令和5年産野菜生産出荷統計によると、全国のスイートコーン収穫量は21万2,400tだった。
作付面積は2万900ha、出荷量は17万5,100tとなっている。
| 項目 | 令和5年産 |
|---|---|
| 作付面積 | 20,900ha |
| 収穫量 | 212,400t |
| 出荷量 | 175,100t |
スイートコーンには、そのまま食べる生食用だけでなく、缶詰や冷凍、コーンスープなどに使われる加工用もある。
なお、家畜の飼料として栽培されるとうもろこしは別の統計になるため、ここでいう数字は食用のスイートコーンだ。
最大産地は北海道
スイートコーンの最大産地は北海道だ。
農研機構によると、国内収穫量のおよそ4割が北海道で生産されている。
とうもろこしと聞いて北海道を思い浮かべる人は多いと思うが、実際に数字でも国内最大の産地になっている。
北海道では広い農地を確保しやすいことに加え、夏の日照時間が長く、夜は比較的涼しい地域も多い。
こうした気候条件に加えて、大規模な生産や収穫後の鮮度管理まで整っていることが、大産地につながっている。
とうもろこしの旬は地域によって違う
とうもろこしは夏の野菜という印象が強い。
北海道の露地栽培では5月上旬ごろに種をまき、
8月中下旬ごろに収穫適期を迎えるのが一般的だと農研機構は説明している。
一方、山梨県など比較的暖かい地域では、5月ごろから出荷が始まる。
平地から高冷地、さらに北海道へと産地が移っていくため、
とうもろこしは初夏から秋ごろまで比較的長く店頭に並ぶ。
スイカや新米と同じように、とうもろこしにも産地リレーがあると考えると分かりやすい。
とうもろこしは収穫後も呼吸している
とうもろこしについてよく聞くのが、収穫するとすぐ甘さが落ちるという話だ。
これは方向としては合っている。
スイートコーンは収穫した後も呼吸を続けていて、その過程で蓄えた糖分を消費する。
だから、収穫した瞬間に急激に糖度が落ちるというより、
収穫後も代謝が続き、時間がたつほど品質が変化していくと考える方が正確だ。
特に影響が大きいのが温度で、気温が高いほど呼吸や品質変化が進みやすい。
そのため産地では、収穫する時間だけでなく、その後どれだけ早く冷やせるかまで重視している。
なぜ早朝に収穫するのか

直売所や通販では、朝採れとうもろこしという言葉をよく見かける。
これにはきちんと理由がある。
北海道では、生食用スイートコーンについて、
糖度や品質の低下を防ぐため、早朝など外気温の低い時間帯に収穫するよう指導している。
さらに、収穫後は速やかに品温を5℃まで下げる。
高知県でも、とうもろこしは早朝の涼しい時間帯に収穫し、できるだけ涼しい場所で扱うよう案内されている。
朝に収穫すれば必ず甘くなるというより、
涼しい時間に収穫することで、収穫直後から品質を保ちやすいという意味合いが大きい。
とうもろこしには収穫適期もあるため、朝採れという言葉だけで品質が決まるわけではない。
適期まで育ったものを涼しい時間に収穫し、その後も低温で管理することが重要になる。
寒暖差があると甘くなると言われる理由

北海道や山梨のとうもろこしでは、昼夜の寒暖差も甘さの理由としてよく紹介されている。
植物は昼間に光合成を行い、糖などの炭水化物を作る。
一方、夜間も呼吸を続けるため、蓄えた成分の一部を消費する。
夜の気温が低いと呼吸による消費が抑えられやすく、日中に作った養分を蓄えやすくなる。
農畜産業振興機構も、北海道芽室町のスイートコーンについて、夏の長い日照時間で作られた養分が、夜間に気温が下がることで蓄えられ、甘みにつながると紹介している。
ただし、寒暖差が大きければ必ず甘くなるわけではない。
品種や日照、収穫時期、水分管理なども関係するため、寒暖差は甘さを作る条件の一つとして見る方がいい。
買った後もできるだけ早く食べた方がいい
産地が収穫後すぐに冷やしていることを考えると、買った後の扱いも重要になる。
とうもろこしは、メロンのように常温で追熟させる食材ではない。
収穫後も呼吸によって糖分が消費されるため、できるだけ早く食べた方がいい。
すぐに食べない場合も、常温で長時間置くより冷蔵した方が品質変化を抑えやすい。
採れたてのとうもろこしがおいしいと言われるのは、単なるイメージではなく、収穫後の性質にも理由があった。
調べて思ったこと
とうもろこしについて調べる前は、1株から何本も大きな実が収穫できるものだと思っていた。
実際には1株に2〜3本の雌穂が出ても、生食用では一番上の1本を残して育てる方法がよく使われている。
さらに意外だったのが、収穫した後の扱いだった。
とうもろこしは収穫後も呼吸を続けるため、
早朝の涼しい時間に収穫し、その後すぐに冷やすところまで品質管理に含まれている。
甘さにも、品種だけでなく日照や寒暖差、収穫適期、収穫後の温度管理が関係する。
スーパーでは1本だけを見て買っているが、その1本の裏には、
どの雌穂を残すかという栽培管理から、収穫する時間、その後の冷却まで多くの工夫があった。
そして、一番上の1本を残したときに取り除かれる若い雌穂がヤングコーンになる。
次は、ヤングコーンが普通のとうもろこしとどうつながっているのかを詳しく調べてみたい。
出典
・農林水産省「令和5年産野菜生産出荷統計」
・農研機構「空撮画像のAI解析技術を活用してスイートコーン収穫適期を予測」
・北海道「令和7年8月の営農技術対策」
・高知県「スイートコーン 播種後の管理」
・農畜産業振興機構「北海道 JAめむろ~生産量日本一!寒暖差が作り出す、甘みの強いスイートコーン~」
・農畜産業振興機構「山梨県のスイートコーン」

