ぶどう売り場で黄緑色のぶどうを見ると、今ではシャインマスカットが圧倒的に目立つ。
ただ、黄緑色のぶどうはシャインマスカットだけではない。
瀬戸ジャイアンツ、ロザリオビアンコ、ナイアガラなど、見た目は似ていても味や粒の大きさ、香り、食感がかなり違う品種が作られている。
さらに品種の系譜まで調べてみると、シャインマスカットは突然生まれたわけではなかった。
欧州系ぶどうのおいしさと、米国系ぶどうの育てやすさを何世代も掛け合わせた先に作られた品種だった。
今回は、日本で作られている代表的な黄緑色のぶどうを比較しながら、味や実の特徴、価格の傾向、品種同士のつながりまで調べた。
黄緑色のぶどうにはどんな種類がある?
ぶどうは果皮の色によって、黄緑系・赤系・黒系などに分けられる。
農林水産省では、黄緑系には渋みが少なく、爽やかな香りを持つ品種が多いと紹介している。
現在もっとも知られているのはシャインマスカットだが、それ以外にも特徴の異なる品種がある。

| 品種 | 粒 | 味・香り | 食感 | 皮ごと | 価格傾向 |
|---|---|---|---|---|---|
| シャインマスカット | 大粒・約13g程度 | 強い甘み、酸味少なめ、マスカット香 | 硬めでパリッ | ○ | 中〜高 |
| 瀬戸ジャイアンツ | 大粒 | 爽やかで上品な甘み | サクッとした食感 | ○ | 高め |
| ロザリオビアンコ | 大粒・約12g | 甘みが強く酸味控えめ | 果汁が多く柔らかめ | △ | 中〜高 |
| ナイアガラ | 中粒 | 甘みが強く独特の芳香 | 果汁が多い | × | 比較的手頃 |
| ハニービーナス | 大粒・約9g | 高糖度 | ややしっかり | 品質による | 流通少 |
| サンヴェルデ | 大粒 | 高糖度・酸味少なめ | 硬く噛み切りやすい | ○ | 流通少 |
※価格は産地、等級、房重、販売時期によって大きく変わるため、一般的な傾向として整理した。
同じ黄緑色でも、シャインマスカットのようにパリッとした食感のものもあれば、
ナイアガラのように果汁と香りを楽しむタイプもある。
色が同じだから似た味というわけではない。
シャインマスカットは大粒・高糖度・皮ごとが特徴
現在の黄緑色ぶどうを代表するのがシャインマスカットだ。
農研機構が育成し、2006年に品種登録された。
果粒は栽培方法によって変わるが13g程度まで大きくなり、糖度は18%以上になる。
酸味は少なく、香りはマスカット香。果肉は硬く、噛むとパリッとした食感がある。
果皮も厚すぎず渋みが少ないため、皮ごと食べられる。
現在ではスーパーでもかなり一般的になったが、もともとは高級ぶどうとして広がった品種だ。
生産量が増えたことで家庭用の商品も増えている一方、大房や高等級品では現在もかなり高い価格になる。
同じシャインマスカットでも、家庭用と贈答用では価格が何倍も違うことがあるため、「シャインマスカット=1房○円」と固定して考えるのは難しい。
シャインマスカットはどうやって生まれた?

シャインマスカットの面白いところは、その系譜にある。
農研機構によると、シャインマスカットは、
安芸津21号
×
白南
↓
シャインマスカット
という交配から作られた。
さらに安芸津21号をさかのぼると、
スチューベン
×
マスカット・オブ・アレキサンドリア
↓
安芸津21号
となる。
つまりシャインマスカットの系譜には、米国系のスチューベンと、
欧州系の代表的な高級ぶどうであるマスカット・オブ・アレキサンドリアが入っている。
農研機構では、欧州系ぶどうが持つ香りや硬い肉質、皮ごとの食べやすさと、
米国系ぶどうの栽培しやすさを組み合わせるため、何世代も交配を重ねたと説明している。
シャインマスカットは、単に甘いぶどうを作ろうとして生まれたわけではなかった。
「欧州系のおいしさを日本でも安定して作りたい」という長い品種改良の先に誕生している。
瀬戸ジャイアンツはシャインマスカットとは別系統

シャインマスカットと見た目がよく似ているのが瀬戸ジャイアンツだ。
どちらも黄緑色の大粒ぶどうで、種なし栽培され、皮ごと食べられる。そのため同じ系統の品種に見える。
ところが、血統はまったく違う。
瀬戸ジャイアンツは、
グザルカラー
×
ネオ・マスカット
↓
瀬戸ジャイアンツ
という交配から岡山県で育成された。
1989年に品種登録されており、シャインマスカットより先に誕生している。
実の形にも特徴がある。
シャインマスカットは比較的丸く滑らかな粒だが、
瀬戸ジャイアンツは粒にくぼみが入りやすく、桃のような形になることがある。
味にも違いがある。
シャインマスカットは甘みが濃く、マスカット香が強い。
一方、瀬戸ジャイアンツは酸味が少なく、比較的さっぱりした上品な甘さを持つ。
長崎県の試験では、成熟期のシャインマスカットが糖度20度程度だったのに対し、
瀬戸ジャイアンツは16度程度だった。
ただし瀬戸ジャイアンツも酸味が少ないため、糖度の数字だけで食味の良し悪しが決まるわけではない。
食感も少し違い、シャインマスカットはパリッと硬め、瀬戸ジャイアンツは薄い皮とサクッとした食感が特徴になる。
ロザリオビアンコはマスカット・オブ・アレキサンドリアの子ども
ロザリオビアンコも、日本で作られている代表的な黄緑色ぶどうの一つだ。
山梨県の育種家が、
ロザキ
×
マスカット・オブ・アレキサンドリア
↓
ロザリオビアンコ
として育成し、1987年に品種登録された。
果粒は約12gの大粒で、果汁が多く、酸味が控えめ。
山梨県では糖度18度以上になる品種として紹介されている。
系譜を見ると、シャインマスカットとは直接の親子ではない。
ただし、どちらもマスカット・オブ・アレキサンドリアにつながっている。
シャインマスカットでは祖先の一つ、ロザリオビアンコでは直接の親になっているため、
かなり遠いながら同じ高級マスカット系統の特徴を受け継いだ品種ともいえる。
ロザリオビアンコはシャインマスカットほど流通量が多くないため、スーパーでいつでも見かける品種ではない。
その分、直売所や専門店などでは高級ぶどうとして扱われることが多い。
ナイアガラは大粒高級ぶどうとは少し違う
同じ黄緑系でも、シャインマスカットや瀬戸ジャイアンツとはかなり性格が違うのがナイアガラだ。
ナイアガラは米国生まれの品種で、日本では北海道や長野県などで栽培されている。
農林水産省では、糖度が高く果汁が豊富で、独特の芳香があることを特徴としている。
シャインマスカットのような硬い果肉を皮ごと食べるタイプではなく、強い香りと果汁を楽しむぶどうだ。
生食だけでなく、ジュースやワインにも利用されている。
黄緑系ぶどうというと現在は大粒・種なし・皮ごとのイメージが強いが、
ナイアガラを見ると、それだけが黄緑系ぶどうではないことが分かる。
ハニービーナスやサンヴェルデも日本で育成された
農研機構では、シャインマスカット以外にも黄緑色のぶどうを育成している。
ハニービーナスは、
紅瑞宝
×
オリンピア
から生まれた黄緑色の大粒ぶどうだ。
果粒は9g程度で、糖度が高く、巨峰より結実性が良いという特徴がある。
サンヴェルデも黄緑色の大粒品種で、巨峰やピオーネより糖度が高く酸味が少ない。果肉は硬く、噛み切りやすい。
ただし、現在の流通量ではシャインマスカットほど大きくない。
同じように「大粒・甘い・食べやすい」を目指して複数の品種が開発されても、
そのすべてが主力品種になるわけではない。
ここも品種改良を見ていて面白いところだ。
シャインマスカットには兄弟のような品種もある
シャインマスカットの系譜をさらに見ると、同じ親を持つ品種も存在する。
その一つがオリエンタルスターだ。
オリエンタルスターは、
安芸津21号
×
ルビー・オクヤマ
から育成された。
シャインマスカットは、
安芸津21号
×
白南
なので、両方とも母親に安芸津21号を持つ。
人間でいうと、母親が同じ兄弟に近い関係になる。
ただし、オリエンタルスターは黄緑ではなく紫赤色のぶどうだ。
同じ親を使っても、掛け合わせる相手によって果皮の色や味、実の特徴が変わる。
品種を色だけで分類すると別の記事に分かれてしまうが、系譜をたどると赤ぶどうや黒ぶどうともつながっている。
黄緑ぶどうの価格はかなり差がある
黄緑色のぶどうを買うときに気になるのが価格だ。
ただし、ぶどうの価格は品種だけでは決まらない。
産地、栽培方法、房の重さ、粒の大きさ、糖度、見た目、等級、時期によってかなり変わる。
特に贈答用では、大房で粒が揃ったものほど高くなる。
大まかな傾向を見ると、
| 品種 | 価格傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| シャインマスカット | 中〜高 | 流通量は多いが、高等級品は高価 |
| 瀬戸ジャイアンツ | 高め | 流通量が比較的少ない |
| ロザリオビアンコ | 中〜高 | 流通量が少なく高級品として扱われることが多い |
| ナイアガラ | 比較的手頃 | 大粒高級品種とは市場が異なる |
| ハニービーナス | 比較困難 | 流通量が少ない |
| サンヴェルデ | 比較困難 | 流通量が少ない |
シャインマスカットの場合でも、家庭用と贈答用では大きな価格差がある。
2026年の産地直送や贈答向け商品を見ると、
600〜700gほどの1房でも高等級品では数千円相当になるものがあり、1kg級の特大房ではさらに高くなる。
一方、最盛期には家庭用や小房の商品も流通するため、スーパーではかなり手頃なものも見つかる。
「どの品種が一番高いか」を固定するより、希少性と等級によって価格が変わると考えた方が実態に近い。
シャインマスカットが黄緑ぶどうの主役になった理由も見えてくる
黄緑ぶどうを並べてみると、なぜ現在シャインマスカットがここまで増えたのかも少し見えてくる。
ロザリオビアンコは食味が良く、瀬戸ジャイアンツは皮ごと食べられる。ナイアガラは強い香りがある。
それぞれ魅力はある。
ただ、シャインマスカットは、
大粒
種なし栽培が可能
皮ごと食べられる
糖度が高い
酸味が少ない
マスカット香がある
日持ちが良い
という特徴を一つの品種で持っている。
さらに農研機構によると、巨峰より脱粒しにくく、日持ちも長い。
消費者にとって食べやすいだけでなく、流通させやすいという特徴まである。
前の記事で、日本のぶどう栽培がデラウェアから巨峰・ピオーネ、さらにシャインマスカットへ変化していることを見たが、黄緑系だけを比較すると、その理由がより分かりやすくなる。
調べて思ったこと
黄緑色のぶどうというと、最初はほぼシャインマスカットのことだと思っていた。
ところが調べてみると、瀬戸ジャイアンツ、ロザリオビアンコ、ナイアガラなど、同じ色でもかなり性格が違う。
さらに面白かったのは、似ているから近い品種とは限らないことだった。
シャインマスカットと瀬戸ジャイアンツは見た目も食べ方もかなり似ているが、系譜は別。
一方、色の違うオリエンタルスターとは安芸津21号という同じ親を持っている。
見た目の色は品種を整理するには分かりやすいが、品種改良の歴史まで見ると、
赤・黒・黄緑という分類をまたいでつながっている。
スーパーでシャインマスカットを見るだけでは分からなかったが、
その周りにはかなり多くの品種と長い育種の歴史があった。
出典
- 農林水産省「ぶどうの品種」
- 農林水産省「品種登録データベース」
- 農研機構「シャインマスカット」
- 農研機構「ぶどう属の品種一覧」
- 山梨県「フルーツ王国やまなし ぶどう」
- 長崎県農林技術開発センター「シャインマスカット、瀬戸ジャイアンツの果実特性」
