スーパーで売られているとうもろこしを、普段わざわざスイートコーンと呼ぶことはあまりない。
私もこれまで、とうもろこしとスイートコーンはほぼ同じ意味だと思っていた。
ところが調べてみると、スイートコーンはとうもろこし全体の中の一種類だった。
家畜の飼料になるとうもろこし、ポップコーンになるとうもろこし、私たちが茹でたり焼いたりして食べる甘いとうもろこしは、それぞれ性質が違う。
さらにスイートコーンの中でも、黄色だけではなく、真っ白なものや黄色と白が混ざったものがある。
今回は、スイートコーンとはどんなとうもろこしなのか、普通のとうもろこしとの違い、
種類や代表品種、日本でどれくらい作られているのかまで調べてみた。
スイートコーンはとうもろこしの一種

スイートコーンととうもろこしは、別々の植物というわけではない。
とうもろこしという大きな分類の中に、スイートコーンが含まれている。
農林水産省では、私たちが茹でたり焼いたりして食べるとうもろこしをスイートコーン、主に家畜の飼料として利用されるものをデントコーン、加熱すると弾けるものをポップコーンと紹介している。
スイートコーンは日本語では甘味種、デントコーンは馬歯種、ポップコーンは爆裂種と呼ばれる。
とうもろこしには用途の違う種類がかなり多い。
その中でも、未熟なうちから糖分が多く、甘い実を食べるために作られているのがスイートコーンだ。
日本ではスイートコーンを野菜として扱っている
とうもろこしは、米や小麦と並ぶ世界的な穀物として知られている。
それなのに、日本の農産物統計を見るとスイートコーンは野菜に入っている。
農畜産業振興機構によると、糖度が高い未熟な子実を食べるスイートコーンは、日本では野菜として分類されている。成熟させた穀粒を利用するとうもろこしとは、食べる段階が違う。
考えてみれば、スーパーに並んでいるスイートコーンは種子が完全に乾燥するまで育てていない。
粒が柔らかく、果汁があり、甘い時期に収穫して食べている。
世界的には代表的な穀物なのに、日本で普段食べるスイートコーンだけを見ると野菜として扱われるのは少し面白い。
日本でスイートコーンが広がったのは明治時代以降
日本に最初に入ってきたとうもろこしは、現在スーパーで食べているスイートコーンとは違う。
農畜産業振興機構によると、日本には16世紀末にポルトガル人によって硬粒種のフリントコーンが伝えられた。
本格的にスイートコーンが栽培されるようになったのは、アメリカから品種が導入された明治時代以降とされている。
現在のような甘いとうもろこしが昔から日本で食べられていたわけではない。
さらに昭和40年代以降には、甘みの強いスーパースイート系のハニーバンタムが全国へ広がり、
その後さらに甘く皮の柔らかい品種が次々に作られてきた。
今スーパーで食べているとうもろこしの甘さは、品種改良によってかなり変わってきたものでもある。
スイートコーンは大きく3タイプに分けられる

スイートコーンは、粒の色で見ると大きく3タイプに分けられる。
| タイプ | 粒の色 | 代表的な品種 |
|---|---|---|
| イエロー系 | 黄色 | ゴールドラッシュ、味来など |
| ホワイト系 | 白色 | ピュアホワイトなど |
| バイカラー系 | 黄+白 | ピーターコーン、ゆめのコーンなど |
農畜産業振興機構では、黄色いイエロー系、白いシルバー系、
黄色と白が混ざったバイカラー系の3つに大別している。
見た目が違うだけではなく、粒皮の柔らかさや甘さ、食感、栽培特性にも品種ごとの差がある。
メロンを調べたときもそうだったが、同じ野菜の中でも品種改良によってかなり違う商品が作られている。
黄色いイエロー系|ゴールドラッシュや味来
現在よく見かけるのが、粒がすべて黄色いイエロー系だ。
代表的な品種の一つがゴールドラッシュ。
育成元のサカタのタネでは、粒皮が柔らかく、爽やかな甘みがあり、先端まで実が入りやすい高食味品種として紹介している。
もう一つ有名なのが味来だ。
農畜産業振興機構では、昭和40年代から普及したハニーバンタムをさらに改良し、
甘みを強くした品種の一つとして味来を紹介している。
黄色いとうもろこし自体は昔からあるが、現在店頭に並ぶものは、より甘く、
粒皮が柔らかくなるよう改良された品種が多い。
真っ白なホワイト系|ピュアホワイト
スイートコーンには、粒が黄色ではなく真っ白な品種もある。
代表的なのがピュアホワイトだ。
農畜産業振興機構では、白粒系は甘みが強く粒皮が柔らかいことが特徴で、
ピュアホワイトは生でも食べられる品種として紹介されている。
黄色いとうもろこしに慣れていると、最初に見るとかなり違和感がある。
ただ、白いから未熟というわけではない。
熟しても白い品種として作られている。
北海道でもホワイト系のスイートコーンが栽培されており、黄色だけだったとうもろこし売り場に、
品種による色の違いがかなり増えている。
黄色と白が混ざるバイカラー系
もう一つがバイカラー系だ。
一本のとうもろこしの中に、黄色い粒と白い粒が混ざっている。
農畜産業振興機構によると、黄色粒種と白粒種を掛け合わせたもので、粒は黄色と白がおおむね3対1で現れる。
黄色と白がランダムに混ざっているように見えるが、品種の特性によって生まれたものだ。
ピーターコーンやゆめのコーンなどが代表例で、現在も種苗会社から複数のバイカラー品種が販売されている。
見た目のためだけに色を混ぜているわけではなく、甘さや粒皮の柔らかさ、栽培のしやすさなどを考えながら品種改良されている。
なぜ昔より甘いとうもろこしが増えたのか

昔のとうもろこしより最近のものの方が甘いと感じる人もいると思う。
背景の一つが品種改良だ。
スイートコーンはもともと、成熟する過程で糖がでんぷんへ変化する性質を持っている。
そこから糖を多く蓄積しやすい系統が選ばれ、より甘いスーパースイート系の品種が広がってきた。
農畜産業振興機構によると、日本では昭和40年代から甘みの強いハニーバンタムが広がり、
その後、味来やゴールドラッシュなど、さらに食味を重視した品種へ移ってきた。
農研機構の品種比較でも、スイートコーンでは糖度、収穫時期、収量、
先端まで粒が入るかといった複数の特性を比較して品種が選ばれている。
単純に糖度だけを高くすればいいわけではない。
農家側からすると、発芽しやすいか、実が大きくなるか、病気や倒伏に強いか、収量が安定するかも重要になる。
私たちが食べる甘さと、生産者が作りやすいかどうかの両方を考えて品種改良が続いている。
令和6年産は全国で約21万t
農林水産省が2026年3月に公表した令和6年産野菜生産出荷統計によると、全国のスイートコーン収穫量は21万1,900tだった。
作付面積は2万900ha、出荷量は17万5,100t。前年とほぼ同じ水準になっている。
| 項目 | 令和6年産 |
|---|---|
| 作付面積 | 20,900ha |
| 収穫量 | 211,900t |
| 出荷量 | 175,100t |
直近5年間を見ると、収穫量は令和2年産の23万5,000tから令和4年産には20万9,000tまで減り、その後は21万t前後で推移している。
最大産地は北海道で、ほかにも千葉、茨城、群馬、山梨など各地で生産されている。農林水産省も北海道、千葉県、茨城県などを主要産地として紹介している。
スイートコーンの旬は初夏から夏
スイートコーンは全国で同時に収穫されるわけではない。
比較的暖かい地域から出荷が始まり、夏になるにつれて高冷地や北海道へ産地が移っていく。
北海道では露地栽培の収穫が8月を中心に本格化する一方、関東などでは5〜6月から出荷される地域もある。
そのため、スイートコーン全体で見ると初夏から夏が旬の中心になる。
同じ品種でも地域や作型によって出荷時期は変わるため、品種名だけで旬を決めるより、産地と合わせて見る方が分かりやすい。
甘いスイートコーンほど鮮度も重要
スイートコーンの記事で外せないのが鮮度だ。
甘い品種でも、収穫後の扱いによって食味は変わる。
サカタのタネもゴールドラッシュについて、収穫が遅れると食味や日持ちが低下するため、品温が上がる前の朝採りや予冷、保冷が品質維持に有効としている。
前回調べたように、スイートコーンは収穫後も呼吸を続け、蓄えていた糖を消費する。
だから品種改良でどれだけ甘いとうもろこしを作っても、収穫時期やその後の温度管理まで含めて初めて食味を保てる。

スイートコーンとヤングコーンは別物ではない
さらに、スイートコーンはヤングコーンともつながっている。
ヤングコーンは別の植物ではなく、とうもろこしの雌穂を若いうちに収穫したものだ。
スイートコーンでは1株に複数の雌穂が出るが、大きな1本を作るため下の雌穂を若いうちに取り除くことがある。
その若い実を食用にしたものがヤングコーンとして流通する。
スイートコーンを種類として理解すると、前の記事で調べた1株1本の栽培と、
次に調べたいヤングコーンまで一つにつながってくる。
調べて思ったこと
スイートコーンについて調べる前は、スーパーで売っているとうもろこしの少し正式な呼び方くらいに思っていた。
実際には、とうもろこしという大きなグループの中にある甘味種の一つだった。
家畜の飼料になるデントコーンや、ポップコーンになる爆裂種とは用途も性質も違う。
さらにスイートコーンの中にも、黄色、白、黄色と白が混ざったバイカラーがあり、
その中にゴールドラッシュやピュアホワイトなど多くの品種がある。
特に面白かったのは、今のとうもろこしの甘さが当たり前ではないことだった。
ハニーバンタムが広がり、そこから味来やゴールドラッシュなど、より甘く粒皮の柔らかい品種が作られてきた。
その一方で、生産者にとっては収量や実入り、栽培しやすさも重要になる。
普段は一本のとうもろこしとしてしか見ていないが、その裏ではかなり長い品種改良が続いている。
そして、どれだけ甘い品種でも、収穫時期や鮮度管理まで味に関わる。
スイートコーンという名前だけでも、とうもろこしの品種、生産、流通まで思っていた以上に広い話につながっていた。
出典
農林水産省「令和6年産野菜生産出荷統計」
農林水産省 北海道農政事務所「農林水産クイズ」
農林水産省「夏の食材で『涼』を感じよう」
農畜産業振興機構「スイートコーンの需給動向」
農畜産業振興機構「四季の野菜と健康 スイートコーン」
農研機構「スイートコーンの早熟及び多収品種の選定」
サカタのタネ「スイートコーン ゴールドラッシュ」

