作るだけで交付金が出る作物ってあるの?農業の支援制度を調べてみた

麦・大豆・そばなどを対象とした農業の交付金制度を解説するイメージ
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農業を調べていると、「小麦や大豆は交付金が出る」という話を見かけることがある。

最初は「じゃあ小麦を作れば自動的にお金がもらえるのか」と思った。一方で、以前調べた指定野菜制度は少し違った。ブロッコリーが指定野菜になったからといって、作れば補助金がもらえるわけではない。では、実際に作ることで支援の対象になる作物はあるのだろうか。気になったので調べてみた。

目次

結論:対象の作物は実在する。ただし「ボーナス」ではなく「補填」である

結論から言うと、麦・大豆・そばなど、作ること自体が国の支援対象になる作物は確かに存在する。

代表的なのは麦・大豆・てん菜・でん粉原料用ばれいしょ・そば・なたねで、「畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)」の対象になっている。

水田で転作する場合は、飼料用米・米粉用米なども「水田活用の直接支払交付金」の対象になり得る。いわゆる「農業の補助金がもらえる作物」という文脈で語られるのはこのあたりだ。

ただし、調べてみて最初に誤解が解けたのは、これが「種をまけば自動的にお金がもらえる打ち出の小槌」ではないということだ。

誰もがもらえるわけではなく、その本質は「作れば儲かる仕組み」というより、「作らないと赤字になって国が困るから、その差額を埋める仕組み」だった。

なぜこうした制度があるのか

国産小麦や大豆の生産を維持するために交付金制度が設けられている仕組みを解説した図

そもそも、なぜ特定の作物だけ支援されるのだろうか。

理由は日本の食料安全保障に関係している。

小麦はパンやうどん・ラーメンなど日常的な食品に使われるが、日本の消費量の多くは輸入に依存している。大豆も豆腐・味噌・醤油など日本の食文化を支える作物だが、輸入割合は高い。

もし国内生産が大きく減れば、海外情勢や為替の影響を直接受けることになる。

ゲタ対策は、諸外国との生産条件の格差により不利がある国産農産物の生産・販売を行う農業者に対して、「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を直接交付する制度だ。

つまり農家へのボーナスではなく、国内生産を維持するための構造的な仕組みに近い。

どんな制度があるの?

調べてみると、一口に「交付金」と言っても複数の制度が存在する。

制度主な対象
畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)麦・大豆・てん菜・そばなど
米・畑作物の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)認定農業者・認定新規就農者など
水田活用の直接支払交付金飼料用米・米粉用米・麦・大豆など(水田限定)

農家同士の会話で「交付金が出る」と言っていても、どの制度を指しているかで内容は大きく変わる。

作れば誰でももらえるわけではない

ここが一番重要だった。

ゲタ対策の交付対象農業者は認定農業者・集落営農・認定新規就農者に限られており、規模要件はないものの、誰でも対象になるわけではない。

また交付金を受けるためには、対象作物ごとの出荷・販売状況がわかる書類や農産物検査の結果がわかる書類の提出が必要になる。

つまり「とりあえず作ってみた」レベルではなく、継続的な農業経営として販売実績を持つ人を対象とした制度と考えた方が実態に近い。

交付金を受け取るための対象者・販売実績・申請手続きの流れ

水田じゃないともらえない制度もある

さらにややこしい点がある。

水田活用の直接支払交付金は水田を対象とした制度であり、麦・大豆・飼料用米などへの転作を支援する仕組みだ。

つまり小麦を作れば全員対象、ではない。

もともと水田だった農地で転作する場合に対象となるケースが多く、同じ小麦でもどこで作るかによって対象制度が変わることもある。

なお水田政策は令和9年度から根本的に見直される予定で、水田を対象として支援する現行の枠組みから、作物ごとの生産性向上等への支援へと転換される方向が示されている。

制度の詳細は変わる可能性があるため、最新情報は地域の農業再生協議会や農政局への確認が必要だ。

指定野菜制度とは何が違うのか

指定野菜制度と交付金制度の違いを比較した図解

以前調べたブロッコリーの指定野菜制度と比較すると整理しやすい。

制度主な目的
指定野菜制度価格下落時の安定供給対策
ゲタ対策などの交付金制度国内生産の維持

指定野菜制度は価格が大きく下落したときの補填を通じて、安定供給を守るための仕組みだ。

一方でゲタ対策などの交付金制度は、国内生産そのものを維持することが目的になっている。

似ているようで、制度の設計思想はかなり違う。

調べてみて思ったこと

「作れば交付金がもらえる作物がある」と聞いて、農家への優遇制度のように見えていた。

実際に調べてみると、交付金は農家へのボーナスというより、国内の食料生産基盤を維持するための装置に近い。

交付金がなければ、採算が取りにくい麦や大豆の国内生産はさらに縮小する可能性がある。そのための仕組みとして制度が存在している。

ブロッコリーの指定野菜制度を調べたときも感じたことだが、農業の支援制度は農家のためだけに設計されているわけではない。

制度の目的を追っていくと、最終的には食料安全保障や消費者への安定供給につながっていく。

出典

農林水産省「経営所得安定対策
農林水産省「水田活用の直接支払交付金

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この記事を書いた人

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材、生産背景、新規就農について考えたことを中心にまとめています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

https://fieldnote-life.com/

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