メロン売り場を見ていると、想像以上にいろいろな名前が並んでいる。
アンデスメロン、クインシーメロン、アールスメロン、イバラキング、夕張メロン。
なんとなく高級そう、赤い方が甘そう、といったイメージはあるものの、何がどう違うのかはあまり分かっていなかった。
さらに調べてみると、少しややこしいことも分かった。
メロンは、果肉の色だけで分類するものではない。表面に網目があるかどうかでも分かれ、
さらに私たちが普段見ている名前には「品種名」「系統名」「地域ブランド名」が混ざっている。
例えば夕張メロンは、そのまま品種名というわけではない。使われている品種は「夕張キング」で、
北海道夕張市で基準を満たして生産されたものが夕張メロンとして流通している。
今回は、まずメロンの種類をどう整理すればいいのかを確認しながら、
赤肉・青肉・白肉、ネット系・ノーネット系の違いと、代表的な品種を調べてみた。
メロンは「網目」と「果肉の色」で分けると分かりやすい

メロンの種類は、大きく二つの軸で見ると整理しやすい。
一つが、果皮に網目があるかどうか。もう一つが、果肉の色だ。
大阪市中央卸売市場でも、外見では網目のあるネット系と網目のないノーネット系、果肉では青肉、赤肉、白肉に分類している。
つまり、赤肉だからネット系、青肉だから高級品、と単純に決まるわけではない。
ネット系の赤肉もあれば青肉もあり、ノーネット系にも白肉や赤肉がある。
代表的なものを整理すると、こんな感じになる。
| 分類 | 代表例 |
|---|---|
| ネット系・青肉 | アールスメロン、アンデスメロン、イバラキング、タカミ |
| ネット系・赤肉 | 夕張メロン、クインシーメロン、ルピアレッド |
| ノーネット系 | プリンスメロン、ホームランメロン、ハネデューメロンなど |
農畜産業振興機構の資料でも、アンデスやタカミはネット型の緑肉系、クインシーやルピアレッドはネット型の赤肉系として整理されている。
メロンの網目は、最初から模様が付いているわけではない
そもそも、あの網目は何なのだろう。
大阪市中央卸売市場によると、ネット系メロンの網目は、果実が大きくなる途中で果皮の成長が追いつかず表面にひびが入り、そのひびがコルク質で覆われることでできる。
つまり、表面に模様が描かれているわけではない。
成長する果実と果皮の間にできた傷を植物自身が修復した跡が、あのネット模様になる。
こう考えると、メロンの網目が栽培管理の影響を受ける理由も分かりやすい。
実際、茨城県農業総合センターはイバラキングについて、ネット形成時期の温度や水分管理によって太く粗いネットが発生することがあると説明している。
見た目の網目も、品種だけで決まっているわけではなく、生育環境や栽培技術の影響を受けている。

青肉メロン|爽やかな甘さの品種が多い
青肉メロンは、果肉が薄い緑色から黄緑色のメロンだ。
代表的なのが、アールスメロン、アンデスメロン、イバラキング、タカミなど。
競合記事では、青肉は爽やかな甘さ、赤肉は濃厚な甘さと説明されることが多い。
実際、茨城県もイバラキングについて「上品な甘さ」「爽やかな香り」「なめらかな食感」を特徴として紹介している。
ただし、青肉だから必ずあっさりしているわけではない。
品種、熟度、栽培方法によって味はかなり変わる。
果肉の色だけで甘さを決めるより、まず好みの香りや食感を探す目安として見る方がよさそうだ。
アールスメロン|高級メロンの代表格
青肉メロンの中でも特に有名なのが、アールス系のメロンだ。
農林水産省によると、日本でマスクメロンとして栽培されているアールス・フェボリット系は、1925年にイギリスから導入された系統を長年改良してきたもの。
ガラス温室などで細かく温度や水分を管理し、一般的に1株から1果だけ収穫する栽培が行われてきた。
ここで少しややこしいのが「マスクメロン」という名前だ。
マスクは仮面のmaskではなく、麝香を意味するmuskに由来する。
強い芳香を持つことから、この名前が付いた。
高級メロンというイメージがあるのも、単純に品種が高級だからではなく、温室設備や細かな栽培管理、一株一果といった生産方法にも理由がある。
アンデスメロン|名前は外国っぽいが日本生まれ
アンデスメロンも青肉のネット系として有名だ。
名前だけを見ると、南米のアンデス地方から来たメロンのように感じる。
しかし、日本で開発された品種だ。
高級なアールス系に近い食味を持ちながら、比較的栽培しやすく、価格も手頃な家庭向けネットメロンとして広がった。
スーパーで日常的に見かける青肉ネットメロンとしては、かなり代表的な存在だ。
イバラキング|茨城県が10年以上かけて作った青肉メロン
最近の地域オリジナル品種で面白いのが、茨城県のイバラキングだ。
茨城県農業総合センターによると、イバラキングは10年以上の歳月をかけ、400通り以上の掛け合わせを経て育成された。2010年に品種登録されている。
開発の背景にあったのは、単に新しいブランドメロンを作りたいという話だけではない。
茨城では4月下旬から6月ごろに出荷するメロンが多いが、春先は低温や天候不順の影響を受けやすく、果実が大きくならなかったり糖度が不足したりすることが課題だった。
そこで低温期でも果実が大きくなり、食味や糖度が安定する品種として開発されたのがイバラキングだ。
品種改良を見ると、味だけではなく、どの地域でいつ作るのかまで考えて品種が作られていることが分かる。
赤肉メロン|オレンジ色の果肉が特徴
赤肉メロンは、果肉がオレンジ色のメロンだ。
代表的なのは夕張メロン、クインシーメロン、ルピアレッドなど。
茨城県もクインシーメロンについて、甘みが強く果汁が多い赤肉メロンの定番として紹介している。
オレンジ色になるのは、βカロテンなどの色素を含むため。
見た目にも青肉との違いが分かりやすいので、メロンを選ぶときにまず赤肉か青肉かで好みが分かれる人も多いと思う。
夕張メロンは品種名ではなく、使われる品種は「夕張キング」
赤肉メロンの代表として有名なのが夕張メロンだ。
ただし、夕張メロンという名前をそのまま品種名だと思うと少し違う。
農林水産省のGI登録情報では、夕張メロンに使用される品種は夕張キングと明記されている。
夕張キングは、スパイシー・カンタロープとアールス・フェボリットを交配して生まれた一代雑種で、1961年に命名された。
さらに、夕張市で生産すれば何でも夕張メロンになるわけではない。
夕張市農協では品質検査を行い、特秀・秀・優・良という4つの等級に分けて出荷している。
つまり、
夕張キング=品種
夕張メロン=地域と生産基準が結びついたブランド
と整理すると分かりやすい。
この違いは、次に夕張メロンの記事で詳しく掘りたい。
白肉メロン|ネットがない品種も多い
青肉や赤肉ほど目立たないが、白肉系のメロンもある。
代表的なのがホームランメロンやハネデューメロンなど。
白肉系にはノーネットタイプも多く、表面がつるっとした見た目をしている。
ネット系の高級メロンとはかなり印象が違うが、これも同じメロンの仲間だ。
特にハネデューメロンはアメリカやメキシコなどから輸入されるものも多く、日本のスーパーでも比較的手頃な価格で見かける。
メロン=網目のある丸い果物と思っていると、このあたりはかなりイメージが変わる。
ノーネット系|昔ながらの手頃なメロンもある
ノーネット系は、その名の通り表面に網目ができないメロンだ。
代表的なのがプリンスメロン。
プリンスメロンは、日本で長く親しまれてきたノーネットメロンで、ネット系に比べて栽培しやすく、手頃な価格で流通してきた。
昔は今ほどネット系メロンが身近ではなかったため、家庭用メロンとして大きな存在だった。
ネットの有無を見ると、現在の高級メロンだけでなく、日本のメロンの品種改良や消費の変化まで見えてくる。
「品種」「ブランド」「系統」は同じではない

メロンを調べていて、一番ややこしかったのがここだった。
売り場にはいろいろな名前が並んでいるが、全部が同じ意味の「品種名」ではない。
ざっくり整理すると、
| 名前 | 位置づけ |
|---|---|
| イバラキング | 品種名 |
| 夕張キング | 品種名 |
| 夕張メロン | 地域ブランド・GI登録名称 |
| アールス | 系統として使われることが多い |
| マスクメロン | 香りの強い高級ネットメロンを指す呼び方として使われる |
特に夕張メロンのような地域ブランドと、夕張キングのような品種名を分けて考えると、かなり分かりやすくなる。
これまで果物の記事を書いてきて、品種と産地ブランドを同じものとして考えていたケースが意外と多かった。
メロンは、その違いが特に見えやすい果物だと思う。
メロンは品種によって旬がかなり違う
メロンは「初夏の果物」というイメージが強いが、実際には品種によって出荷時期がかなり違う。
茨城県では複数の品種を組み合わせることで、4月から10月ごろまで長期間メロンを出荷している。
| 種類・品種 | 主な時期 |
|---|---|
| オトメ | 4月中旬〜5月中旬 |
| イバラキング | 5月〜6月 |
| アンデス | 5月〜6月 |
| クインシー | 5月〜7月上旬 |
| レノン | 5月〜6月 |
| タカミ | 6月〜7月上旬 |
| 夕張メロン | 6月〜8月 |
| アールス系 | 7月中旬〜10月 |
特に茨城県では、春一番のオトメから始まり、イバラキングやアンデス、クインシー、タカミへ移り、夏から秋にはアールス系が出てくる。
単に「メロンの旬は6月」と決まっているわけではなく、品種を変えながら旬がリレーしていると考える方が分かりやすい。
日本一のメロン産地は北海道ではなく茨城県
夕張メロンの知名度が高いので、メロンの生産量も北海道が一番なのかと思っていた。
実際には違う。
農林水産省の令和5年産統計では、収穫量は茨城県が37,500tで全国1位。熊本県24,100t、北海道19,400tと続く。
| 順位 | 都道府県 | 収穫量 |
|---|---|---|
| 1位 | 茨城県 | 37,500t |
| 2位 | 熊本県 | 24,100t |
| 3位 | 北海道 | 19,400t |
茨城県は2位の熊本県の約1.5倍になる。
ブランドの知名度と、生産量の多さは同じではない。
夕張メロンの北海道、イバラキングやアンデスなど多くのメロンを作る茨城県。
同じメロンでも、地域ごとにかなり違う産地戦略がある。
赤肉と青肉、結局どちらが甘いのか
ここは気になるところだと思う。
赤肉は濃厚、青肉は爽やかと説明されることが多い。
ただ、果肉の色だけで甘さの強さを決めることはできない。
品種や熟度、栽培環境によって糖度は変わるため、赤肉なら必ず青肉より甘いとは言えない。
例えば茨城県のイバラキングは青肉だが、高糖度で食味の良い品種として育成されている。
なので選ぶときは、
濃厚な香りや赤肉特有の風味が好きなら赤肉。
爽やかな香りやすっきりした後味が好きなら青肉。
くらいの使い分けの方が現実的だと思う。
メロンは種類だけでなく「どう作るか」でも価格が変わる
もう一つ、メロンの価格差を考えるうえで重要なのが栽培方法だ。
同じネット系メロンでも、温室で細かく温度や水分を管理し、一株に一果だけ残す栽培と、ハウスや露地で栽培するメロンでは、必要な設備や手間が違う。
農林水産省も、アールス・フェボリット系の温室メロンについて、隔離床のガラス温室で入念な管理を行い、一般的に1株1果で栽培されると説明している。
高いメロンと安いメロンの違いは、単純な品種の格付けだけではない。
品種に加えて、栽培方法、収量、選果基準、地域ブランドなどが重なって価格が決まっている。
ここは、夕張メロンがなぜ高いのかを考えるときにも重要になりそうだ。
調べて思ったこと
メロンの種類を調べる前は、赤肉と青肉、それから高級なマスクメロンくらいの違いしか意識していなかった。
実際には、まずネットがあるかないかで分かれ、果肉には青肉、赤肉、白肉がある。その上に品種の違いがあり、さらに産地ブランドが重なっている。
特に面白かったのが、夕張メロンだった。
夕張メロンという品種があると思っていたが、実際に使われている品種は夕張キング。
さらに夕張市で生産し、地域の基準を満たしたものが夕張メロンになる。
一方、茨城県ではイバラキングのように、その地域の栽培条件に合う品種そのものを10年以上かけて開発していた。
そして生産量で見ると、日本一は北海道ではなく茨城県。
同じメロンでも、品種を作る地域、ブランドを作る地域、大量に生産する地域が必ずしも同じではない。
メロン売り場に並ぶ名前を品種名だと思って見るのと、その裏にある育種や産地まで知って見るのとでは、かなり印象が変わった。
次は、その中でも特にブランド力が強い夕張メロンについて、なぜ高いのか、夕張キングという品種やGI、品質基準まで詳しく調べてみたい。
参考・確認した情報源
- 大阪市中央卸売市場「メロン」― ネット系・ノーネット系、青肉・赤肉・白肉の分類、ネットができる仕組み
- 農畜産業振興機構「作付けされている主な品種等」― メロンの分類と主要品種
- 農林水産省「消費者の部屋 通信」― マスクメロン、アールス・フェボリット、温室栽培
- 茨城県農業総合センター「緑肉メロン イバラキング」― 育成経緯、品種特性、栽培課題
- 茨城県「いばらきメロン特集2026」― イバラキング、アンデス、クインシーなどの特徴
- 農林水産省「メロンの収穫量、出荷量(令和5年)」― 都道府県別収穫量
- 農林水産省「第4号 夕張メロン」― 夕張キング、GI、生産地・特性
- 夕張市「夕張メロンについて」― 夕張キングの育成、品質等級、産地形成

