農業という仕事——会社員から農家になるまでのルート

田んぼで稲刈りを行う農家

「農業を仕事にしたい」と思ったとき、最初に何をすればいいのかが分からなかった。ネットで調べると、補助金や移住支援の情報は大量に出てくる。ただ、「自分が農業になるためにどうしたらいいのか」という全体像は、意外と見えづらい。

調べていく中で分かったのは、農業は単に「畑を借りて始める仕事」ではないということだ。
相談、体験、研修、就農、いくつかの段階を経ながら、自分に合ったルートを選んでいく構造になっていた。

今回は、農家になるまでの流れを、自分なりに整理してみた。

目次

まず、就農相談から始める

多くの場合、農業への入口は「就農相談」になる。自治体の農業担当窓口、JA、農業経営・就農支援センター、全国農業会議所など、相談先は複数ある。
毎年開催される「新・農業人フェア」では、自治体・JA・農業法人が集まり、直接話を聞ける場も用意されている。

なお、農業分野でいう「就農」は、単に農作業を体験することではなく、農業を仕事として継続的に営むことを指す場合が多い。

相談できる主な窓口

  • 都道府県 農業経営・就農支援センター
  • JA(農業協同組合)の就農相談窓口
  • 全国農業会議所・農業会議
  • 新・農業人フェア
  • 市区町村の農業担当窓口

相談前に整理しておきたいこと

  • 最低1〜2年、収入が不安定でも生活できるか
  • 家族とリスク共有できているか
  • 耕種か畜産か、大まかな方向性はあるか
  • 候補地域の気候・産地を調べ始めているか

最初から「どこで何を作るか」を決めるというより、まず情報を集めながら方向を絞っていくケースが多いようだった。

また私のように東京で会社員をしていると、希望就農地域が遠くなかなか直接行くのが難しい場合もあるだろう。
その場合は各自治体や都道府県単位で電話・メール・オンライン相談なども可能だったりするので、まずは話を聞いてみてほしい。

農業体験で、現場感覚を知る

相談と並行して、多くの人が行うのが農業体験や短期インターンだ。数日〜数週間、実際の農場で作業を経験し、現場の空気感を確認する。

これは必須制度ではない。ただ、ネットやYouTubeだけでは分かりづらい部分も多く、就農前に一度現場を見る人はかなり多い。実際に働いてみないと農業や希望作物が自分に合っているか確認できないため推奨されている。

期間内容
数日~1週間農業体験・見学。有給や連休でも参加しやすい
2週間~1ヶ月収穫~出荷までの流れを経験
数ヶ月程度季節をまたいだ実践経験。地域との相性も見えやすい。

実際に現場へ行くと、作業そのものだけでなく、朝の時間感覚、季節ごとの忙しさ、地域との距離感など、都市生活とは違うリズムが見えてくる。

可能であれば希望作物とそれ以外や、方針がそれぞれ違う農家をめぐって自分が目指す農業の形をイメージしてほしい。
希望自治体で体験農業を探すのがもちろん良いが、平日は働いており希望エリアが遠い場合などは「1日農業バイト デイワーク」を活用するのもおすすめである。

独立就農では、本格的な研修が前提になることが多い

農業体験とは別に、独立就農を目指す場合、多くの自治体では「就農研修」が前提になっている。

数日間の体験ではなく、1〜2年以上かけて、栽培技術・農業経営・地域との関係づくりまで学ぶ、本格的な準備期間だ。

ここで関係してくるのが、「認定新規就農者」という制度である。

認定新規就農者とは、市町村に提出した青年等就農計画が認定された新規就農者のこと。各種補助事業や制度資金の対象条件になるケースが多く、独立就農では重要な制度になっている。

そのため、多くの自治体では、

  • 研修実績
  • 技術習得
  • 営農計画

などを重視している。

項目内容
期間1~2年
窓口自治体・JA・農業法人などで研修
学ぶこと栽培技術、経営管理、販路、地域との関係

会社員目線で見ると、ここがかなり大きな分岐点になる。数日の体験とは違い、会社員のキャリアをいったん止める前提で動く形になるため、それまで周りへの相談や、自分の農業方針を決めておくことが必要である。

農業開始には、3つのルートがある

ルート特徴
雇用就農農業法人・農家に雇われる。給与制
新規独立自分で農地を確保し、経営を立ち上げる
第三者継承後継者のいない農家を引き継ぐ

ルートA:雇用就農

農業法人や農家に雇用される形で農業に入るルート。農業=独立というイメージだったが、49歳以下の新規就農者の中では、雇用による就農もかなり一般的になっており、技術をそこで学び将来独立する人も多い。

メリット

  • 給与が安定
  • 社会保険あり
  • 初期投資なし
  • 技術を学びながら収入を得られる

注意点

独立前提で動かないと、経営経験が身につきにくい側面もあるため、
事前にどのくらい在籍し、何を学び、いつ独立するのかを計画しておく必要がある。

ルートB:新規独立

自分で農地を借り、自分の名前で経営を立ち上げるルート。農地・農機・販路・地域との関係をゼロから構築する必要がある。

メリット

  • 経営の自由度が高い
  • 作物や販路を自分で決められる
  • 成功時のリターンが大きい

注意点

手持ち資金が少ない場合などに初期投資が重く、最初の数年はキャッシュフローが厳しくなりやすい。
また農地確保から農地整備など農業を始める前の苦労も多い。

ルートC:第三者継承

後継者がいない農家から、農地・設備・ハウス・農機などを引き継ぐ形。最近は全国の就農支援センターでもマッチング支援が進められている。

引き継げるもの

  • 農地
  • ハウス
  • 農機
  • 栽培ノウハウ
  • 地域との関係
  • 販路(条件による)

メリット

ゼロから始めるより、早く売上を立てやすい。

注意点

有形資産だけでなく、長年築かれてきた地域の信頼という無形資産をどう引き継ぐかが、大きな課題になる。
また農地によっては、無償もしくは低価格で譲り受けられず、かなりの額の初期資金やローンが必要となる場合もあるとともに、負債も一緒に譲り受けることになる。

他業種から農業に就農する場合にいずれも必要額は異なるが初期資金が一定必要となる。
また第三者継承を当初から希望していても、引継ぎ元の農家や自治体としては譲った後に経営が健全にされるのか、
周りへ良い影響をもたらしてくれるのか等をもとに判断する。
そのため新規就農者からすると、なかなか就農前に第三者継承を確約されないのが悩ましいところでもある。

地方の広い田んぼ風景

3つのルートを比較する

一見すると第三者継承が最もバランスがとれており良く見えるが、良い案件ほど新規就農者には回ってこない側面もあるため、注意が必要。

比較軸雇用就農新規独立第三者継承
初期投資ほぼゼロ最も重い抑えやすい
立ち上がり即収入あり数年かかる比較的早い
経営自由度低い高い中程度
向いている人安定志向独立志向効率重視

農家になるまでの流れ(全体像)

ステップ内容
1就農相談・情報収集
2農業体験・現場確認
3本格的な就農研修
4ルート選択
5営農開始

まとめ

新規就農という言葉から受けるイメージは、「会社を辞めて、いきなり農地を借りて独立する」というものだった。ただ、実際には相談、体験、研修を経ながら、雇用就農・新規独立・第三者継承といった複数のルートに分かれていく。

必要な資金も、背負うリスクも、求められる準備も、それぞれかなり違う。

どのルートが正解というより、自分の年齢・資金・家族の状況・目指す働き方に合わせて、現実的な選択肢を整理していく。その視点が、農業を「仕事」として考える最初の入口になるのかもしれない。

特に現在会社員であれば、安定した環境を捨てることになるため、事前の情報収集や相談、体験に時間をかけて、
自分自身が将来何をしたく、何を目指したいか、就農後の計画を明確にしておく必要があるように感じる。

※一部画像はUnsplash・Pexels等のフリー素材を使用しています。

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この記事を書いた人

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材、生産背景、新規就農について考えたことを中心にまとめています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

https://fieldnote-life.com/

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