乳牛の種類って何が違う?ホルスタインが多い理由と酪農の仕組みを整理してみた

乳牛の種類と酪農の仕組みを解説する記事アイキャッチ

スーパーで牛乳を買うとき、ラベルに書いてある情報をそこまで気にすることはない。

でも調べてみると、牛乳を作る牛の品種は一種類ではないし、同じ乳牛でも「どう使われるか」は思ったより複雑な仕組みになっていた。

この記事では、乳牛の品種の違い、牛乳の用途、そして乳牛がどういう形で出荷されていくのかを、できるだけわかりやすく整理してみた。

目次

日本の乳牛はほとんどがホルスタイン

まずここを知っておくと、後の話がわかりやすくなる。

日本で飼育されている乳牛の約99%はホルスタイン種だ。白と黒のまだら模様、
牛のイラストといえばこれ、というあの牛である。

残りの1%弱をジャージー種やブラウンスイス種などが占めているが、頭数としてはごくわずかだ。

なぜここまで一種類に集中しているのか。それは後で説明する。まず品種ごとの特徴を見ていく。

乳牛の品種と特徴

ホルスタイン

牛舎で飼育されるホルスタイン種の乳牛

オランダ・ドイツ原産の品種で、世界中で最も多く飼育されている乳牛だ。体高は約140cm、体重は成雌で約650kgと大型。

最大の特徴は乳量の多さで、1頭あたり年間6,000〜8,000kgの生乳を産む(明治の食育サイト参照)。乳脂肪率は約3.8%と他の品種より低めだが、とにかく量が取れる。

性格は温和で寒さに強い一方、暑さには弱い。搾乳速度が速く、大規模な搾乳システムとも相性がよい。

ジャージー

放牧地で草を食べるジャージー種の乳牛

イギリス王室属領のジャージー島が原産。体はホルスタインより小型で、茶褐色の毛が特徴だ。

乳量は年間3,500kg程度とホルスタインより少ないが、乳脂肪率が4.5〜5%と高く、濃厚な味わいの牛乳が取れる。バターやアイスクリーム、ソフトクリームの原料として使われることが多い。

観光牧場や高付加価値型の乳製品生産に向いている品種で、岡山県の蒜山高原や熊本県の小国町・南小国町などが国内の産地として知られている。

また別の記事でこのジャージー牛の魅力は紹介したい。

ブラウンスイス

放牧地で草を食べるブラウンスイス種の乳牛

名前の通りスイス原産で、灰色がかった毛色が特徴。

乳量はホルスタインより少ないが、たんぱく質が高めでチーズへの加工に向いているとされる。日本ではほとんど飼育されておらず、主にチーズ向けなどで少数飼育されている。

牛乳には「飲用向け」と「加工向け」がある

牛乳は用途によって求められるものが変わってくる。

飲用向けは、スーパーで売られているいわゆる「牛乳」だ。毎日大量に、同じ品質で、全国へ安定供給することが求められる。成分の均一性と供給量の両立が最優先になる。

加工向けは、チーズ・バター・生クリーム・ヨーグルトなどに使われる。乳量だけでなく乳脂肪やたんぱく質の比率が重要になり、品種の違いが出やすい領域でもある。

ホルスタインは、特に大量供給型の飲用牛乳と相性がよい品種と考えるとわかりやすい。
ジャージーやブラウンスイスは、加工向け・高付加価値向けに強みを持つ。

なぜホルスタインにここまで集中したのか

理由はいくつか重なっている。

理由① 乳量が圧倒的に多い

同じ頭数を飼育したとき、回収できる生乳の量がホルスタインが最も多い。経営効率という観点では合理的な選択になる。

理由② 日本の集乳・流通システムとの相性がいい

日本の牛乳は大手乳業メーカーが集乳・加工・流通を担う仕組みが主流で、毎日大量に均一な品質で届けることが前提になっている。

大量安定供給ができる品種が有利になる構造だ。

理由③ 「毎日飲む牛乳」に最適化されている

ジャージーのような濃厚タイプはプレミアム感があるが、乳量が少なく価格も高くなりやすい。安定供給が難しい面もある。

日本の牛乳市場は「特別な日に飲む高級品」ではなく、「毎日飲める価格と安定供給」を中心に発展してきた。その流れの中で、ホルスタインへの集中が進んだ。

乳牛のオスは、肉用牛として出荷されている

ここは意外と知られていない部分だ。

乳牛は乳を搾るためだけに存在しているわけではない。ホルスタインは雌雄の産み分けをしないため、生まれてくる子牛は雌雄ほぼ半々になる。

雌は搾乳牛として育てられるが、オスは乳が出ないため、子牛のうちから肉用牛として肥育され出荷される。

スーパーで「国産牛」として売られている牛肉の多くは、このホルスタインのオスか、ホルスタインと黒毛和種を掛け合わせた交雑種(F1)だ。

つまり、酪農家が牛を飼育すると、牛乳と牛肉の両方が出荷される形になっている。乳牛だからといって乳しか出さないわけではなく、牛という資源を無駄なく使う構造になっている。

また、役目を終えた搾乳牛(廃用牛)も食肉として流通している。

ただし、ジャージーやブラウンスイスのオスは体が小さく、日本の食肉流通の規格に合わないケースがあり、長らく生後すぐに処分されることも多かった。

近年は北海道や岡山・愛媛などで、ジャージーのオスを肉牛として育てて出荷する取り組みが広がっており、和牛並みのうま味があることも確認されてきている(日本経済新聞2021年報道参照)。

放牧型と大規模型でも、酪農の姿はかなり違う

品種だけでなく、飼い方や経営スタイルでも酪農の実態は大きく変わる。

放牧型

牧草地で放牧される乳牛と酪農風景

牛を外に出して草を中心に飼育するスタイルだ。小規模な牧場に多く、地域の景観とも相性がよい。

乳量よりも「どう育てるか」「何を食べさせるか」を重視するケースがあり、高付加価値な乳製品との相性がよい。

大規模型

大規模な牛舎で飼育されるホルスタイン乳牛

自動搾乳ロボットや混合飼料(TMR)を使った効率的な飼育が中心だ。頭数が多く、作業の自動化・省力化が進んでいる。

北海道の大型牧場はこちらに近い形が多い。

放牧型と大規模型では、設備・資金・労働時間・経営の考え方まで、ほぼ別の仕事と言っていいくらい違う。同じ「酪農」という言葉でくくられていても、中身はかなり異なる。

北海道に酪農が集中する理由

日本の生乳生産量の半分以上を北海道が占めている。なぜここまで集中しているのか。

土地が広く、大規模な圃場を確保しやすい。飼料となる牧草を自ら育てやすい。冷涼な気候が乳牛の飼育に適している。大規模経営に向いた地形と産業構造がある。

特に大規模型の酪農とは非常に相性がよく、北海道全体として「効率的に大量生産する」方向に発展してきた経緯がある。

一方で都府県の酪農は、消費地に近い立地を活かしたり、放牧型・小規模高付加価値型で差別化するケースがある。大阪や九州など消費地の近くで飼育し、鮮度を売りにする形もある。

まとめ

日本の乳牛は約99%がホルスタイン種で、飲用牛乳の安定大量供給に最適化された構造になっている。

ジャージーやブラウンスイスといった品種も存在するが、頭数は限られており、主に高付加価値な乳製品や加工向けに使われることが多い。

乳牛は乳だけを出して終わりではなく、オスは肉用牛として出荷され、国産牛肉の一部を担っている。酪農は牛乳と牛肉の両方を社会に届ける仕組みの上に成り立っている。

スーパーで牛乳を手に取るとき、その背景にある構造を少し知っておくと、食を見る目が少し変わるかもしれない。

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この記事を書いた人

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材、生産背景、新規就農について考えたことを中心にまとめています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

https://fieldnote-life.com/

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