北海道の物件を見ていると、物件情報でよく目にする項目がある。
「都市ガス」
「プロパンガス(LPガス)」
東京で暮らしていた頃は都市ガスの物件が多く、ガスの種類をそれほど意識したことがなかった。
しかし北海道や地方の物件を見ていると、LPガスの物件もかなり多い。
なぜ地方ではプロパンガスが多いのだろうか。
調べてみると、都市ガスとLPガスは単に料金が違うだけではなく、そもそもの供給方法が違うため、使われやすい地域にも差があることが分かった。
都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違い

まず都市ガスとLPガスの主な違いを整理すると、次のようになる。
| 項目 | 都市ガス | プロパンガス(LPガス) |
|---|---|---|
| 供給方法 | 地下などのガス導管 | 各家庭などに設置する容器 |
| 多い地域 | 都市部・人口密集地 | 地方・郊外・山間部など |
| 供給エリア | ガス導管が整備された地域 | 配送可能な地域 |
| 料金 | 小売事業者・料金プランによる | LPガス販売事業者が設定 |
| 災害時 | 導管の被害状況によって復旧 | 個別設備ごとに復旧しやすい特徴 |
一番大きな違いは供給方法だ。
都市ガスは、道路の地下などに整備されたガス導管を通して各家庭へ供給される。
一方、LPガスは液化したガスを容器に入れて各家庭などへ配送し、設置した容器から供給する。
つまり、都市ガスはガス管が通っている場所でなければ利用できないが、LPガスは配送できれば利用できる。
この違いが、地方でLPガスが多い理由にもつながっている。
なお、都市ガスは2017年4月に小売が全面自由化され、家庭でもガス小売事業者を選択できる仕組みになった。以前のように「都市ガス=地域独占の認可料金」と単純には整理できない
なぜ地方ではプロパンガスが多いのか

理由は、人口密度とインフラ整備コストにある。
都市ガスを供給するためには、道路の地下などにガス導管を整備する必要がある。
住宅が密集している都市部であれば、一つのエリアに多くの利用者がいるため、導管を整備する意味が大きい。
一方、地方や山間部では住宅同士の距離が離れていることも多い。
数軒の住宅へガスを届けるために長い導管を整備するとなると、都市部と比べて1世帯あたりのインフラ負担が大きくなりやすい。
そこで地方では、導管を地域全体へ張り巡らせなくても供給できるLPガスが使われている。
東京にいると都市ガスが当たり前に感じるが、日本全体で見ると、都市ガスが使えるかどうかは地域によってかなり違う。
都市ガスがある地域とない地域がある
都市ガスは全国どこでも利用できるわけではない。
基本的には、ガス導管が整備された供給区域内で利用する。
そのため、同じ都道府県でも、
都市部では都市ガス
郊外へ行くとLPガス
ということもある。
また、地方都市の中心部には都市ガスが通っていても、少し離れた農村部や山間部ではLPガスというケースも考えられる。
地方移住で物件を探す場合は、「この自治体は都市ガスか」ではなく、その物件の住所が都市ガスの供給エリアに入っているかまで確認した方がいい。
北海道を例に見ると
地方移住や農業を考えるうえで、北海道はガス事情の地域差が分かりやすい。
総務省統計局の社会・人口統計体系には「都市ガス供給区域内世帯比率」という指標があり、都市ガス供給区域内世帯数を一般世帯数で割って算出している。
2016年の北海道は、この都市ガス供給区域内世帯比率が67.6%だった。
つまり、当時の統計では一般世帯数に対して都市ガス供給区域内の世帯数が約3分の2という水準だったことになる。67.6%という数字自体は2016年のデータなので、現在の供給状況をそのまま示す数字としてではなく、北海道でも都市ガスが全域に整備されているわけではないことを理解する参考値として見るのがよさそうだ。
実際に北海道の物件を見ていても、都市ガスだけでなくLPガスの物件をよく見かける。
農業を考える地域は都市中心部から離れることも多いため、就農候補地ではLPガスになる可能性も考えておいた方がいい。
プロパンガスは都市ガスより高いのか
引っ越し関連の記事やSNSでは、
「プロパンガスは高い」
という話をよく見かける。
実際には、都市ガスとLPガスを単純に「○倍」と固定して比較するのは難しい。
LPガスは販売事業者や地域によって料金が異なり、都市ガスも事業者や料金プランによって変わる。
また、LPガスではガスそのものだけでなく、容器の配送、保安、検針などの業務も必要になる。
そのため、物件を見る際は「LPガスだから高い」と決めつけるより、
・基本料金
・従量料金
・使用量
・契約しているガス会社
まで確認した方がいい。
LPガス料金は2025年から表示ルールも変わった
LPガスについては、料金の分かりにくさを改善するための制度変更も行われている。
2025年4月から、LPガス事業者が料金を請求する際には、
基本料金
従量料金
設備料金
の3つに分けて通知する「三部料金制」が義務化された。
また、エアコンやインターホン、Wi-Fi機器など、LPガスの消費とは関係のない設備費用をLPガス料金として計上することも禁止された。賃貸住宅向けでは、新規契約についてガス器具などの消費設備費用をLPガス料金へ計上することも禁止されている。
地方で賃貸物件を探す場合は、単に「プロパンガス」と書かれているかを見るだけでなく、実際の料金表まで確認することが重要になる。
災害時はLPガスにも強みがある
価格だけを見ると都市ガスの方が魅力的に感じることもある。
しかし、LPガスには別のメリットもある。
都市ガスはガス導管を使って地域へ供給するため、災害によって導管などに被害が出た場合は、地域単位で安全確認や復旧作業が必要になる。
一方、LPガスは各住宅などに設置された設備ごとに供給する分散型の仕組みだ。
そのため、設備に問題がなければ個別に供給を再開しやすいという特徴がある。
地方や山間部だけでなく、災害対策という意味でもLPガスが利用される理由がある。
高くてもLPガスがなくならない理由
「LPガスの方が料金が高くなることがあるなら、すべて都市ガスにすればいいのでは」と最初は思った。
しかし、都市ガスには導管整備が必要になる。
人口密度の低い地域まで都市ガス網を広げるには、大きなインフラ投資が必要だ。
一方、LPガスなら容器を配送することで供給できる。
そのため、
・農村部
・山間部
・郊外
・離島
などでも利用しやすい。
地方の生活を支えるインフラとして考えると、都市ガスとLPガスにはそれぞれ役割があることが分かる。
地方移住や新規就農ではガスの種類も生活コストに影響する
農業について調べていると、土地や農地の価格、住宅の家賃などに目が向きやすい。
自分自身も最初はそこばかり見ていた。
しかし実際に地方の物件を調べ始めると、地域によって生活インフラの前提そのものが違うことに気付いた。
ガスもその一つだ。
同じ家賃の物件でも、都市ガスなのか、LPガスなのか、LPガスならどの会社なのか
によって毎月の生活費が変わる可能性がある。
さらに農村部では、ガスだけでなく下水道ではなく浄化槽を使う地域もある。
東京ではあまり意識しなかった部分だが、地方移住や新規就農を考えるなら、家賃だけではなく水道・ガス・下水などを含めた生活インフラ全体で固定費を見る必要があると感じている。
地方で浄化槽が使われる理由については、別記事で整理している。

まとめ|地方でLPガスが多いのは供給方法が違うから
地方でプロパンガスが多い理由を調べてみると、単に「地方だから昔の設備が残っている」という話ではなかった。
都市ガスは導管を整備して供給するため、人口が集中する地域と相性がいい。
一方、LPガスは容器を配送して供給できるため、住宅が点在する地方や山間部でも利用しやすい。
その結果、地方では現在もLPガスが重要な生活インフラになっている。
また料金についても、単純に「LPガスは都市ガスの○倍」と考えるのではなく、地域や事業者、契約内容まで確認する必要がある。
地方移住や新規就農で物件を見るなら、
都市ガスかLPガスか
都市ガスの供給区域内か
LPガスの場合は料金表がどうなっているか
まで確認しておいた方がいい。
農業そのものとは直接関係ないように見えるが、実際に地方で生活することを考えると、こうしたインフラの違いも就農後の生活コストに関わってくる。
出典

