ゆずの生産量日本一はなぜ高知県?全国の半分以上を占める産地の背景を調べてみた

高知県が全国のゆず収穫量の約53%を占め生産量日本一になった背景
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すだちは徳島。かぼすは大分。
ここまで調べてきて、次に気になったのがゆずだった。

ゆずも日本ではかなり身近な香酸柑橘だ。
鍋に入れたり、皮を料理に使ったり、ゆず湯にしたりする。

ただ、
一番作っている県はどこなのか。
すだちやかぼすのように、一つの県へ極端に集中しているのか。
までは知らなかった。

調べてみると、ゆずの生産量日本一は高知県
農林水産省の最新資料では、令和5年産の全国収穫量28,144tに対して、高知県は15,005tだった。

計算すると、全国の約53%を高知県だけで生産していることになる。

すだちの徳島98%、かぼすの大分約99%ほどではない。

それでも、一つの県で全国の半分以上というのはかなり大きい。
今回は、なぜ高知県が日本最大のゆず産地になったのか、産地形成や加工との関係まで調べてみた。

目次

ゆずは日本で古くから使われてきた香酸柑橘

ゆずは、すだちやかぼすと同じ香酸柑橘の一つだ。
果肉をそのまま食べるというより、

  • 果汁を絞る
  • 果皮を料理に使う
  • 調味料に加工する
  • 飲料や菓子に使う
  • ゆず湯にする

といった使われ方が多い。

すだちやかぼすとの大きな違いは、果皮の利用価値がかなり高いことだと思う。

緑色の若い果実だけでなく、熟して黄色くなった果実も利用される。
酸味だけではなく、香りそのものが商品になる柑橘だ。

高知県だけで全国のゆずの半分以上を作っている

まず数字を確認してみる。

農林水産省の令和8年版「高知県の農林水産業の概要」によると、令和5年産のゆず収穫量は、

地域収穫量
高知県15,005t
全国28,144t

となっている。

高知県のシェアは約53%。
もちろん全国1位だ。

少し前の2021年産でも、高知県のゆず出荷量シェアは52.1%
2位の愛媛県12.0%、3位の徳島県10.9%と比べても、高知県がかなり抜けている。

つまり、ゆず=高知というイメージは、単なるブランドイメージではない。

日本のゆず供給の半分以上を支える、圧倒的な最大産地だった。

ただし、すだち・かぼすとは集中度が違う

ここは面白いところだ。

すだちは全国出荷量の98%を徳島県。
かぼすは全国生産量の約99%を大分県。
一方、ゆずは高知県が約53%。

つまり、ゆずも一県集中型ではあるものの、ほかの県にも大きな産地が存在する

2021年産の出荷量シェアでは、

  • 高知県 52.1%
  • 愛媛県 12.0%
  • 徳島県 10.9%
  • 宮崎県 5.5%
  • 大分県 4.9%
  • 鹿児島県 4.7%

となっている。
四国や九州を中心に複数の産地があり、その中で高知が突出している形だ。

すだち・かぼすと比べると、同じ香酸柑橘でも産地構造がかなり違う。

なぜ高知県でゆず栽培が広がったのか

では、なぜ高知なのだろう。
高知県は平地が少なく、山間部が多い。

こう聞くと、農業には不利な条件のように見える。
でも、ゆずにとってはこの地形が強みにもなった。

ゆずは比較的寒さに強く、傾斜地でも栽培されてきた果樹だ。
高知県では、平地の大規模農業が難しい中山間地域でも栽培できる品目として、ゆずが地域農業に入り込んできた。
特に県東部では、ゆずを重要な換金作物として育てる地域が形成されている。

「広い平地で大量生産する果物」というより、
山間地域でも作れる果樹を地域産業へ育てたという点が、高知らしさの一つだ。

高知のゆず産地を語るなら「馬路村」は外せない

高知のゆずを調べると、必ず出てくる地域がある。

馬路村だ。

高知県東部の山間にある村で、「ゆずの村」として全国的に知られている。
ただ、最初からブランドとして成功していたわけではない。
高知県の資料では、馬路村も以前は、

  • 生のゆずをそのまま出荷する
  • 果汁をゆず酢として売る

といった、比較的シンプルな販売が中心だったと紹介されている。

転機になったのが、ゆずの生産過剰だった。

ゆず酢が大量に余ったことをきっかけに、
ジュースやポン酢などの加工品を作る
方向へ進んだ。

つまり、
ゆずを作る

そのまま売る

余る

加工する

地域ブランドとして売る

という転換が起きた。

これが高知のゆず産業を考えるうえでかなり重要だと思う。

高知のゆずは「生果」より加工向けが多い

高知県産ゆずの約20%が青果出荷で約80%が加工向けとなる構成

ゆずの産地構造で特に面白いのがここだ。
高知県農業技術センターによると、令和5年産の高知県のゆず生産量は15,005t。

そのうち、青果として出荷されるのは約20%とされている。

つまり、残りの多くは加工向けになる。
過去の農林水産省統計を見ても、高知県ではゆず出荷量の大部分が加工向けだった。

例えば令和4年産では、

  • 出荷量 8,867t
  • うち加工向け 6,864t

となっている。

割合にすると、約77%が加工向けだ。
ここが、すだちやかぼすとの大きな違いの一つかもしれない。

高知では、
ゆず果汁
・ゆずポン酢
・ゆずジュース
・ゆず菓子
・加工食品

まで含めて、ゆず産業が形成されている。

単に果実の生産量が多いだけではない。

「加工できる」ことが産地を強くした

果物には、一度に収穫期が来るという難しさがある。
生のまま売ろうとすると、出荷時期が集中する。

しかも見た目が悪い果実は、生果として売りにくい。

でもゆずは、果汁・果皮香りに価値がある。

見た目が完璧でなくても、加工原料として利用しやすい。
ジュースや調味料にすれば保存期間も延ばせる。

高知県、とくに馬路村の事例を見ると、この加工との相性の良さを地域産業へ転換したことが大きかった。
「ゆずをたくさん作ったから加工品が生まれた」だけではなく、
加工品を売れるようになったから、ゆずを作り続けられる
という逆方向の関係もありそうだ。

高知県のゆず栽培面積は20年間で1.5倍以上になった

高知のゆずは、昔からあるだけでなく、近年まで栽培面積を拡大してきた。
農林水産省中国四国農政局の資料を見ると、高知県のゆず栽培面積は、

  • 平成15年産:578ha
  • 令和4年産:886ha

だった。

約20年間で153.3%まで拡大している。

同じ期間の出荷量も、

  • 平成15年産:6,732t
  • 令和4年産:8,867t

へ増加している。

「昔から高知で作られていた」というだけで現在の日本一になったわけではない。
産地を維持・拡大してきた結果として、現在の全国シェアにつながっている。

高知ではゆずが農業としても大きな存在になっている

高知県でのゆずの存在感は、生産量だけではない。
農林水産省によると、令和5年の高知県におけるゆずの農業産出額は38億円で全国1位だった。

高知県には、

  • なす
  • にら
  • しょうが
  • みょうが

など全国トップクラスの農産物が多い。

その中でも、ゆずは山間地域を含めた高知農業を象徴する果樹の一つになっている。
果実そのものの販売だけではなく、加工品、地域ブランド、観光までつながる。

「ゆず生産量日本一」という数字以上に、地域経済への広がりが大きい作物だった。

すだち・かぼす・ゆずは、似ているけれど産地の作り方が違う

徳島のすだち・大分のかぼす・高知のゆずの産地形成と全国シェアの違い

ここまで3つ調べてみると、かなり違いが見えてくる。

柑橘最大産地全国シェアの目安産地の特徴
すだち徳島県出荷量約98%徳島に古くから原生、周年供給
かぼす大分県生産量約99%県による産地化、一村一品運動
ゆず高知県収穫量約53%山間地域+加工による高付加価値化

見た目や使い方は似ている。

でも、なぜその県が最大産地になったのかを見ると、背景はかなり違う。

・すだちは地域に原生していた果物を全国産品へ育てた
・かぼすは県の栽培奨励と一村一品運動で全国ブランドへ育てた
・ゆずは山間地域で作れる果樹を、加工品まで含めて産業化した

同じ香酸柑橘でも、地域農業の作り方が全然違うのが面白い。

すだちは日本原産?全国出荷量の98%を徳島県が占める理由を調べてみた

かぼすは日本原産?大分県が全国生産量の約99%を占める理由を調べてみた

ゆずは「果物」より「原料」として見ると分かりやすい

今回調べていて、ゆずは少し特殊な果物だと感じた。
スーパーで見れば一つの柑橘だ。

でも産地側から見ると、生果だけではない。
・果汁を搾る。
・皮を使う。
・飲料にする。
・ポン酢にする。
・菓子や加工食品にする。

つまり、一つの果実から複数の商品を作れる。

高知県で加工向けが多いことを考えると、ゆずは「果物」というより、地域産業の原料になる農産物として見る方が実態に近い。

この違いが、全国最大の産地を支える一つのポイントなのだと思う。

調べて思ったこと

高知県で山間栽培から加工・ブランド化が進み日本一のゆず産地になった流れ

ゆず=高知というイメージは、調べる前からなんとなくあった。
ただ、全国の半分以上を高知県が作っているとは知らなかった。

さらに面白かったのは、すだちやかぼすとは、産地が大きくなった理由が違ったことだ。

高知では山間部でも栽培できる果樹としてゆずが広がった。
しかし、生のゆずだけを売っていたら、生産過剰になれば余ってしまう。

そこで果汁やポン酢、ジュースなどへ加工する。
加工品が売れれば、また地域でゆずを作ることができる。

整理すると、
山間地域でゆずを栽培

生産量が増える

果汁などの加工へ展開

ジュース・ポン酢などの商品化

地域ブランドとして販売

ゆず栽培をさらに維持・拡大

現在は全国収穫量の半分以上

という流れが見えてきた。

すだちの徳島。
かぼすの大分。
ゆずの高知。

同じように料理へ酸味や香りを加える小さな柑橘なのに、産地の歴史はまったく同じではない。

ゆずについて調べると、高知が強い理由は単に「栽培に向いているから」だけではなく、加工まで含めて地域産業を作ってきたことにあると感じた。

参考・確認した情報源

  • 農林水産省「令和8年版 高知県の農林水産業の概要」― 令和5年産ゆず収穫量15,005t、全国28,144t、全国1位
  • 農林水産省中国四国農政局「中国四国地方のかんきつの生産の現状」― 2021年産ゆず出荷量の都道府県別シェア
  • 農林水産省中国四国農政局「高知県主要農産物の生産動向から見える課題把握」― 栽培面積・出荷量・加工向け数量の推移
  • 高知県「全国知事リレー講座(高知県概論)」― 馬路村でのゆず加工品開発の経緯
  • 高知県農業技術センター「ユズにおける出荷量予測方法の開発」― 令和5年産15,005t、青果出荷約20%
  • 農林水産省中国四国農政局「高知県で生産された農産物のうち、金額が多いもの」― 令和5年ゆず農業産出額38億円
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この記事を書いた人

Field Note Farmのアバター Field Note Farm 東京で暮らす会社員

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材の生産背景、新規就農について調べたことや考えたことを中心にまとめています。

将来的な新規就農を目指しながら、農業体験や自治体相談、地域研究を続けており、その過程も記録しています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

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