日本で羊産業が広がらない理由|気候・コスト・関税・流通から考える

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ラム肉が好きで、なぜ日本では広がらないのかを調べていた。
すると、そもそも国産羊そのものがほとんど存在しないことに気付いた。

羊肉が広がらない理由と、羊産業が広がらない理由は少し違う。

今回は生産者側の視点から、日本の羊産業について整理してみたい。

目次

スーパーで羊肉をほとんど見かけない理由

羊肉の写真

肉売り場に並ぶのは牛・豚・鶏が大半だ。羊肉を扱う店はあるが、取り扱い自体が少なく、あっても輸入品が中心である。

「日本人は羊肉が苦手だから」と説明されることも多い。しかし、それだけで産業規模の差を説明するのは難しい。

羊が日本の畜産業の中で小さな位置にとどまっている理由は、消費者の好みよりも産業構造そのものにある。

日本の羊産業の現状

農林水産省の統計によると、国内で飼養されている羊はおよそ2万頭前後で推移している。

一方で、

  • 牛:約400万頭
  • 豚:約900万頭

であり、規模はまったく異なる。

また、国内で流通する羊肉の大半は輸入品である。主な輸入先はオーストラリアとニュージーランドで、国内生産量はごくわずかだ。

つまり、日本には羊肉を食べる市場はあるが、国内産業がほとんど育っていない状態と言える。

なお。国内で飼養されている羊の多くは北海道に集中している。
本州でも飼育例はあるが、産業として成立している地域は限られている。

なぜ国内産業が育ちにくいのか

牧草地で放牧される羊の群れ

気候の問題

羊の大産地を見ると、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、モンゴルなど、冷涼で比較的乾燥した地域が並ぶ。

羊は高温多湿に弱く、日本の梅雨から夏にかけての環境は決して相性が良くない。
そのため、日本で羊の飼育に向いている地域は限られる。

代表例は北海道であり、本州でも長野県など一部の高冷地が中心となる。

牛や豚、鶏のように全国どこでも産業化しやすい畜種ではないことが、まず大きなハンデである。

土地規模の問題

オーストラリアやニュージーランドの羊産業は、広大な牧草地を前提としている。
数千ヘクタール規模の牧場で数万頭を放牧し、牧草を中心に育てることで飼料コストを大幅に抑えている。

一方、日本は平地面積が限られている。
北海道の一部を除けば、同じような大規模放牧は現実的ではない。

つまり、日本の羊産業はスタート地点からコスト競争で不利な構造を抱えている。

関税保護の問題

牛肉には関税がある。
豚肉にも差額関税制度があり、国内産業を一定程度保護する仕組みが存在する。

しかし羊肉は国内産業の規模が小さいこともあり、牛や豚ほど強い保護を受けていない。

その結果、日本の生産者は海外産羊肉と正面から競争することになる。

しかも相手は、

  • 冷涼で乾燥した気候
  • 広大な土地
  • 超大規模経営

という強みを持つオーストラリアやニュージーランドだ。
輸送費を払ってもなお海外産の方が安いケースが多く、価格競争では非常に厳しい立場に置かれている。

コスト競争の問題

日本の羊産業が苦戦する理由は、単純な人件費の問題だけではない。
気候、土地規模、関税環境のすべてが不利な方向に働く。

例えば牛や豚であれば、国内市場が大きく、生産規模も大きいため設備投資や流通コストを分散しやすい。
しかし羊は市場規模自体が小さい。

大量生産によるコスト削減が難しく、結果として価格競争力を持ちにくい。

販売の問題

実は、生産よりも難しいのが意外にも販売である。

酪農であればホクレンなどの集荷網が存在し、生産者は出荷先を自分で営業しなくてもよい。
・肉牛にも市場がある。
・豚や鶏にも整備された流通経路がある。

しかし羊は事情が異なる。

作ったら自動的に買い取ってもらえるような仕組みが弱く、出荷先を自分で探さなければならないケースも多い。

つまり、「どう育てるか」だけではなく、

「誰に売るか」まで考えなければならない。

これは新規参入者にとって大きなハードルである。

羊毛は収益の柱になりにくい

羊の毛刈り作業の様子

かつて日本には羊毛産業が存在した。
しかし現在は海外産羊毛や化学繊維が主流となっている。
自ら毛刈りをして、糸にして、記事にする効率を考えれば海外の羊毛や化学繊維のほうが安く手に入りやすいのである

羊毛を販売して経営を成り立たせることは難しい。
肉も価格競争が厳しく、毛も大きな収益源にならない。

この構造が、羊を専業で飼育する難易度をさらに高めている。

羊は6次産業化との相性が良い

ここまで見ると、羊産業はかなり厳しいように見える。
実際、その通りだと思う。

一方で、国内で成功している羊農家を見ると共通点がある。
それは、生産だけで終わらないことだ。

  • 牧場直売
  • レストラン経営
  • ジンギスカン提供
  • 加工品販売
  • 観光牧場
  • 体験事業

などを組み合わせているケースが多い。

流通に乗せるだけでは勝負にならない。
だからこそ、生産背景や体験価値まで含めて売る必要がある。

羊は一般的な畜産というより、6次産業化やブランド化との相性が良い畜種と言われる理由がここにある。

まとめ

日本で羊産業が広がらない理由は一つではない。

  • 高温多湿な気候
  • 大規模放牧が難しい土地条件
  • 海外とのコスト差
  • 関税保護の弱さ
  • 買取・流通網の未整備
  • 羊毛市場の縮小

これらが重なっている。

どれか一つを解決すれば済む話ではなく、複数の課題が同時に存在しているのが現状だ。

だからこそ、日本で羊産業を成立させるには、価格競争ではなくブランドや体験価値が重要になる。
実際に国内で羊を飼育している農家の多くは、直売や観光、加工品販売などを組み合わせながら経営している。

羊は決して簡単な畜種ではない。
それでも各地で挑戦が続いているのを見ると、単なる畜産というより地域資源としての可能性を感じる。

羊肉が広がらない理由については、別記事で食文化や歴史の観点から整理している。

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この記事を書いた人

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材、生産背景、新規就農について考えたことを中心にまとめています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

https://fieldnote-life.com/

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