高収益作物を比較してみた|農業所得・労働時間データまとめ

高収益作物の農業所得と労働時間を比較したイメージ
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作物の収益性を調べると、都道府県ごとに「農業経営指標」という資料が公表されていることがわかった。

品目別に10a当たりの粗収益・経営費・農業所得・労働時間が整理されており、作物比較の出発点として使いやすい。

この記事では、長野県・岡山県・北海道の経営指標から、新規就農者の参入が多い品目を中心にデータを抜き出して並べた。

「どの作物が最も儲かるか」という結論を出す資料ではなく、品目・地域・作型によって数字がどう変わるかを把握するための参考として使ってほしい。

目次

データを読む前に確認しておくこと

本記事で使用したデータには、性質が異なる2種類の指標が混在している。

「農業所得」は粗収益から変動費・固定費(減価償却費・地代・雇用費等)をすべて控除した後の数字。
長野県・岡山県のデータがこれにあたる。

一方、「貢献利益」は粗収益から変動費のみを控除した数字で、固定費は含まない。
北海道のデータがこれにあたる。

ハウスや農機具の減価償却費が別途かかるため、農業所得より高い数字になる。
表中では北海道のデータに「*」を付して区別している。

両者を同列に比較することはできない。
また、これらはすべて熟練農家を前提とした試算モデルだ。

新規就農者は初期数年間、収量・単価ともに指標を下回るケースが多い。

目安として参照しつつ、実際の就農計画には各地域の農業改良普及センターや農業会議へのヒアリングを合わせて行うことを勧める。

使用データの出典

出典資料名年度指標の種類
長野県農政部作目別経営指標一覧表令和4年版農業所得
岡山県担い手育成総合支援協議会就農ガイドR3令和2年度農業所得
北海道農政部北海道農業生産技術体系 第6版貢献利益
農林水産省農業経営統計調査 品目別経営統計平成19年産農業所得
群馬県農政部農業経営指標令和7年3月農業所得

新規就農者が選ぶ部門構成

農林水産省の新規就農者調査(令和5年)を見ると、新規参入者が選ぶ部門は大きく偏っている。

上位は以下の3つだ。

  • 露地野菜
  • 果樹
  • 施設野菜

特に露地野菜は参入人数が多く、小規模から始めやすいことが影響していると考えられる。
果樹は参入障壁が高い一方で、第三者継承などによって既存園地を引き継ぐケースもある。
施設野菜は初期投資が必要だが、高収益作物として選ばれることが多い。

アスパラガス

多年草で一度定植すれば10年以上収穫が続く。
単価が比較的高く、新規就農者の参入も多い品目だが、地域・作型による収量差が大きい。

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出典作型収量/10a10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4露地750kg84万円44万円51.7%360h1,401円
長野県R4半促成・長期1,875kg234万円97万円41.4%436h2,228円
岡山県R2露地1,800kg222万円102万円45.6%370h2,744円
北海道第6版露地500kg66万円57万円*150h

北海道の収量500kgは、他県の露地栽培と比較すると低い。
ただし北海道は貢献利益ベースであり、農業所得との直接比較はできない。
また地域ごとの気候や作型の違いも大きく影響している。

トマト

施設栽培が中心で粗収益は大きい。
一方で設備・資材コストも重く、所得率は低くなりやすい。
売上規模は大きいが、必ずしも所得率が高いわけではない。

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出典作型10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4雨よけ358万円80万円22.5%470h1,710円
岡山県R2雨よけ養液土耕418万円110万円26.2%869h1,261円
北海道第6版ハウス夏秋どり397万円266万円*797h

ミニトマト

トマトより単価が高く、粗収益は大きくなりやすい。
ただし労働時間も増える。
岡山の促成養液は粗収益が非常に高いが、その分労働時間も大きい。

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出典作型10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4雨よけ360万円95万円26.4%986h965円
岡山県R2促成養液914万円302万円33.0%2,123h1,422円
北海道第6版ハウス夏秋どり472万円361万円*998h

きゅうり

設備コストが比較的軽く、所得率が高い品目。
ただし収穫・選別・出荷作業が集中するため、労働負荷は大きい。
長野と岡山で所得率は近いが、労働時間には大きな差がある。

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出典作型10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4夏秋どり336万円195万円58.0%882h2,248円
岡山県R2露地325万円182万円55.8%1,452h1,250円
北海道第6版半促成長期どり459万円315万円*1,259h

いちご

粗収益の大きさから「高収益作物」として語られることが多い。
ただし設備コストと労働時間を加えると見え方が変わる。
長野の促成高設は所得率11.8%、時間当たり所得494円と掲載品目の中では最低水準になる。
粗収益だけを見ると魅力的に見えるが、設備投資や労働時間まで含めると別の景色が見えてくる。

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出典作型10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4促成・高設461万円54万円11.8%1,102h494円
長野県R4夏秋・高設596万円149万円25.0%1,072h1,389円
岡山県R2促成・土耕668万円218万円32.6%1,639h1,329円
北海道第6版ハウス半促成・土耕245万円167万円*1,013h

ぶどう

品種による差が特に大きい作物。
「ぶどうは儲かる」という言葉だけでは意味がなく、品種まで見ないと比較にならない。
巨峰とシャインマスカット露地は労働時間がほぼ同じにもかかわらず、農業所得は4倍以上違う。
品種選定の重要性がよく分かるデータだと思う

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出典品種・作型10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4巨峰・露地125万円34万円27.3%311h1,094円
長野県R4ピオーネ・露地185万円90万円48.6%306h2,930円
長野県R4シャインマスカット・露地254万円146万円57.5%307h4,760円
長野県R4シャインマスカット・3月加温548万円234万円42.8%387h6,058円
群馬県R7ぶどう全体・雨よけ137万円69%
農水省H19ぶどう全国平均34万円
北海道第6版露地・生食(品種不明)33万円25万円*120h

露地野菜(ねぎ・キャベツ・たまねぎ・ブロッコリー)

施設を必要とせず参入しやすい。
一方で単価が低く、面積を広げて収益を確保する構造になりやすい。
露地野菜は10a当たりの所得だけ見ると目立たない。
ただし労働時間も少ないため、時間単価では一定水準を維持している品目もある。

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出典品目・作型10a粗収益10a所得所得率労働時間時間当たり所得
長野県R4ねぎ・露地100万円37万円37.2%296h1,266円
長野県R4キャベツ・露地56万円13万円22.9%81h1,592円
長野県R4ブロッコリー・初夏まき45万円14万円27.3%109h1,318円
北海道第6版ねぎ・春まき夏秋どり122万円98万円*206h
北海道第6版キャベツ・晩春まき47万円33万円*64h
北海道第6版たまねぎ・春まき51万円27万円*37h
北海道第6版ブロッコリー・初夏まき45万円19万円*43h

品目横断の比較|時間当たり所得

時間当たり所得を比較すると、見え方がかなり変わる。
時間当たり所得で見ると、シャインマスカットの突出が目立つ。
一方で粗収益が大きいいちごや施設野菜は、労働時間も非常に大きいため、時間単価では意外と伸びない。

品目・作型出典10a農業所得労働時間時間当たり所得
シャインマスカット・3月加温長野R4234万円387h6,058円
シャインマスカット・露地長野R4146万円307h4,760円
ピオーネ・露地長野R490万円306h2,930円
きゅうり・夏秋長野R4195万円882h2,248円
アスパラガス・半促成長期長野R497万円436h2,228円
トマト・雨よけ長野R480万円470h1,710円
キャベツ・露地長野R413万円81h1,592円
ミニトマト・促成養液岡山R2302万円2,123h1,422円
アスパラガス・露地長野R444万円360h1,401円
いちご・夏秋高設長野R4149万円1,072h1,389円
ブロッコリー・初夏まき長野R414万円109h1,318円
いちご・促成土耕岡山R2218万円1,639h1,329円
ねぎ・露地長野R437万円296h1,266円
きゅうり・露地岡山R2182万円1,452h1,250円
巨峰・露地長野R434万円311h1,094円
いちご・促成高設長野R454万円1,102h494円

このデータを就農計画に使う際の注意点

数字を見るときは、次の4点に注意したい。

① 熟練農家のモデルである

これらの数字は熟練農家を前提とした試算だ。
新規就農者が初年度から同じ数字を再現できるとは限らない。

② 初期投資が含まれない場合がある

施設野菜や加温ぶどうは初期投資が大きい。
設備回収期間中の実質所得はさらに低くなる可能性がある。

③ 北海道は貢献利益である

北海道の数字は固定費を引く前の数字。
長野県や岡山県の農業所得とは直接比較できない。

④ 地域差が大きい

同じアスパラでも北海道と岡山では収量が大きく違う。
他県の指標をそのまま自分の計画に当てはめるのは危険だ。

数字だけでは作物の良し悪しは決められない

ここまで数字を並べてきたが、実際には所得だけで作物を決められるわけではない。
同じぶどうでも品種によって所得は大きく変わる。
同じアスパラでも地域によって収量が変わる。

さらに、

  • 販路
  • 作型
  • 設備投資
  • 気候条件

によっても結果は大きく変わる。
数字は判断材料として重要だが、それだけで作物選びの答えは出ない。
どのように作物を選ぶべきかについては、以下の記事で整理している。

農業で儲かる作物はあるのか|所得データから見えてきた現実

出典

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この記事を書いた人

会社員として働きながら、食・産地・地方・農業への解像度を少しずつ上げていく記録を発信しています。

直売所や地方の空気、食材、生産背景、新規就農について考えたことを中心にまとめています。

都市生活や暮らしの工夫については「Field Note Life」でも発信しています。

https://fieldnote-life.com/

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