いちごはなぜ一年中ある?冬春と夏秋で産地が変わる理由を調べてみた

いちごが一年中流通する理由と冬春・夏秋で産地が変わる仕組みを紹介するアイキャッチ画像
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スーパーへ行くと、冬でも春でもいちごが並んでいる。
さらに夏にケーキ屋へ行っても、ショートケーキには普通に赤いいちごがのっている。

いちごの旬は冬から春というイメージがあるのに、なぜ一年中食べられるのだろうか。

調べてみると、日本では同じ地域で一年中いちごを作っているわけではなかった。

冬から春は栃木、福岡、熊本、静岡などの主要産地でハウスを使った「促成栽培」が中心になる。
一方、気温が上がる夏から秋には、北海道や東北、高冷地など涼しい地域で作る「夏秋いちご」が出荷される。

さらに国産が少なくなる時期には、ケーキなど業務用を中心に輸入いちごも使われている。

つまり一年中いちごを見かける背景には、
栽培時期を早める技術
+
季節によって産地を変える産地リレー
+
夏秋専用品種
+
輸入

が組み合わさっていた。

今回は、日本でいちごが一年中流通する仕組みを季節ごとに調べた。

目次

いちごは本来、春から初夏に実る植物

現在はいちご=冬の果物というイメージがかなり強い。

しかし、もともとの露地栽培では春から初夏に収穫する作物だ。

農林水産省によると、露地栽培では3〜4月ごろに花が咲き、4〜6月ごろに収穫する。

一方、ハウス栽培では11月ごろから花を咲かせ、12月から果実を収穫できる。

東京都中央卸売市場も、いちごは30年ほど前まで春から初夏を代表する味覚だったが、
品種改良やハウス栽培の普及によって現在は1〜4月に入荷のピークを迎えると説明している。

つまり、現在の「冬がいちごの季節」という状態は自然の旬そのものではない。

人が収穫時期を前にずらして作った現在の栽培体系による部分が大きい。

冬から春はいちごの生産量が最も多い

現在、日本で最も多くいちごが出回るのは冬から春だ。

この時期を支えているのが、

  • 栃木県
  • 福岡県
  • 熊本県
  • 愛知県
  • 静岡県
  • 長崎県
  • 佐賀県

などの主要産地になる。

これらの地域では、秋に苗を定植し、ハウス内の温度や日長などを管理しながら冬から春に収穫する「促成栽培」が中心になっている。

栃木県でも、昔はいちごを5〜6月に露地で収穫していた。

その後ハウス栽培が主流になり、現在ではクリスマスや年末需要に合わせて11月ごろから出荷するようになっている。

品種も、とちあいか、あまおう、紅ほっぺ、ゆうべに、いちごさんなど、
冬から春の促成栽培に適したものが各産地で作られている。

なぜ真冬にいちごを作れる?

いちごを秋に花芽形成させハウスで加温して冬に収穫する促成栽培の流れを示した図

いちごには、秋になって気温が下がり日が短くなると花芽を作るタイプが多い。

こうした品種を「一季成り性」と呼ぶ。

とちおとめやあまおうなど、日本の主要品種の多くがこのタイプだ。
自然条件だけなら冬は株の生育が鈍くなり、本格的に実るのは春になる。

そこで現在の促成栽培では、苗の管理によって花芽形成を促し、
その後ハウスへ植えて加温することで収穫時期を前倒ししている。

本来春に実る植物を、
秋に花芽を作らせる
↓
ハウスで冬でも生育させる
↓
11〜12月から収穫

という流れに変えている。

クリスマスに国産いちごのショートケーキを食べられる背景には、この促成栽培技術がある。

5〜6月になると冬春産地のシーズンが終わる

春になって気温が上がると、冬から出荷してきた産地では徐々にシーズン終盤になる。

いちごは暑さに強い作物ではない。

気温が高くなると果実が小さくなったり、軟らかくなったりしやすく、生産性や品質が低下する。

そのため栃木や福岡などの主要産地で、真夏まで同じように生産を続けるのは難しい。

ここでいちごの産地が変わる。

冬春の一季成りいちごと夏秋の四季成りいちご、輸入いちごの違いを比較した図

夏から秋は北海道・東北・高冷地へ移る

6月以降になると活躍するのが「夏秋いちご」だ。
夏秋いちごとは、その名のとおり夏から秋に収穫するいちごの総称になる。

主な産地は、
北海道
東北地方
長野などの高冷地

といった夏でも比較的涼しい地域だ。

農研機構も、北海道・東北・関東や中部の寒冷地、高冷地を夏秋どりいちごの適地としている。
冬春産地が暑くなって生産量を落とす時期に、より北側や標高の高い地域が生産を担う。

野菜や果物ではよく見られる「産地リレー」が、いちごでも行われている。

北海道では6月から11月まで収穫する地域もある

北海道では冷涼な夏を利用して、夏秋いちごの産地が形成されている。
北海道の浦河町では、夏秋どりいちごを6月中旬から11月下旬まで収穫している。

北海道の資料でも、夏秋どりいちごは主にケーキなどの業務用として利用されると紹介されている。
日高地方の様似町でも、夏の涼しさを生かして四季成りいちごの生産が盛んで、
国内有数の夏秋いちご産地の一つになっている。

つまり北海道のいちごは、栃木や福岡と同じ時期に競うというより、
本州の生産量が減る夏〜秋を狙う
という役割を持っている。

東北でも夏秋いちごが作られている

夏秋いちごは北海道だけではない。
東北でも冷涼な気候を生かした生産が行われている。

青森県下北地域では夏秋いちごの産地化が進められており、収穫は11月ごろまで続く。
生産された果実は地元だけでなく、首都圏や九州にも出荷され、ケーキやクレープなど業務用途にも使われている。

岩手県でも、夏季の冷涼な気候を利用した夏秋どり品種の試験や栽培技術開発が行われている。

冬春は南側の大産地。
夏秋は北側や標高の高い地域。

季節によっていちご産地の地図そのものが変わっている。

夏秋いちごでは「四季成り品種」が活躍する

冬春産地で多く使われる一季成り品種とは別に、夏秋栽培では「四季成り性」の品種が重要になる。
四季成り性いちごは、長い日照時間の条件でも花芽を作りやすく、夏にも花を咲かせて収穫できる。

代表的な夏秋用品種の一つが、農研機構の「夏のしずく」だ。
夏のしずくは四季成り性で、寒冷地・高冷地なら6〜11月前後に収穫できる。
さらに果実が硬く輸送しやすく、糖度と酸度の両方が高いため、ケーキなどの業務需要を想定して育成されている。

ここが冬春いちごとの大きな違いになる。

単に北海道へ同じ「とちおとめ」を持っていけば一年中収穫できるわけではない。
地域の気候
+
収穫したい季節
+
品種の性質

を組み合わせることで、夏にも国産いちごを作っている。

それでも夏〜秋はいちごが少ない

北海道や東北で夏秋いちごを作っているなら、一年中国産だけで十分なのではと思う。

実際にはそうではない。

日本のいちご生産量は冬から春に多く、6〜11月は大きく減る。
農研機構もこの時期を「国産イチゴの端境期」としている。

夏秋いちごの産地は増えているが、冬春産地ほど大規模ではない。

さらに夏は気温が高いため、

  • 収量が下がりやすい
  • 果実が軟らかくなりやすい
  • 日持ちしにくい
  • 病害虫管理が難しい

といった問題もある。

そのため、夏秋いちごは冬春いちごより供給量が少なくなりやすい。

夏のケーキのいちごは国産とは限らない

ここが一年中いちごがある理由を考えるうえで重要だった。
ケーキ屋やホテル、外食などでは、季節に関係なく一定量のいちごが必要になる。

特にショートケーキの場合、夏だからいちごを完全になくすわけにはいかない。

農研機構によると、ケーキなど業務用いちごの需要は年間を通して高く、
国内産が少ない6〜11月は海外からの輸入にも頼ってきた。

そのため夏のいちごは、北海道・東北・高冷地などの国産夏秋いちごだけではなく、
輸入いちごも流通している。

冬のショートケーキと夏のショートケーキでは、使われているいちごの産地がまったく違うこともある。

スーパーとケーキ屋ではいちごの事情が少し違う

スーパーに並ぶいちごは、生食用として味や見た目が重視される。
一方、ケーキなど業務用では、それに加えて別の条件も重要になる。

例えば、
果実が硬い
輸送中につぶれにくい
赤色がきれい
大きさがそろう
日持ちする
夏でも安定して収穫できる

といった性質だ。

夏のしずくも、果実硬度が高く、ケーキ等の業務利用に適することを育種目標の一つとしている。

冬春の「あまおう」や「とちあいか」のような生食向けブランドと、
夏秋期の業務用品種では求められる特徴にも違いがある。

一年のいちご産地を並べるとどうなる?

大まかに整理すると、日本のいちご流通は次のようになる。

時期主な供給主な地域・特徴
12〜2月促成いちご栃木・福岡・熊本・静岡・長崎など
3〜4月促成いちご最盛期全国の主要産地
5〜6月冬春産地終盤+夏秋産地開始本州→北海道・東北へ移行
7〜9月夏秋いちご+輸入北海道・東北・高冷地
10〜11月夏秋いちご終盤+輸入+促成開始北海道・東北→本州へ戻る
11〜12月新シーズン促成いちご栃木・福岡などから再び増加

完全に境界が分かれているわけではないが、大きな流れとしては、

冬春:本州・九州
↓
夏秋:北海道・東北・高冷地
↓
冬:再び本州・九州

という産地リレーになる。

そこに輸入品が加わることで、一年間いちごを使える体制ができている。

冬春は栃木・福岡・熊本など、夏秋は北海道・東北・高冷地へ移るいちごの産地リレーを示した図

いちごは「旬がなくなった」のではない

一年中店で見かけるようになると、いちごには旬がなくなったようにも感じる。

ただ、実際には季節ごとに生産量は大きく違う。
東京都中央卸売市場でも、入荷のピークは現在も1〜4月になる。

つまり、
一年中手に入る
=
一年中同じ量が国内で採れる

ではない。

ハウス栽培や品種改良、産地リレーによって流通期間を大幅に伸ばし、
足りない時期を夏秋いちごや輸入品が補っている。

一年中売られていることと、旬があることは両立する。

夏秋いちごはこれからさらに増える?

国産いちごが少なくなる6〜11月を埋めるため、現在も新品種や栽培技術の開発が続いている。

農研機構が夏のしずくを開発したのも、その一つだ。
夏のしずくは北海道や東北、高冷地で6〜11月まで収穫でき、10a当たり3t以上の商品果収量を見込めるとしている。

国内需要だけでなく、いちごの輸出を増やすためにも、年間を通じて安定供給できることが重要になっている。

将来、夏秋いちごの生産量が増えれば、夏のケーキに使われる国産いちごの割合もさらに増える可能性がある。

調べて思ったこと

一年中いちごがある理由を調べる前は、ハウスで温度調整すれば同じ産地でずっと作れるのだと思っていた。

実際にはまったく違った。

冬から春は栃木や福岡などの主要産地。
気温が上がると北海道や東北、高冷地へ産地が移り、さらに国産だけで足りない時期には輸入品も入ってくる。

つまり、一年間同じいちごを作っているのではなく、
季節に合わせて産地と品種そのものを変えている。

特に面白かったのは、夏秋いちごがスーパーの生食用だけでなく、
ショートケーキなどの業務需要をかなり意識して作られていることだった。

冬のいちご売り場と夏のケーキにのっている一粒は、見た目は同じでも、
生産地域も品種も栽培方法も違うかもしれない。

一年中いちごが食べられるのは、ハウス栽培だけではなく、日本列島の南北の気候差まで利用した結果だった。

出典

  • 農林水産省「いちご」
  • 農林水産省「達人レシピ いちご」
  • 農研機構「夏のしずく」
  • 農研機構「ゲノム情報を駆使した新品種開発」
  • 北海道「いちごの収穫・夏秋どりいちご」
  • 北海道農政事務所「様似町」
  • 東北農政局「下北地域の夏秋いちご」
  • 東京都中央卸売市場「旬の食材 いちご」
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この記事を書いた人

Field Note Farmのアバター Field Note Farm 東京で暮らす会社員

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材の生産背景、新規就農について調べたことや考えたことを中心にまとめています。

将来的な新規就農を目指しながら、農業体験や自治体相談、地域研究を続けており、その過程も記録しています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

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