農家が野菜や果物をネットで販売する方法は、一つではない。自分専用のECサイトを作る方法もあれば、楽天市場やAmazonなどのECモール、食べチョクやポケットマルシェなどの産直EC、ふるさと納税を活用する方法もある。
調べる前は、「ネット販売ならJAを通さない分、利益が増える」と思っていた。しかし実際は、販売価格だけではなく、集客・発送・問い合わせ対応まで誰が担当するのかによって、手間やコストは大きく変わることが分かった。
この記事では、農家が利用できる代表的なネット販売の方法と、それぞれの特徴を整理する。
ネット販売の方法を比較する
| 販売方法 | 代表サービス | 集客 | 価格 | 主な費用 |
|---|---|---|---|---|
| 自社EC | BASE・Shopify | 自分 | 自分 | 月額・決済手数料 |
| ECモール | 楽天市場・Amazon | モール+自分 | 自分 | 月額・販売手数料 |
| 産直EC | 食べチョク・ポケットマルシェ | サービス+自分 | 自分 | 販売手数料 |
| ふるさと納税 | 各ポータルサイト | ポータルサイト | 制度に沿う | 自治体・事業者による |
料金や手数料は変更されることがあるため、利用前には各サービスの公式サイトで最新情報を確認したい。
自社ECサイトで販売する
集客
自社ECでは、集客は基本的にすべて自分で行う。Google検索やSNS、ブログなどから自社サイトへ誘導することになる。
最初はアクセスを集めるまで時間がかかる一方、一度リピーターが増えてくると、自分のファンへ直接販売しやすいのが特徴だ。
価格
販売価格は自由に設定できる。
セールや定期便、セット販売なども自由に設計できるため、ブランドづくりとの相性が良い。
手数料・費用
代表的なサービスは以下のとおり。
| サービス | 月額費用 | 決済・販売手数料 |
|---|---|---|
| BASE(スタンダード) | 無料 | 決済3.6%+サービス利用料3%+40円/件 |
| Shopify(Basic) | 約4,850円 | Shopify Payments利用時の決済手数料の一例:約3.55% |
※料金は執筆時点のもの。契約プランや決済方法によって変動するため、最新情報は各公式サイトを確認したい。
一見するとBASEの方が始めやすく見えるが、月額無料プランは決済手数料が高めになっている。一方、Shopifyは月額費用がかかる代わりに、売上が増えるほど手数料負担を抑えやすい。
発送
注文管理・梱包・発送・問い合わせ対応まで基本的に自分で行う。
注文数が増えるほど作業時間も増えるため、将来的には発送代行を利用する農家もいる。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ブランドを育てやすい | 集客を自分で行う必要がある |
| リピーターを増やしやすい | サイト運営の手間がある |
| 自由に価格設定できる | 軌道に乗るまで時間がかかる |
ECモールへ出店する
集客
楽天市場やAmazonは利用者数が多く、新しい顧客に見つけてもらいやすい。
一方で、同じ商品も多数並ぶため、価格やレビューで比較されやすい環境でもある。
価格
価格は自分で設定できるが、市場価格や競合商品を意識する必要がある。
手数料・費用
| サービス | 初期費用 | 月額費用 | 主な手数料 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | 約60,000円 | 約25,000円〜 | システム利用料・ポイント原資など |
| Amazon(大口) | 無料 | 約4,900円 | カテゴリーごとの販売手数料(概ね6〜15%程度) |
楽天市場はギフト需要や贈答品との相性が良い。一方、Amazonは加工品や保存性の高い商品の販売で利用されることも多い。
発送
基本的には自分で発送する。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 新規顧客に見つけてもらいやすい | 月額費用や各種手数料が発生する |
| モールの知名度を活用できる | 価格競争になりやすい |
| 信頼感がある | 広告費が必要になる場合もある |
産直ECで販売する
集客
食べチョクやポケットマルシェは、「農家から直接買いたい」と考える利用者が集まるサービスだ。
一般的なECモールより目的が明確な利用者が多く、こだわりや栽培方法を伝えやすい。
価格
価格は自分で設定できる。
送料も含めた価格設計を考える必要があり、利益と購入されやすさのバランスが重要になる。
手数料・費用
| サービス | 初期費用 | 月額費用 | 販売手数料 |
|---|---|---|---|
| 食べチョク | 無料 | 無料 | 商品代金の19.7%(送料除く) |
| ポケットマルシェ | 無料 | 無料 | 販売価格の23% |
※料金は執筆時点のもの。最新情報は各サービスの公式サイトを確認したい。
20%前後という数字だけを見ると高く感じるが、この中には決済やサイト運営、利用者への集客なども含まれている。
そのため、自社ECの広告費やサイト維持費と単純に比較できるものではない。
発送
注文ごとに自分で梱包・発送を行う。
鮮度が重要な野菜では、発送スピードも評価につながる。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 農産物を探している利用者へ届けやすい | 約20%前後の販売手数料がかかる |
| ブランドを伝えやすい | 発送作業が毎回必要 |
| リピーターにつながることもある | 出品者も多い |
ふるさと納税を活用する
登録
農家が自由に出品できるわけではなく、自治体や返礼品事業者を通じて登録する。
そのため自治体側に相談する必要がある。
集客
集客は各ポータルサイトが行うため、全国へ認知を広げやすい。
価格
返礼品制度のルールに沿って設定されるが、農家側が決めれることも多い。
手数料・費用
費用負担は自治体や返礼品事業者によって異なる。
そのため、参加前に自治体へ確認しておくと安心だ。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 全国へ認知を広げられる | 自由に出品できるわけではない |
| 集客を任せられる | 自治体との調整が必要 |
| 人気返礼品になれば継続受注も期待できる | 制度変更の影響を受ける |
ネット販売は組み合わせる農家も多い

これらの販売方法は、一つだけを選ぶとは限らない。
例えば、食べチョクやポケットマルシェで新規顧客と出会い、その後は自社ECでリピート購入してもらうという流れもある。ふるさと納税で認知を広げ、自社ECやSNSへつなげるケースも見られる。
経営規模が大きくなるにつれて、複数の販路を組み合わせる農家も少なくない。
調べて感じたこと
調べる前は、「ネット販売なら利益が増える」と思っていた。
しかし実際は、食べチョクやポケットマルシェでは20%前後の販売手数料があり、楽天市場では月額費用や各種手数料、自社ECでは広告やサイト運営など、それぞれ異なるコストが発生する。
結局のところ、「手数料が安い販路」を選ぶことよりも、「誰が集客するのか」「誰が販売するのか」「誰が問い合わせ対応をするのか」という役割まで含めて考えることが重要だと感じた。
また、最初からすべての販路を始める必要はないと思った。まずは自分に合った一つの販路から始め、販売量やリピーターが増えてきたら、自社ECや産直EC、ECモールなどを組み合わせていく方が、無理なく販路を広げられそうだと感じた。

